台湾 塩寮訪問記録 原発予定地・原住民族の遺跡

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■■■原発予定地内見学

□台湾電力

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原発予定地内の建物の看板

  15日の午後、塩寮の人々と共に原発予定地に入った。去年は入れなかったらしいのだが、今回は新たな事情がある。なんと、予定地内に原住民族の遺跡があり、そのために原住民族の人はいつでも入れるというのだ。前日に台湾環境保護連盟から連絡を入れてもらって、原住民族の方と予定地内に入れるように手配していただいたため、私達は入れることになったのだ。
  原住民族の林勝義さんはひょうひょうとして常に落ち着いておられる方だが、眼光は鋭く接するものに威厳を感じさせずにはおかない。
  車で門をくぐると、平屋の建物があり、そこの応接室のような部屋でいすに座る。台湾電力の職員が紙コップのお茶を出してくれた。私はトイレにいった後、わざと反対方向に歩き、建物の中を一回りした。建物は一本の廊下が中央に伸びており、その両側に事務机が20個くらい並ぶ部屋が16ほどあり、トイレも2箇所ある。「総務」「工事監督」などと部屋に表札がかかっている。「湯茶間」とあったので、茶室があるのかと思ったら給茶室だった。
  廊下の突き当たりにいくと窓の向こうに同じつくりの建物が建築途中だった。日本人はいないようなので、あるいは日立・東芝の社員用の社屋を作っているのかもしれない。

□酔っ払い職員

  探検から帰ってくると、応接室がなにやら騒がしい。電力会社の職員と塩寮の人が言い争っているが、通訳の許さんもいっしょに言い争っているのでなにが起こっているのかさっぱりわからない。
  紺のジャージのような服を着た職員の横を通ったとき、強い酒の匂いがしたが、それきりその職員は出てこず、代わりに何人もの職員が対応にあたった。
  なんでも、その酒臭い職員が横柄な態度で、敷地内に入りたかったらあらかじめ許可を申しでろ、というようなことを言ったらしく、それで言い争いになったとのことだ。
  建物を出て、台湾電力のバスに乗る。車窓から見る敷地は思った以上に広大に感じた。

 

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真ん中が、酒を飲んでいたと思われる職員。台湾電力の建物内で。

 

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これは事態の収拾のために出てきた職員。おそらく上役だろう。胸に社員証をぶら下げている。

 

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かっこいい台湾電力のバス。こういったイメージ戦略は日本から学んだといわれている。

 

■■■原住民族の遺跡

□洞窟

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敷地内の様子。
整地はほぼ終った感じで、コンクリートサイトの建設なども進んでいる。それにしても、広大な土地だ。

 

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これは反対側。
手前は後に近くでみることになる二号機の炉心予定地。

  バスから降りて、草原をしばらく歩く。昨日からの雨でぬかるんでいて歩きにくい。やっとアスファルトの上に出たと思い、ふと横を見ると木の杭と棘状鉄線で囲まれた場所があった。そこに原住民族の地下道跡があった。
  直径10メートルほどの囲まれた中に3メートル四方で、背の高さほどの穴がありそこに降りると、人ひとりやっと通れる位の穴が更に地面に掘られている。そこを降りると洞窟のようになっており、地面には水がたまっていた。
  洞窟は3メートルほどのところで行き止まりになっているが、林さんの話を許さん経由で聞いたところによると、これは台湾電力が塞いだもので、実際はこの先1kmほども続いており、昔はずっと歩いていけたという。また、天井は懐中電灯を向けるときらきら光っており、これはここで鉄製品などを溶鉱していたため、それが天井に蒸着しているのだという。

 

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杭で囲まれた中が洞窟の入口。杭がなければ気付かないところだ。

 

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洞窟。
5mほどで行き止まりになっている。台湾電力が塞いだらしい。天井がカメラのフラッシュに照らされて輝いているのは、金属色のものがこびりついていたため。
地面には水がたまっている。

 

□命の泉

  地上に出て、しばらく歩くと直径10mほどの池があった。これは原住民族が飲料水にしていた池で、原住民族が台湾電力に追い出されるほんの数年前まで、この池の水を飲んで、このあたりに集落があったという。小さい池だが、手前からは次々と水が流れ落ちており、おそらく地下水がここに湧き上がってきているのだと思われる。池というよりは、泉といったほうがいいのかも知れない。

 

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命の泉。
草に囲まれて見えにくいが、中央右よりに水面が見えている。

 

□人面巨石

  更にしばらく歩くと、今度は背の高さくらいで家の屋根のような形をした岩があった。岩といっても表面はぼろぼろと崩れるようにもろい。林さんによると、もともとはこれはずっと大きくしっかりとした岩で、人の顔をかたどった人面巨石だったという。それが30数個もここにならんでいたというのだ。
  台湾電力は最初、それをパワーシャベルで砕こうとし、あまりに丈夫で砕けないために、薬品、おそらく酸を用いて岩を脆くして砕いたのだという。一つの岩が砕かれた跡、そして、いくつもの岩を集めてまとめて砕いた跡などいくつもの跡があった。
  林さんは、それを淡々と伝え、資料を渡してくれた。それには遺跡の紹介はもとより、付近の海流の資料まで丹念に調べられた調査資料だった。
  原住民族の人々は、台湾電力に裁判を起こす準備を進めているという。

 

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解説してくれる原住民族の林さん。

 

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ありし日の人面巨石。
左側が顔を模しているという。

 

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私が訪れたときの人面巨石。
見る影もなく壊れされている。

 

■■■安全審査CD-ROM

  台湾環境保護連盟台北分会の方から、CD-ROMを預かった。これは台湾電力が作成したもので、「龍門計画初期安全分析報告」と書かれている。工事を始めるための判断材料となった資料で、「初期」とはあるが、次のこういった報告が出るのは運転直前になると思われ、現時点での原発建設の拠り所となっている資料といえる。基本的に英文で書かれており、印刷すると700ページにおよぶ大部の資料だ。
  内容はAdobe社のアクロバット形式になっており、MS-WindowsでもMachintoshでも読めようになっている。台湾電力自身がCD-ROMで資料を配布するというのもなかなか台湾らしい。現時点で静岡大の小村教授および原子力資料情報室に送付させていただいたが、必要な方は連絡いただければコピーを送付するので連絡して欲しい。

 

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