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台湾からの手紙

今回の会議では台湾から、台湾大学教授施信民さん、台北市会議員廖彬良さんの両氏をお招きする予定でしたが、ちょうどその前日、台湾では第四原発の受け入れを決する議会が開かれていました。このため両氏は来日することができなくなったのです。
この間の状況を説明して下さった施信民さんからの手紙を紹介します。

第4原発建設をめぐる台湾反原発運動の動き

10月14日から18日にかけて何が起こったか

施信民(台湾環境保護連盟)

 私は、1019日から神戸で行われた「環太平洋反原子力会議」に出席することになっていました。しかし台湾立法院(国会)が1018日に、さる5月に実現していた「すべての原発を廃棄する決議」を覆そうとする動きに出たため、反対運動の責任者として議員への働き掛けを行ってきた私は状況の緊迫化の中で多忙を極め、神戸に来ることができなくなってしまったのです。

私たちは5月になされた決議を死守しようとしましたが、不幸なことに行政院による拒否権が発動されました。この小文の中で私は、1014日から18日にかけて何が起こったのか、そして今後の展望について論じたいと思います。

1996524日、立法院において7642という大差で、すべての原子力計画を廃棄するとの決議がなされました。しかし712日になると、原子力発電は台湾にとって不可欠なものだとする行政院が、立法院に対して決議の再審議を求めて圧力をかけてきました。台湾の憲法によれば、行政院からの再審議要請に対して、立法院構成員議員の3分の1が同意すれば、その決議は拒否権の対象となり再審議されなければならないという規定があります。

第四原発予定地・塩寮に立つ抗日記念碑
最初に台湾に日本軍が上陸した土地に日本の原発輸出が行われようとしている。多くの台湾人が観光に訪れる土地に。

反原発議員は全体の半数しか占めていませんでしたので、このままではせっかく実現したあの決議が再審議、そして廃案ということになってしまう、そのような危機感の中で私たちはなんとか立法院での再審議を阻止しようとしました。しかし再審議を食い止めることはできず、108日には、与党国民党が過半数を占める立法院において、再審議を1015日、17日、18日に行うということが決定してしまったのです。

すべての原子力計画を放棄するというその決議を守るため、台湾反核行動連盟、反核NGO1014日に立法院の前で座り込みに突入しました。この日の午後には、第4原発予定地である塩寮の人々が、予定地敷地の正門前でデモを行いました。彼らは通用門から敷地内に入り、警察に止められました。しかし全参加者は、機動隊が出動して暴力的に排除を行う翌日まで、敷地内で闘いを続けました。

野党民進党も、1015日に座り込みに突入しました。同日、行政院議長が立法院議員たちに対してなぜ拒否権を発動せざるをえなかったかの釈明を行うことになっていましたが、立法院の入り口がすべて民進党議員にブロックされてしまったため、彼は立法員内へ入ることができませんでした。行政院議長は怒りをあらわにしつつも、やむなく立ち去り、その日の午後には「10月18日まで立法院は再審議を行わない」という決定を下しました。

1016日には、台湾反核行動連盟は立法院へ行き、原子力政策に対する抗議を行いました。17日の夜には、台湾反核行動連盟が立法院前で無数のキャンドルをともしての抗議集会を行い、多くの学生が参加しました。そこでは、核も原発もない台湾を願う私たちの思いが、スピーチや歌となって表現されました。しかしこの夜、3党が議長不在のまま再審議に合意、1018日に秘密裏に拒否権を行使して決定を行うことになったということを知らされました。そこにいた誰もが、民進党は反原発運動と台湾人民を売り渡してしまったのだと考え憤りました。

18日の早朝、多くの反原発グループやその支持者が抗議行動に結集しました。約2千人の人々が立法院の前に詰め掛けました。しかし彼らは、平和的な座り込みによって抗議の意思を表現していました。あるグループは総統官邸へ抗議に赴き、警官隊に止められ、この出来事の中で2人が逮捕されました。抗議に訪れた人々の中には、決議の再審議に関して国民党と妥協した裏切り者として、民進党を声高に非難するものも出てきました。

立法院内部では、人民の反原発の意志があまりに強いことに気づいた民進党議員たちが、17日に一度は取り交わした再審議に応じるという合意を取り消そうとしました。しかし大多数の議員が前日の合意を支持し、手続きは続行していきました。民進党議員たちは議場内においても抗議を続けましたが、午後7:30、再審議をはかる投票がはじめられ、民進党議員は投票を拒否しました。そして9:30には投票結果が明らかになりました。

83人の議員が「すべての原発を廃止する決議」に対する拒否権発動に賛成したのです。投票が始まり拒否権が発動されそうだと知らされるや、立法院前の人々の間に緊張感が高まりました。怒りにかられた人々は、バリケードを取り払い、立法院の入り口の扉を引き倒しました。機動隊が放水車を出動させ、催涙ガスが人々を追い散らしました。さらに投票結果が明らかにされたとき、20数名の学生が再度立法院入り口の扉をなぎ倒し立法院内にかけ込みました。彼らは機動隊に捕らえられ、暴行を受けた末に逮捕されるものも出ました。10:30、機動隊は立法院前の人々に対して、そこから立ち去るように勧告しました。私たちは立法院の横にある教会に待機し、抗議に参加した人々がすべて安全に立ち去るまで状況を見守っていました。一連の抗議行動は、11:30には一応の終結を見ました。

すべての原子力計画を廃棄する決議が覆されたということは、台湾電力が第4原発の建設を続行できるということを意味し、それを阻止するために我々も闘いを続けなければならないということです。

台湾電力はすでに入札において、第4原発の原子炉建設をGEに、そしてタービンは三菱重工からと決定しています。そしてGEの下請けとして、東芝と日立が原子炉の製造・輸出を担うのです。

今後私たちが行おうとしているのは台北付近の郡、または全郡において、原子力の是非を問う住民投票へむけてキャンペーンを行う。

議員たちに対して、改めて反原発決議、または第4原発建設予算凍結の決議を行うよう働きかけること。
GE、東芝、日立、三菱の製品ボイコット。
アメリカにおいて、GEへの抗議を共に闘う同士を得ること。
日本において、原発輸出に反対する闘いの同士を得ること。

台湾第4原発は、日本の原発産業にはじめての原発輸出の機会を与えることになります。
もし台湾への原発輸出を止めることができなければ、さらに多くの原発が日本からアジアの国々へ輸出されることとなり、核のないアジアを目指す私たちの闘いは非常に厚い壁に直面することになります。

世界中の反核・反原発グループが、アジアへの原発輸出を阻止するため私たちの運動に加わってくれることを願っています。そして特に私が期待することは、台湾第4原発建設を何としても阻止するために、台湾のグループと日本のグループがもっと緊密に手を取り合って闘いを展開していくことなのです。

 

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