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パネルディスカッション
核のない環太平洋を創るために


北川:
 それでは「市民による環太平洋反原子力会議」本日午後のパネルディスカッションを始めたいと思います。昨日の午後以来、非常に厳しい日程の中で皆さん、だいぶお疲れかと思います。けれども、海外のゲストの方も含めお忙しい中、また、非常に厳しい状況の中、おいで頂いておりますので、がんばって一緒に問題を考えていって頂きたいと思います。

 午後からの司会を担当させて頂きます「さよなら原発・神戸ネットワーク」の北川と申します。よろしくお願いします。

 本日の日程についてお知らせします。パネルディスカッションの後、推進側の原子力産業会議の方に我々として申し入れをしたいと言っておりましたが、むこうの方が受けておりません。そういった事情でそちらの方に抗議・申し入れに行くことはできませんので、阪神・元町駅前でミニコンサートも含めた形での街頭でのアピールを予定しております。是非、参加頂いて、この2日間の討議の成果を示したいと思います。

では、パネラーの方をご紹介いたします。アメリカからおこし頂きましたドロシー・パーリーさんです。同じく、アメリカからおこし頂きましたプルトニウム・フリー・フューチャー代表のクレア・グリーンスフェルダーさんです。続きまして、韓国環境運動連合からおいで頂きましたムン・ユミさんです。インドネシアからおいで頂きましたジュリア・トラワガンさんです。それから、宮嶋信夫さん。そして、進行、司会役を務めて頂く広瀬隆さんです。事務局の佐藤大介さんです。

 通訳は、徳原紀子さん、栢原美知子さん、高木公一さん、宇野田陽子さん、キム・ボンニョさんです。

それでは、司会の広瀬隆さん、よろしくお願いします。

 


【質問リレー】

広瀬:
 それでは、パネルディスカッションを始めます。最後ですので具体的なところで何か、私達が集まった意義が実となってでてくるような形にしたいと思います。そして、最終的には、特に日本で反原子力会議を持った意味について外国の方に厳しい視点から意見を出していただき、私達がそれを持ち帰って具体的な行動につなげていきたいと考えております。

 それでは、最初に韓国のムン・ユミさんから、アメリカのクレアさんに、いまここで問題となっている原子力、様々な運動のことについてご質問がありましたら、ぜひうかがって下さい。

ムン・ユミ:
 今日の午前中、チェルノブイリ以降の、日本の原発輸出の問題を聞きました。アメリカの多国籍企業であるGEとウェスチングハウスは、韓国も含めてアジアへ原発を輸出してきました。

 アメリカでも、原発輸出に対して問題点を提起し、ストップをかけようとする運動がありますか。あったら、紹介して下さい。

広瀬:
 これは、大変いい質問です。私達にとっても、今後の日本からの輸出に関して大変参考になると思います。

クレア:
 非常にいい質問をしてくださってありがとうございます。

 私たちの国では、長年にわたってそのような運動が存在しています。これは特に核兵器その他の輸出に限ったことではありません。武器はもちろんのこと、現在では自然を破壊するような化石燃料に関する技術の輸出など、人類にとって良くない技術の輸出全般に対する反対運動がたくさんあります。それだけでなく、企業の無責任な行為に対して反対する運動もたくさん存在します。

 それと同時に財政的な輸出と考えられるようなものに対しての、反対運動もあります。財政的な輸出というのは、核、その他の技術を各々の国で発展させるためにアメリカから財政的な援助をするというものです。世界銀行のこういった援助に対しても、大きな反対運動が行われています。もちろん世界銀行は、核、原発の開発に関してのローンは組んでいないので、直接な関わりはありません。しかし15年にわたって、不適切な開発もしくは輸出に関して財政的な援助をするのを戒めようという動きがあり、反対運動も続いています。特にウェスチングハウスに対する反対運動の高まりは、1970年代の半ばから80年代にかけてフィリピンへの輸出問題が激しい議論となって国民の目をひいたからでした。

とはいえ、レーガン・ブッシュの大統領の統治下でアメリカでの反核運動は核兵器に対する運動であって、原発に対する反対ではありませんでした。12年たって、原発輸出の動きがむしろ強まってきていることに気づいたアメリカ人は愕然としたわけです。

 この問題に関してアメリカでは3つの大きな動きがあります。

 まず第一は、法の下に企業活動を監視していこうという動きです。輸出を行う会社を設立する場合、法に従って会社設立の約款、定款を定めなければなりません。ところがその法律の一番甘いところがデラウェアという小さなアメリカの地域で、この2年間ほど、どの会社もだいたいそこで定款をするのが通常でした。デラウェアは、法律も甘いけれど、税金も安いのです。そのような現状があったため、会社が適正な場所で登録をし、定款には公共の利に服するということをうたい、そして定款にうたってあることにそった企業活動を行っていくことなどを法律で見張っていこうとしています。そのように、全般において企業の責任ある活動を法律をもって監視していこうとするのが第一番目のものです。

 2番目は、サンフランシスコを拠点にして“国際化に関する国際連合”という環境保全を目的とした団体が結成されたことです。これは環境に関しての国際的な協力を広めようという団体で、サンフランシスコで1月に集会を開くことになっています。その中でアイリーン・美緒子・スミスさんという京都のPFF代表の方と連絡をしてGE・三菱・ウェスチングハウス等が核に関する技術を輸出している情報を集めて、その会議に送るようにしています。

 この2年間、アメリカ国民の間でもアメリカの核の輸出に対しての知識が非常に高まってきました。最近の調査によるとアメリカから輸出されたものは約43ヵ国にものぼる。そういうものはアメリカにもって帰る、ひきあげるべきだという運動も起こっています。私はオークランドに住んでいますけれど、オークランドやシアトルなど人々が環境に敏感な地域では運動もさかんで、人々もようやく組織的にこの問題について語り合う土壌ができてきました。

 労働組合でも、労働者が被曝の危険性のある船での労働を拒否する動きがあり、これも反核運動の一つの力になっています。しかしアメリカ人は、まだまだこういう問題についてなにも知らない国民だと思います。自国の輸出の現実について充分な知識を得てはいません。同時に、輸出は雇用を促進する上で良いものだという考え方が一般的でしたが、その輸出の中にも良くない輸出もあるという認識が今めばえてきたところです。 突き詰めると、アメリカ人のアメリカ国内のグローバル化に関する認識度が上がってきた。そして、こういう問題をグローバルに地球全体の問題として解決しようとする動きがでてきた。そういったすべてを含めてGEの動きなどを感じ取り、反対しているところです。

広瀬:
 これは、大変に大きな問題です。日本ももともとアメリカからの輸出でこんなに大きな原子力産業をもってしまいました。これから日本が二度目のあやまちを犯さないように行動していきたいと思います。また、アメリカ人はわかっていないと言われましたが、日本人はもっとわかっていないだろうと感じながらうかがいました。

 それでは、今度はアメリカからインドネシアのジュリアさんにご質問をお願いしたいのですが、ドロシーさんの方からいかがでしょうか。

ドロシー:
 インドネシアの方に御質問いたします。インドネシアには、原発はたくさんありますか。そしてもしあるとしたらそれに対してどういうアプローチをしているのでしょうか。

ジュリア:
御質問ありがとうございます。まだインドネシアには、一基も原発はありませんので、まだ原発によってもたらされる問題はありません。けれどもこれから原発が建つようになれば各国が経験したのと同じような問題が引き起こされると思います。

原発建設予定地になっている村のすぐ近くに、メラピ山という火山があります。この火山はつい最近も2回噴火しており、このような所でもし事故が起こればその被害は甚大なものとなります。安全性、環境保全という問題だけでなく、原発建設に関しては政治的な問題が大きな焦点となります。アメリカではすでに民主主義が定着しているかと思いますが、インドネシアではまだそうではないからです。現在も、原発建設を実現するために政府によって、予定地の住民や反原発活動家に対する多くの弾圧・脅しが行われています。

 現在与えられている情報も政府の情報操作の産物でしかありませんから、正しい情報にアクセスする権利が獲得されていないところで原発が建ってしまうことは、政治的な観点からいってもかなり大きなインパクトを住民に与えることになると思います。

 それから、今日のドロシーさんの話を聞いて、ネイティブアメリカンの方々がウランの採掘等で経験した現実を知りました。そしてもしかしてその同じことがこのインドネシアで起こるかもしれない。今、インドネシアの政府は放射性廃棄物の処分場をインドネシアの一番東の端の島、イリアンジャヤというところに作ろうとしています。イリアンジャヤの人々は独自の文化、そして素晴らしい伝統的な暮らしを営んでいる人たちです。インドネシアの政府は先住者たちの土地に対する権利を全く尊重していません。彼らが長年にわたって暮らしてきた土地であるにもかかわらず、現代的な土地所有の法律に守られていないのをいいことに、政府が強制的に土地を収用してしまうようなことも起こりうる状況にあります。

 原発建設が政治的にも社会的にもインドネシアという国に悪いインパクトを与えるということをお伝えできればと思います。

広瀬:
 ドロシーさん。よろしいでしょうか。

 それでは、どんどん問題を出していきたいと思います。今度はジュリアさんから宮嶋さんにお願いします。たぶんいろいろ厳しいことがでると思いますが、質問でも意見でも厳しいご指摘をお願いします。

ジュリア:
 皆さんのご存知の通り、インドネシアにおける原発建設は、日本の原子力産業がかなりそこに深く関与した形で行われています。立地可能性調査・予定地選定調査を行ったのはニュージェックという関西電力の子会社でした。そして原発を建設すると思われるのは三菱です。日本の原子力産業がインドネシア政府とかなり強いつながりをもってこのプロジェクトを行おうとしています。そこには日本輸出入銀行からの融資が使われ、日本の皆さんの税金もたくさん使われていると思います。このような原発輸出計画に自分たちの税金が使われていることに、そしてこのようなことに日本が関与しようとしていることに対して日本の人々は一体どのような見解を持っていると考えたらよろしいでしょうか。

宮嶋:
 大変厳しい問題をつきつけられたと感じております。まさにおっしゃるとおり、火山地帯に原子力発電所を作るということがどれほど重大で危険な問題であるか、その加害性について御批判があったと思います。しかし現状では、必ずしも日本では知られていないのが実態です。運動としましては、自国の中で原子力発電を進めるだけでなく、外国に輸出して外国で被害を与えるという責任を強く感じており、約9万人前後の人達で原発輸出に公的資金を使うなという署名を集めて国会に提出しています。

 事実を知らされていないのが実態ですので、これをどのようにして大勢の人に知らせるかということが問われています。その意味で、日本の中でのアジア人との新しいつながりがでてきている。つまり、戦争責任を明らかにし、アジアの民族に対して共通の立場で連帯しようという意識がだんだん強くなってきているのです。そういう人たちは事実を知れば必ず支持してくれると思います。もう一つ、日本国内では原子力発電の危険性はかなり認識されてきておりますし、最近の新潟県巻での住民投票では反原発の人たちが圧倒的な勝利をおさめました。日本国内でそのような流れが強くなってきており、このことはアジア民衆との連帯と一つのことだと思います。ですから事実が知らされれば必ず運動に参加し、あるいは支持してくれる人が増えてきてくれるだろうと考えています。事実を知ってもらうための活動の一つとして「原発大国へ向かうアジア」という本を最近出版しました。インドネシアのことは諏訪勝さんが詳しく書いて下さっています。こういった発言を今後もさらに強めていき、そして日本の大勢の人達が再びアジアに対する加害者にならないような方向をめざして努力したいと思います。

広瀬:
 よろしいでしょうか。やはり、自分自身含めて良くわかっていなかったのが実情です。調べていくと私達の郵便貯金が 200兆円を突破しているんですね。大変な金額ですが、その 200兆円がどこにあるかというと財政投融資計画という世界最大の金融機関に入っており、大蔵官僚が勝手に使っているのです。その一例が日本輸出入銀行です。我々の全く知らないところで、大蔵官僚が天下りに近い形で行った人間によって実際そこで運用されて今のような事態になってきている。日本では残念ながらアメリカでクレアさんたちがなさってきたような消費者のボイコット運動が根付かないんですね。やはりもっと意識を高めてもらう意味ではそういった知識をどんどん広めていきたいと思っています。ぜひ日本の人は、あきらめないで頂きたいと思います。

 次に、今度は宮嶋さんからムン・ユミさんに韓国のことで質問をお願いします。

宮嶋:
 それでは、ムン・ユミさんに質問します。韓国では、霊光原発の5号炉・6号炉をめぐるせめぎあいがあるのでしょうか。それと核廃棄物処理場をめぐるせめぎあいが続いていると思いますが、そのへんの原発推進派と反対派のせめぎあいの現状についてお話をうかがいたいと思います。

ムン・ユミ:
 韓国でも原発建設がますます難しくなってきています。特に核廃棄物処分場は、激しい反対運動のため、できていません。また自治体も、不十分ながら地域住民の意見を尊重しなければならなくなりました。環境団体を含めて、政府に反対するとアカだというとんでもないことが以前は通用しましたが、今ではもう通じません。しかし、韓国政府は、今後も原発を新増設してこれを輸出産業として育成するべきだと主張しています。政府の強硬な態度に変化はありません。今は国策として特別法を作って中央政府と韓国電力の思い通りに原発を建てようと、反対する自治体への支援金を増やしてその地域をお金で買収する政策を広げています。霊光5・6号機の問題においても大変深刻な問題ですが、郡守が建築許可をしないといったのに韓国電力は、「建設ができなかったら賠償請求をする」と脅かしました。マスコミでは地域エゴと批判され、結局郡は屈服してしまいました。

 そして昨日5・6号機の着工が始まりました。反対運動の過程で神父一人を含めた四人が拘束されました。今は保釈されていますが二年の実刑を言われたこともあり、引き続き裁判中です。特に霊光原発に関しての問題は、温排水があまりにも深刻で5・6号機まで建設されると海洋生態系は完全に壊されるといわれています。環境部からの事前調査によりますと地盤も非常に弱く、崩壊の可能性も指摘されました。この問題点を彼らは自ら知っているのに自分達が既に投資したし、最初から予約していたから諦めることは不可能だと主張しています。環境団体と地域住民は、霊光5・6号機を承認したことに対して行政訴訟を起こしました。これは、韓国の中では原発に反対する初めての行政訴訟です。霊光近くの光州の市民は、今まで霊光の問題は他人事だと思っていました。しかし霊光で放射能もれの事故があって以来、光州市民もこれが自分達に影響すると認識するようになり最近連帯が強まってきています。この建設をやめさせるために、環境団体は住民達と連帯して、国政レベルでこの問題を深刻に扱うべきだと主張しています。

広瀬:
 霊光の反対運動に私も一緒にデモをしたことがあるので身につまされる話です。日本の原子力や様々な公害について韓国の人はどの程度を知っていらっしゃるか。もう一つは、日本がどういうふうに利用されているか、あるいは、逆に皆さんが学んでいるかを聞きたいのです。つまり、韓国の国内でも日本のことを宣伝に使って原発建設に利用している面があるのではと思うんですがそういうことはありませんか。

ムン・ユミ:
 韓国電力とか科学技術者は、日本の政府を大変まねしています。実際、フランス、日本に次ぎ世界三位の原発強大国になろうというのが、韓国電力の考えです。原発増設も、使用済燃料の再処理も、高速増殖炉の研究をもこれから活性化しようと考えています。こういう核政策全体は日本の政策を見習ったものです。PRする時も日本の例をよくあげ、六ヶ所村は核廃棄物処理場として住民達が積極的に誘致をしたとしています。これに対して環境団体は、たとえば、もんじゅの事故を見れば日本のまねをして失敗することは当然だと訴えています。原発技術がすぐれている日本でも美浜のような大事故がおこりました。これからも日本との情報交換を親密にする必要があると思います。韓国と日本の電力会社の関係以上に反核側でも交流したいんです。


【パネラーからの提案】

広瀬:
 それでは、一巡しました。それぞれの問題と答えは独立しているように見えますが、全体像はぐるぐるまわって、これが世界だろうという姿が見えてきたと思います。六ヶ所村等悪いモデルを早く止めて、世界に証明していけるようにしたいと痛感します。環太平洋反原子力会議の名前にふさわしい議論にするため、私達はどういう行動ができるかを考えたいと思います。アイデアはたぶんたくさんあるでしょうけれど、報道の世界でもきちっととりあげてもらえる形にしていかなければ最後はくいとめられないと思います。その手掛かりのアイデアをまずパネラーから出していただきます。

ジュリア:
 第四回のノーニュークス・アジア・フォーラムがインドネシアで開かれた時、こういう意見が出ました。それはハガキを送るキャンペーンです。そのキャンペーンとは、インドネシアの現状と訴えを書いた文章、それプラス政府に宛てたハガキを作る。そして政府に対してだけではなく三菱のジャカルタ事務所に対しても、インドネシアに原発を建てないでほしいというハガキを出そうというものです。それと同様に、例えばこれから日本から韓国へ行く人が見られるように韓国の原発の現状について書いた印刷物を空港に置くなど、つまりこれからその国に行って休日を楽しもうという人達に、出発する前にその国にどういう問題があるのかを知らせるような方法があるのではないかと思います。

佐藤:
 少し補足します。第四回のノーニュークス・アジア・フォーラムが96年の7月から8月にかけて行われた時、観光ボイコットという提案がでました。外国人はスハルト大統領に、原発を作るなら観光旅行に行かないぞ、原発のないインドネシアなら観光に行きたいぞというメッセージをハガキキャンペーンの中に取り入れていこうというものです。

広瀬:
 変な話ですが、日本人観光客は多いでしょうから効果あるかもしれませんね。

ドロシー:
 二カ月前にアルバカーキでの第七世代の会議に参加したとき、原発についても議論を行いました。そのとき、連鎖反応のように行動をつなげていくということが話し合われました。このことで皆さんの参考になればと思うのは、上院議員に手紙を書くという方法です。上院議員に訴えるというのは、民衆の声を聞いてもらう一つの手段です。一番いい方法としては、国会議員の方々もしくは私達が選んだ代表者に手紙を書いたり、訴えることです。そういう人達は当然私達の声を聞いてくれるために選ばれて、そこに座っていうわけですから。今アメリカ大統領が期間満了という時を迎えております。それと同時に上院議員もたくさん選挙の期間を迎えています。ですから居留地へやってくる候補者に票を頼まれますが、私達も一票入れたら何をしてくれるのかと聞くのです。日本でも同じことがいえるのではないでしょうか。もうそろそろ一般の国民が立ち上がって私達の声を聞いて下さいと声を大にしていい時ではないかと思います。国民こそがその権利のある人達なんですから、災害を被っている人達が声を大にしてそれを知らせなければ。黙って見過ごす時ではないと思います。私はビッグマウス、大きな口をたたくと言われましたが、こうして語ってきました。皆さんもその時期にきているのではないでしょうか。

広瀬:
 ありがとうございました。ただし、日本では深刻ですよね。今日、日本もその上院議員の選挙ですが、本当いうと宮嶋さんとか佐藤さんとかが立候補していればね。かなり、意味深く聞きました。それはアメリカと日本の民衆がどれだけ差があるかということになるんだろうと思います。けれど日本では、ほとんど手配師選挙が行われた中ではたしてドロシーさんの言われることが可能か。日本は非常に難しい国です。

ムン・ユミ:
 実はどうしたらアジアで連帯を強めて原発をやめさせられるかという問題は、ノーニュークス・アジア・フォーラムの時にもいろいろな提案が出されました。アジアでどういう情報を流すかということでは、一カ所に集めて各地へ渡す情報センターを作ろうという提案をしたことがあります。難しいと思いますが、基本的にアジアでの連帯強化と、アジアへの原発輸出が集中されるのはアジアだけの問題ではないので全世界へ、アジアで広がっている情報を知らせるのも大事だと思います。アメリカなど各国の企業やIAEAが参加する環太平洋原子力会議の資料等も世界の人々に知らせるべきだと思います。アジアの反原発運動について欧米の人達は知りません。東欧で原発増設を中止させるために小さいリーフレットを作って、問題提起を書いてヨーロッパ各国に配布して連帯して組織できることを聞きました。アジアにおいて現在の状況をまとめた小さいパンフレットとか本を作って各国の環境団体市民団体に送る。また、ハガキでもいいし、写真やスライド等も導入したらいいと思います。

広瀬:
 本当にそう思います。私も最初韓国に行ったときそれを痛感したんですが、日本で起こっている事故をすぐに韓国の人に知ってほしいと思いました。ムン・ユミさんもおっしゃった様に、皆、日本国内で知らせることで精一杯なんですね。そのようなとき、翻訳してくれる人が本当に大事なんですね。例えば、YMCAやYWCAの人達に資料を渡していくと自然に翻訳できていくといいなあと思ったりするんですが、できたらそういう事がお金のかからない形で自然発生的に伝わっていくメカニズムを早く作りあげていきたいと思います。ありがとうございました。

クレア:
 まず、問題があまりにも大きすぎて、私達にできることは余りにも小さいことに圧倒されてしまうことがあります。しかしマハトハ・ガンジーがかつて言ったように、いくら自分のやれることが小さくてもやらなければならないのです。私もそう思っています。17年前に関わりだした時には、17年たっても同じようなことをやっているとは考えられませんでした。その17年間に進歩もありました。変化はすぐにはおこりませんけれど、小さなことからやらなければならないと思います。

 二つ提案したいことがあります。まず、過去20年間アメリカで成功していることで学校の先生たちが、この問題のついて生徒に話していくやり方です。実際、今私と一緒に動いている20代後半の人たちの多くは、80年代に学校の先生から核の脅威について教えられた人たちです。80年代の核戦争の脅威について、子供たちはそこから学びましたし、アメリカでは国営のTVでの核戦争の番組をやっていました。日本ではチェルノブイリ事故について、地球規模でどういう影響があるのかを教えていくことによって原発も同じ核であり、危険であるという認識が高まっていくのではないでしょうか。子供は大人と違った観点から思いがけない質問をしてくれるものですから。それから、来年がこういう運動に効果の期待できる年になると思います。リオデジャネイロで行われた地域環境サミットが来年で5年目にあたります。これは、世界的規模でこの5年間にどういう進歩があったか、という評価がかなり行われる年です。実は5年前の地球環境サミットの時全くふれられなかったのが原発の危険という問題です。放射性廃棄物についてはたくさん議論されましたが、原発そのものの危険性には全くふれられませんでした。そして今現状を見てみると5年間であまり考え方が変わっていないと痛感します。

 もう一点ですが、国々でバラバラの運動をしていてはだめだということです。どの国でもそうでしょうが、アメリカ人というのはよその国のことは批判するけれど自国のことはおかまいなしという国です。三菱の批判はするけれどGEやウエスチングハウスには目をつむっています。インドネシアの原発に三菱,ウエスチングハウスが関わることになれば、三菱だけに反対運動をしたのであればフェアでないと思います。国内で反対運動すると同時に各々の国の反対運動と連携するというのが堅実ではないかと思います。

 原発が経済的にもうまくいかないこともわかっています。ブッシュ政権下では、何千もの原発を作ろうと宣伝しましたが、銀行が原発立地の為にローンを組むことが全くなくなったため実現しませんでした。私たちPFFでも安全なエネルギーに関する小さなパンフレットを発行しました。ウクライナやロシアはもちろん日本語、中国語に訳して、アメリカではすでに原子力エネルギーは瀕死の状態であることを知らせようとしています。実際アメリカではもっと有機的な生活に変えていこうという動きが強くなってきています。

アメリカの企業が自国で売れなくなったものを国外に輸出、特にアジアへ輸出しようとしていることを、アジアの人達にはぜひ知ってほしいと思います。それと同様に日本企業も自国で売れなくなったものを、輸出してはいけないことをぜひ知ってほしい。

私達のメッセージを伝える方法としては、特に若い人に訴えるにはテレビで音楽家を通すとアピールしやすいと思います。きれいなTシャツもいいですね。だれも、きれいなものは好きで、美しいものがでてくるとそれに対する反応も大きいですから。一般の人に加わってもらいたいと思ったら、是非美しい手段を選ぶ。原発反対に対して美しいやり方で加わってもらうことです。

広瀬:
 アメリカでの原発の行き詰まりについてクレアさんに話していただこうと思っていたところでした。ありがとうございます。クレアさんは17年間とおっしゃいましたが、私も同じなんです。17年前のアメリカのスリーマイル島事件が起こって私も市民運動を始めた人間なので、ちょうど同じで大変感銘深いです。


【会場からの提案】

 会場からの提案を1つ紹介させていただきます。台湾への原子炉輸出がさきほどから話題になっておりますが、今回、台湾の方が来られなくなったことに関連しての行動提起です。

 「今回の参加国を中心に世界各国に呼びかけて、同じ日に共同行動をおこしたらどうか」というものです。これは本当にいいと思います。「今回の参加国の市民が、原子炉を台湾に輸出する日立・東芝・GEの本店・支店・営業所等に一斉に抗議行動を行う。それから、これらの企業のアドレスを公開して、少なくとも今回の参加国から、抗議の手紙・ハガキを出す行動を広めて、やめさせるところまでもっていきましょう」という意見です。

 もう一つ。「インターネットのホームページを作って抗議署名を受け付ける」。これはたぶんすぐにできると思います。また、「電子メールで、各社に抗議メールを送ろう」ということです。「これは主に、インターネットの発達したアメリカにおいて、加害者としての阻止意識を期待しています。クレアさん、ドロシーさん達への希望も含めて」。

広瀬:
 今までをまとめると、ハガキ・手紙キャンペーンをもっと広めようということ、それから、ドロシーさんからの提案行動もハガキ・キャンペーンと一緒に、日常から出来ると思います。

 それから、情報センターを作れないか、特に語学の壁を乗り越えた資料を作りたいという提案がムン・ユミさんから出ました。ひとつは宮嶋さんが本を書いていらっしゃいますので、まずそれを英訳し、そこに新しい章としてインドネシアや各国からのコメントがつけば更にいいなあという気がします。まず宮嶋さんの本が土台としてありますので、広めていきたいと思います。

 運動論そのものに対しては、クレアさんから学校での素晴らしい教育の話がありました。また面白かったのは、地球サミットで原発が排除されたという指摘です。私もなぜ環境サミットをするのに原発が抜けるのか、不思議な思いがしました。クレアさんも同じことに気づいておられて、これはNGOといわれる人たちの行動の中に原発問題を組み込んでいかないといけない、ということだと思います。

 それから、連携活動をしていくということです。日立、東芝、GE、そういった向こう側が手を組んだのなら、私たちも国を越えて手を組んでやっていこう。そして、工業先進国のモデルとしてのアメリカから学んでほしい。アメリカにもいろいろ問題はあると思いますが、確かに、原発の増設を止めたアメリカの行動から多くのことが学べるし、その中でも、銀行がローンをしなくなったことは大きな力になっていると思います。私たちも、経済性の問題は大きなチャンスだと思います。今、住専不良債権という大きな経済問題が出てきていますので、もんじゅの浪費も含めて、経済問題を追及し、官僚たちの行動を追い詰めていきたいと思います。

 そして、いろいろな意味で美しい行動をしようという声が上がりました。これも本当に学んでいきたいと思います。

佐藤:
 先程の、日立、東芝、GEに対して抗議のハガキを出そう、という提案に関しては、ノーニュークス・アジア・フォーラムジャパンの方に、台湾からの要請で「台湾総統・台北のGEに宛てて抗議のハガキを出して」という緊急アピールが来ています。この住所を各国の方にも渡しますが、台湾へもハガキを送りましょう。

 それから,台湾第四原発の問題では、先程いくつかの提案がありましたが、追加で、日立、東芝、GEに抗議する方法として、商品のボイコットができないかということがでてきました。

 この台湾の問題についてクレアさんから発言をお願いしたいと思います。

クレア:
 私もこういう運動の経験があるにはありますが、最初の段階ではなかなか物事が見えません。どういうやり方をしたらいいかについては、考えのフレッシュな方がいいアイデアを出してくれるものです。ですから皆さんにもぜひ考えていただきたいのです。私も一提案をしますが、皆さんからもぜひ聞かせて下さい。考え方は人によっても文化によっても違いますし、国によっても違うものですから。

 私の考えを2つ紹介します。

 まず、電子メールは非常にいい方法だと思います。コンピュータに対しては諸手をあげて賛成というわけではないのですが、電子メールはこの場合には便利なものだと思います。世界中の情報にアクセスできますから。

 私も、電子メールを通じて台湾のことを何週間も前から追いつづけて、台湾がGEと契約を結んだという情報もそこから得ました。そして、台湾の総統の住所も電子メール上で知りました。電子メールというのは、地球規模で人々が連携を保つために最も迅速な方法です。

 次に、アメリカでGEのボイコットが成功した例を紹介したいと思います。

 GEが核兵器を作ることに加担していたことが判って、GEの製品をボイコットしようということになり、10年ぐらいこの運動を続けました。そしてようやくGEに核兵器の製造に加担することをやめたと発表させて終わりました。もっともGEの方では、ボイコットされたからではないと言っていますが、ボイコットの成果であるということは確かです。私たちがボイコットしたGEの製品は、核兵器とは全く関係のない、電球でした。電球は小さく、各社が生産しているので物流の範囲が大きいため、誰でもボイコット運動に参加できるという理由でこれを選んだわけです。私自身もこの5,6年GEの電球を買った覚えがありません。ボイコット製品を選ぶときは、そこの商品を買わなければ他を探すのに困るというのではなく、代わりの製品がすぐ手に入るものがいいと思います。

 それから、国レベルでのGEのボイコットというのは、カトリック系の病院が放射線のスキャンシステムを買うことをやめた事例があります。これはGEにとって非常に大きな製品ですから、相当こたえたように思います。

 ターゲットを選ぶときには、広範囲で売られているもので誰でも買うもの、小さなもので始めれば、それが結局会社にとっては大きな損害になるので、効果的だと思います。

 そして逆に、「良心的な会社の製品を買おう」というキャンペーンも同じような効果をあげると思います。GEに関してはいいビデオがあって、GEが核兵器に加担していることがよくわかり、運動を広げるのに役立ちました。

佐藤:
 ありがとうございました。

 第四原発の原子炉等主要部分は日立、東芝が輸出するということです。98年着工予定です。台湾の人たちが必死で阻止していくと思いますが、今すぐここで何か行動を決めることはできなくても、日本の中でも急いで連絡を取り合って、何らかの行動を作っていきたいと思います。

 会場からたくさん質問がきていますので、パネラーの方に答えていただきます。

 まず、ジュリアさんへ。

 「環境大臣のサルウォノ、電力公社のマルスディ、前鉱業エネルギー大臣のスブロト、こういった人達は原発反対だと聞くが、彼らの影響力はどれくらいあるか。そういった人達に情報を伝えることはできるのか。効果があるのか」という質問です。

ジュリア:
 まず初めに、政府の関係者で原発建設に反対をしている人は、サルウォノ、マルスディだけではなく他にも何人かいます。しかしインドネシアの政治状況から考えますと、政府の方針に反対を唱えている人の態度が長く続くことはあまりないのです。大統領が、その態度を変えろと言えば、彼らは変わらざるをえない。まだ原発に賛成していない政治家の人たちに対して支援をすることは可能です。けれども政治家が自分の態度を自分自身によって決めようとしても、すぐ大統領の力で変えられてしまうという問題があります。

佐藤:
 どうもありがとうございました。

 同じくジュリアさんに。

 「オーストラリアでインドネシアの原発計画に対する反対運動をやっていますか? 」という質問です。

ジュリア:
 グリーンピース・オーストラリアが、インドネシアで原発事故が起こった場合にオーストラリアが被る放射能被害を分析した本を出版しています。最近ではアラン・テーラーという学者が、事故が起こった時に放射性物質がどのような拡散の仕方をするのかについての論文を発表しました。そしてつい最近INFIDの集会がオーストラリアで開かれ、インドネシアの活動家が参加しています。ドイツでも、特にインドネシアの原発建設を扱う市民団体が存在します。

佐藤:
 ドロシーさんへの質問です。

 「ウラン鉱山で被爆した人に対するアメリカ政府の補償について、思っていることを再度おっしゃって下さい」

ドロシー:
 私たちは、まだ政府に補償してもらっていません。ワシントンへは陳情を続けていますが、まだ私たちのところまで補償はまわってきていないのです。これまでのところ、補償を受けた人というのは地下の炭坑に入っていた人だけで、露天掘りで採掘に関わっていた人、工場で働いていた人というのは補償の対象からはずされています。

クレア:
 私の方からも少し付け加えます。ドロシーさんがおっしゃった補償のことですが、これは、放射性物質に晒された者に対する補償という法律によるものです。ところがこの対象となる人は非常に限られており、病気の種類も限られていて、郡によっても違っています。対象とされる人は、地下坑で働いていた人、核実験の実地で働いていた人、核兵器の製造で働いていた人だけがカバーされるのです。これは政府の方針として、原子力発電というのは安全であるという認識に立っているからで、私たちも含めた支援団体は、すべての人に平等に保障することを求めて闘っています。

 次に、韓国の選挙に対する質問です。

 「韓国では国政選挙で原発問題が取り上げられることがあるか。反対運動の側から国会議員に対してどんな働きかけをしているか。地方自治体の首長や地方議会は原発立地に対して法的な権限を持っているか。首長や議会が原発立地の肯否に対して意思表示をすることがあるか」国政と地方政治と、両方についてお願いします。

ムン・ユミ:
 国政選挙では原発の問題は出たことはありません。でも、候補地等の選挙では、いつもこの問題は出ます。程度の差はあれ皆、自分が当選したら原発に反対すると言っていたのに、いざ当選してしまうと積極的には、約束した通りには働いていません。

 国会にある通商委員会と通信科学委員会に所属する議員は、原発の問題を質疑することができます。今までは、原発建設に反対の意見が常任委員会において扱われたことはないのですが、反対側では、議員を通じて、日常的に非公開の情報をもらっています。

自治体の首長には、原発建設以前に許可をする権限がありますが、これは全体についてではなく、建設の中心的な建物以外の付属建物に対する許可です。自治体の長が持っている最小限の権限ですが、霊光郡地域以外でも建設許可を出さないことによって、原発の建設を延長・中止させる働きをしています。

 たとえば、ウルチン郡長の場合は、ウルチン5・6号機に対して反対する立場をとっていますし、原発建設反対対策委員会の共同代表にもなっています。

佐藤:
 ありがとうございました。

 廃棄物について、いくつか質問がきていますので、一括して広瀬さんにまとめて答えてもらいます。

広瀬:
 廃棄物についての質問は、コストの問題、原子炉そのもの、核兵器の廃絶、ロシアの現状、廃炉、使用済み燃料搬入等いろいろあります。廃棄物の問題は、今、青森県六ヶ所村に持って行って、下北半島を「核の墓場」にするということで、ようやく産業として成立するということがあります。「核の墓場」という名前をつけるわけにはいかないので、「核燃料サイクル」といういかにも生産性のあるかのような名前をつけたのですが、これが「もんじゅ」の事故によって破錠した。「もんじゅ」でできる高純度のプルトニウムを取り出す再処理工場、もう一つ、核融合、トリチウムの問題があり、これらを全部組み合わせた時に、核兵器体系が水爆まで含めて完成すると思うのです。それが逆にいうと、「もんじゅ」の大事故によって破錠した。

 核兵器の製造体系は完全に破錠したけれど、核の墓場の決定的作業が現在進行している。これを、各地で我々自身が強い声を挙げていって、くい止めたいと思います。

佐藤:
 「推進側の環太平洋原子力会議に意見を伝える方法はどうなんでしょうか」という質問ですが、これは実行委員会の私から答えます。

 原産会議・原子力学会の方へ再三申し入れを要求しましたけれど、「忙しいので、後日承ります」ということで、事実上話し合いは拒否という許せない態度です。私たちは、それに対しての抗議も含めて、本日5時から7時まで、街頭で私たちの気持ちを幅広く伝えたいと思います。

 声明文については、向こう側の会議に必ず届けます。私たち実行委員会の非力をお詫びします。

 


【日本の人々に言いたいこと】

広瀬:
 最後に、日本の人々に言いたいことを、4人の方に一言ずつお願いして、それらを受けて、最後に宮嶋さんの方から一言いただくという形にして終わりたいと思います。

キム・ボンニョ:
 私は、釜山環境運動連合から来たキム・ボンニョと申します。日本の方にはいつもお世話になり、この場を借りて感謝いたします。

 私も釜山で、それ程効果のある運動を広げているわけではないですが、今年3月の環境会議に、韓国から15人以上が招待されて、水俣まで行きました。しかし、大きい会議にも関わらず、放射能の問題は少しも出されませんでした。

 フランスは、ヨーロッパの中で一番汚染されている国だと聞いています。それは原発が一番多いからだと。日本にも50基の原発があるにも関わらず、環境会議に放射能の問題が全然ないのでがっかりしました。それで、これからは放射能の問題も扱って下さい、と抗議声明を出しました。

 きつい提案をして下さいと言われたので、日本にお願いしたいのは、組織にとらわれないで外に向けて積極的に話を持ちかけてほしい、ということです。もう一つは、日本には各地域に小さいながらも多くの反原発の団体があると聞いています。この大事な時期に、なぜこれだけしか集まらないか残念です。もっと積極的に運動したらどうでしょうか。

ジュリア:
 私たちアジアの住民は、これまで様々な形で苦しみを味わってきました。そういった経験がありますから、私たちはこれ以上、力を持った国々の犠牲にはなりたくないのです。力を持った国々の皆さんも、そういった結果をもたらすことに加担したくないと思ってらっしゃると思います。この会議の最後に、このことだけを言いたいと思います。ありがとうございました。

クレア:
 この会議に招待していただいてありがとうございました。非常に力のこもった経験になりました。

 私はヨーロッパ系アメリカ人ですが、私と日本の方々とは核開発について非常に複雑かつ重要な関係を持っていると思います。

 私も、運動に長い間関わってきましたし、皆さんもそうだと思います。そういう経験があっても、こういう会議に参加すると学ぶことが多いものです。

 運動を始めたときと同じように、韓国では、インドネシアでは、台湾では、そしてネイティブ・アメリカではどういう事が起こっているか、とただただ疑問に思うことが多いわけですから、この会議に参加して新たな感慨を持ちましたことをお礼申し上げたいと思います。

 サンフランシスコで新しい連合ができました。「アジア太平洋地域環境ネットワーク」というものです。これは、その地域のアジア系の人達が皆で協力して環境問題に取り組んでいこうというものです。私の友人、同僚の中にもこれに関わっている人たちがいます。中国、台湾、日本などからやって来てアメリカに住んでいる人たちの子供たちです。帰りましたら、そのグループにここで学んだことを伝えたいと思います。そして、この問題に注意が向けられるようにしたいと思います。

 GEの本部がサンセノにあり、サンフランシスコから近いベイエリアですので、これに対して何か運動を起こせるのではないかと思います。GEの方まで行って「YAMENASAI」と言うことにします。

 こちらへやって来る飛行機の中、乗員全員が黙って座っていました。パイロットが「富士山が見えますよ」とアナウンスすると急にその人たちがざわつき、日米ビジネスマンも私たち反核運動家もお互いに笑い合ったり、話し合ったりして、富士山の美しさを愛でました。美しいものを見ると急に皆一つになることができます。

 美しいものを通して文化の違い、互いの違いを容易に乗り越え、一緒に何かをすることができる。これは私にとって、感銘の深いものでした。それと同時に、富士山は火山であることを思い出して、環太平洋の火山地帯が火で結ばれている。その火がたまには大きく吹いて、私たちに、「原発は要らない」というふうに促すんだ、ということも思い浮かべました。「私もやるんだ!この世の中から原発が1つもなくなってしまうまで、運動を続けていこう」と決意を新たにしました。

ドロシー:
 私はここに座って皆さんの言うことを聞いていました。言葉を失ってしまったということなのでしょうか。世界中で、多くの人たちがたくさんの問題を抱えているんだ、ということを実感しました。

 最近、若い人にこういうことを聞かれました。「世界には、こんなに問題があるのに、どういうことをすれば解決するんでしょう」

 それで私は答えました。「私たちにできることは頭を下げて祈ることです」と。祈りのなかに答えを見つけることもできますし、希望や夢を見つけることもできます。それと同時に、こうしてまた、2度目に日本にやって来て非常に多くの感銘を受けることができ、心からお礼を申し上げたいです。

 ネイティヴアメリカ人としてここにやって来て、私たちだけに問題があるわけではないと実感することができました。帰って、手を携えて問題を取り上げたいと思います。御親切、ありがとうございました。

広瀬:
 厳しいというより温かいことばをいただきましたので、代表して宮嶋さんから、お応えいただきたいと思います。

宮嶋:
 貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。みなさんを代表することはできませんし、そういう立場にもありませんが、非常に感銘深い指摘を受けたことに、感謝いたします。

 特に、アジアの民衆というお話がありましたが、アジアの民衆は苦しい体験をしたがゆえに、繰り返したくないということは、インドネシアだけではなく、アジア民衆全体の共通の認識だと思います。戦争責任から、侵略、謝罪、補償という、日本人として根本的問題をなおざりにしたままであるということがアジア民衆から日本人への批判として寄せられてきているということを今日も強く感じました。

 もう一つ。原発の推進ということは、人種差別・抑圧という構造の上に成り立ち、それを拡大していることを改めて感じさせて頂きました。ネイティブ・アメリカンや、原発輸出される国々の民衆の犠牲の上に、原発は推進されているんだと重ねて感じました。

 ここで明らかになったことは、日本の責任は一層重くなってきているということ。特に今の原子力政策が、アジア規模でどれ程重要な位置にあるか、ということです。気がつかないうちに私たちは加害者になっていくんだ、ということを捉え返しながら、日本の反原発運動を進めていかなければならない。先程お話があったように、日本の推進側も窮地に立とうとしています。アジア全体の原発推進をくい止めるのに、最も近道なのは日本の原発政策を破錠させることだと思います。そのことに私たちは、もう一度決意を新たにして努力する。アジアの民衆との連帯を強化する。そして、台湾への原発輸出に反対する共同行動はその第一歩として直ちに実現していきたいと思います。長時間に渡りましたが、ありがとうございました。

広瀬:
 ここにいらっしゃる方々が日本に来て下さったこと。特にドロシーさんは体の具合が悪いのをおして来ていただいたことに会場の皆さんからもう一度、拍手をお願いしたいと思います。(拍手)

 先程、なぜこんなに少ないんだという話がありましたが、そういうことより、私たちが顔を見て、会うということが一番大事だと思います。顔を見て一言でも言葉を交わし合った仲は忘れません。ですから、最初は苦労もあるでしょうが、ここからいろいろな果実が生まれてくることを願っています。どうも、ありがとうございました。

北川:
 それではここで、台湾の状況が何度か話されましたけれど、緊急声明を採択したいとおもいます。

台湾への原発輸出
反対・緊急声明

(徳井:読み上げ)

 私たちが、「市民による環太平洋反原子力会議」において、世界から核をなくすことを決意したまさにその時、私たちのもとに台湾国民党が不当に原発建設を決定した知らせが入りました。

 私たちは、この神戸で、日本の技術が地震には無力なこと、カネとウソで住民を押さえつけて原発を建設していること、自然エネルギーだけで私たちは暮らしていけることを、この会議で学びました。台湾では半数の国会議員がボイコットする中、審議もせず、抗議する民衆を暴力で押さえつけ、無理やり可決したのです。私たちはこの決定を決して許しません。

 台湾へ原発輸出をしようとするGE・東芝・日立を決して許しません。特に日本、アメリカの市民にとって、原発を輸出することは新たな侵略に加担することです。

 私たちは、台湾への原発輸出を防ぐあらゆる方法を行っていきます。


1996年10月20日
市民による環太平洋反原子力会議参加者一同

 

北川:
  この2日間の討議をまとめ、練り上げた声明文があります。若干、御意見を反映しきれなかったところもあるかと思いますが、拍手で採択し、原産会議に送りたいと思います。

 

神戸声明

(牧野:読み上げ)

  95年1月17日に起きた地震は、私たちへの問いかけを続けています。

 この地の地震が十分予測されていたにもかかわらず一般にはほとんど警告されていなかったこと。耐震設計がなされているといわれていた建築物が数多く壊れたこと。大規模な被害のために救援・消火活動がわずかしか行えなかったこと。そして、今なお困窮を極める被災者に対してなんら公的な補償が行われないこと。

 これらは、この地震の被害が人災であり、この国が災害に対し被害を抑える技術をもっていないばかりか、人命を尊重する姿勢すら持ち合わせていないことを浮き彫りにしています。

 その人災の地・神戸で「環太平洋原子力会議」が行われることに私たちは大きな危惧をいだいています。この会議は原発を推進する機関・企業と原発の建設を予定している者たちが集まり、原発建設について検討されるからです。そこで私たちは「市民による環太平洋反原子力会議」を開き様々な点について学びました。

 そもそも、環太平洋地域は環太平洋地震帯と呼ばれる地震の巣でもあり、すでに原発が立地されている地点はもとより、これから建設されようとしているインドネシアも地震多発地帯です。しかし、地質や断層の位置などを正確に知ることは困難であり、地震の危険のない地点を探し出すことは不可能であることが国内の専門家から報告されました。そこで、日本では電力会社や科技庁が勝手に甘い評価を行うことにより原発を建設してきたのです。直下型地震には原発は耐えられません。他の国々でも状況は同じと見られ、いわば環太平洋地域の原発は、いつ地震により壊滅的被害をもたらしても不思議ではない状況にあるといえます。

 そして、原発は日本国内でもカネや地縁を使った工作により立地地域を屈伏させるかのように建設を強制させようとしていることを、私たちは珠洲・巻町からの報告であらためて知りました。そして韓国・台湾では、日本が原発を受け入れていることを「ヒロシマ・ナガサキを経験した核に敏感な日本でも、原発は市民に受け入れられているから大丈夫だ」といって宣伝されているというのです。さらにインドネシアでは「地震国日本でも運転されているから大丈夫だ」と宣伝されているというのです。原発はまさにウソとカネで作られているといえます。今回の「環太平洋原子力会議」においても、いわゆる「PA」と称する宣伝工作が討議テーマの一つとされていることに、私たちは強く抗議します。

 更に、インドネシア・台湾からの報告により、原発の輸入がいかに非民主的・暴力的に行われようとしているか、私たちは学びました。10月18日、台湾立法院では、国民党による暴力的な強行採決によって第4原発建設が決議されました。最悪の公害・原発を輸出することはあらたな侵略と呼ぶべき行為であり、インドネシアに三菱が、台湾には日立・東芝が原発を輸出しようとしていることを私たちは絶対に許せません。

 先頃締結された包括的核実験禁止条約(CTBT)で、核兵器のみでなく原発や研究施設を持つ国々の批准もその発効条件とされたことでも明らかなように、核の「平和利用」と「軍事利用」は不可分一体のものです。従って再生可能エネルギーを選択することは同時に平和への道を選択することでもあるのです。本来ならば、自然エネルギーをうまく活用することにより多くの国々でエネルギーの自給が可能です。そしてそれは日本のようにすでにエネルギーの集中生産と浪費のパターンが確立されてしまった国よりも、原発のまだない国々こそ先駆者となるべき技術であるといえます。

 この地は、原発の建設について話をするのにふさわしい場所ではありません。この神戸は原発を止めようという声を上げることこそふさわしい町なのです。

 私たちは「環太平洋原子力会議」の参加者と原発を推進するすべての勢力に対し、我々の声に耳を傾け、原発の建設をやめ原発を止めるための努力を始めることを要求します。

 私たちは訴えます。もうこれ以上、核の被害者を増やしてはなりません。ウランを掘り出さないこと、核の利用を止めること、核廃棄物を未来に残さないこと。

 この地で、形あるものが壊れ果てても、
助け合う心が生き続けたように、
環太平洋から核がなくなる日まで、
私たち民衆の連帯の絆が
生き続けると確信しています。

1996年10月20日
市民による環太平洋反原子力会議参加者一同

 

北川:
 ただいまの拍手で採択されたものとして、原産会議に送りつけたいと思います。今日は感銘深い話をたくさん伺いましたので、それをもとに今後運動を頑張っていきたいと思います。

 ありがとうございました。

 

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