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第四分科会 原発輸出を許さない
■最悪の公害輸出を止めて


■原発が民主主義を遠ざける

ジュリア・トラワガン

インドネシアにおけるPAの犯罪

 話をはじめる前に、この神戸で開催される「環太平洋原子力会議」に対する抗議の意を表明したいと思います。この神戸の町は、去年の地震で甚大な被害を被りました。そのような場所で、この地球上に生きる人々に対して苦しみしかもたらさない原子力に関する会議を開催するということは、地震によって大きな苦しみを受けた人々の痛みに対してまったく思いを寄せることのない、無神経な行為であると言わざるをえません。

ここでのスピーチの中で私は、インドネシアにおける原発建設計画についてのアウトラインと、インドネシアの民衆が被ると考えられる負の影響についてお話したいと思います。インドネシアにおける原発建設は、さまざまな利益につながる入り江であるといえます。たとえば、国際的な原発産業のロビー、そして原子力産業を擁する国、そして企業と推進側のつながり、工業化を推し進めるための必要性、また原発建設計画を推進するために特定の政府関係者が抱く野望といったものが存在します。

エネルギー源として原子力発電所を採用したいと言うインドネシア政府の野望は、かなり以前からありました。前大統領在任中からあったといってもいいと思います。しかしそれが明確な形を取り始めたのは、1974年にインドネシア原子力庁(BATAN)が設立され、建設予定地の選定をはじめてからです。

政府は常々、「原発建設はインドネシア民族の発展のためだ」と言ってきました。すなわち、インドネシアにおける電力需要は2010年には25.467MW、2015年には32.710MWに達すると予測されていることから、工業発展のためのその需要(ジャワにおいてですが)を満たす必要がある。しかし現状のままでは2010年には1.362MW,2015年には7.625MWの電力不足が起こる。この電力不足が、「原発こそがこのエネルギー危機を克服する唯一の方法だ」という議論を招いてきました。

原発建設には巨額の費用が動くため、多くの勢力がそのプロジェクトに対して食指を動かしています。聞くところによると、外国資本の連合があるだけではなく、スハルト大統領の末子、最も強力に原発計画を推し進めてきたBATAN長官のアヒムサの息子、技術研究担当大臣ハビビの弟、その他2つの国内私企業による連合が存在します。

政府関係者の野望ということになれば、さらに明らかです。アヒムサは、自身が退職するまでにはすでに原発が建設されていることを狙っているという話も聞きます。

しかしながら、こういったことはすべて、高度科学技術が進歩の象徴であるという間違った考え方に基づいたものではありませんか。「原発を所有すればインドネシアも先進工業国の仲間入りができる」、ハビビやその追従者たちはよくそのような発言をします。しかしことはそのようには進みません。この問題はやはり、「近代化」の概念の産物、すなわち近代化や進歩というものは欧米先進工業国をまね、そこに起こったことを繰り返すことだと言う見方、現在自国にある伝統的なものを放棄しなければならないといった考え方の結果であるといえます。先進各国における近代化政策は、国民の福祉に積極的な影響のみを与えてきたわけではありません。原発などは最も顕著な例で、すでに先進各国で経験されてきた悲劇が、まったく教訓として生かされていないのです。

インドネシアの原発建設では、原子力産業ロビーの役割が非常に大きいといえます。今年の初めにインドネシアを訪れたカナダのクレティエン首相などは、原発ビジネスに食い込むことに特定の国々がどれだけ大きな関心を寄せているのかをはっきりと示しました。クレティエン首相は恥知らずにもスハルト大統領に原発導入とそのためのローンを持ち掛けたのです。自国カナダではすでに法律上も段階的に脱原発を目指していくことが決定しているというのに。自国で受け入れられなくなった技術を他国に売りつける。これは、先進国の指導者の第三世界に対する傲慢な態度の好例です。カナダはインドネシアの原発で発生する核廃棄物の処分プロジェクトに参入するといわれています。

私が今ここに持ってきたステッカーをご覧になれば、予定地でおこなわれている情報操作の現実がお分かりいただけるでしょう。このステッカーは地域住民に配布され、家の窓などに張るよう指導されています。

現在までに行われてきたこの種のプログラムは数え切れないほどあります。BATANが直接おこなうものもあれば、ジュパラ地方政府が組織した「原発建設住民対策チーム」によるものもあります。その標的は、農民から芸術家まで地域社会のすべての階層におよんでいます。1992年5月にジュパラ県知事の指示によって結成されたこのチームは、2、3年前から活動しています。財政的には全面的に地方政府の援助を受けており、その金額は明らかにされていませんが、BATANも直接この活動に資金援助をおこなっています。「電気が通る、道がよくなる、働き口が増える、観光地として発展する....」そういった情報操作は、人々を「豊かな暮らし」へと誘惑するだけでなく、反原発運動を追いつめる結果をももたらしつつあります。9月におこなわれた「原子力技術プログラムとその利用」というスピーチにおいて、ジュパラ県知事バンバン・プルワルディは、反原発活動家の入村を拒否するよう住民に示唆しました。「住民対策チーム」の活動はすでに成果をあげており、この9月に現地を訪れたFANIの活動家の調査によると、「原発との共存」とかかれたステッカーがあちこちの家に貼られていたといいます。予定地周辺の住民は、外部の人間、特にムリアの原発建設に反対する人間の訪問を遠目に監視していたとのことです。

予定地の人々は、原発が彼らにとって有益なものであるという強い確信を持ちはじめています。原発が地元住民に電力を提供し、道路が整備されて交通の便がよくなり、海岸部が観光地として発展する、そしてそこで物を売ることができ、生活のレベルが向上する、彼らはそう信じているのです。そのような発展が訪れることを期待して、彼らはそれを受け入れる準備を始めています。ある者は竹でできていた家を煉瓦造りに建て替え、ある者は電気がくると考えてパラボラ付きのテレビを購入したといいます。原発は、彼らにとって発展、進歩のシンボルなのです。

予定地では、反原発運動の活動家だけではなく、一般の住民で、どうもこれから反対運動に加わりそうだと目をつけられた人々に対する弾圧や脅しが行われています。ジュパラ県知事はすでに住民に対して、「本やチラシなどを配りにくる反原発運動にかかわるものと接触してはならない、そういう人々を村に入れてはいけない」というような通達を公式に出しています。次に挙げる例は、この問題をよくあらわしていると思います。

今年の中頃に、私たちはジョクジャカルタで活動する人たちと一緒に、ムリア地方の人々を招待して、ジョクジャカルタにおいて原発に関するトレーニングをおこなったことがあります。そこに、予定地であるバロン村からも一人の農民が参加しました。まだインドネシアには原発はありませんので、話だけではわかりにくいということで、その時私たちはインドで起こった原子力発電所の事故とその甚大な被害についてのビデオを上映しました。原発によって大きな被害を受けた諸外国の経験を聞くうちに、その男性は原発の危険性を理解し、そこで聞いた情報を村の人たちにもどうしても伝えたいと考えました。

そして彼は村に帰ってから、友人たちを自分の家に招いて、原発のことについて話をする機会を持とうとしました。その会合は11時ごろから人が集まりはじめて、11時半頃から始まったのですが、その頃には、彼の家の周りには、村ではまったく見掛けない人間たちがたくさんたむろしていて、周囲の住民たちに聞き込みのようなことをしていたといいます。そして会合の中にも、見知らぬ男が入ってきて会に参加したいと言いました。参加者の中に偶然彼を知っている人がいてわかったのですが、その男はその地方の軍司令官だったのです。来訪の理由を聞かれてその司令官が言うには、「今日ここで原発に反対する人々が集会を持つと聞いた、一体どんな話をするのか聞きに来た」というのです。集会を主催した農民は、ここで真正面から原発の危険性などということについて話したら何があるかわからないと考え、「BATAN長官のジャリ・アヒムサの書いた文章についての勉強会をしようとしたのだ」というふうに釈明しました。しかしその集会はその司令官によって直ちに解散させられてしまい、その直後にその農民は地方警察に連行されて、会合の目的を執拗に尋ねられるなど長時間におよぶ取り調べを受けました。

そして数日後には、彼に起こった出来事についてのニュースがラジオで流されたのです。そのニュースとは、彼が家で非合法かつ不穏な会合をおこなおうとした、その会合があまりに不穏なものであったので、軍がそれを中止させたというものでした。ニュースの中では、その農民本人だけではなく、その家族や親しい友人たちに関しても、具体的に名指しをするような形で“不穏な会合”との関連が語られました。農村の小さなコミュニティでのことですから、そこでそのようなニュースを流されたら、本当にとんでもない悪いことをしたのだという印象を他の住民は植え付けられてしまったわけです。

そのあとやはり村にいづらくなってしまったその農民は、村での苦しい状況を逃れてジャカルタに出てきました。そして私のところを訪れて、マレーシアに行って仕事をしようと思う、もうインドネシアから離れようと思う、と打ち明けました。しかし彼は家族を残してきていますので、私は彼に対して、もしここであなたが村を離れたら、自分が間違っていたと自ら証明するようなものであり、残された家族の身に何があるか分からない、苦しいだろうけれど村に帰った方がいいのではないか、と話しました。彼はついには村へ帰っていきました。

そのような経験があったにもかかわらず、彼はその後も反原発の活動に関わることを止めず、原発の恐ろしさを伝える活動を個人のレベルで続けています。2ヶ月ほど前には、彼が逮捕されて7時間にも及ぶ取り調べがあったというニュースを受け取りました。

こういった脅しや弾圧ですが、これを反原発の活動家が行ったのだとすれば、逮捕される、集会が禁止させられる、デモが解散させられる、そして取り調べが数時間あってそれで取り合えず終わりになります。しかしこれを活動家ではない一般の住民が行ったとすると、活動家に対するものとは比べものにならないくらいきつい弾圧が行われます。取り調べも非常に微細にわたり、家族に対する攻撃が行われることもあるくらいに、活動家ではない住民が反原発運動にかかわるということは政府による激しい弾圧を引き起こしています。

 

計画の背景と考えられる被害

また、原発建設を実現するために政府がやっていることに、今年の初めに国会に上程された「原子力法案」があります。この法案が上程された経過自体にも常軌を逸した部分があったのですが、具体的に原子力の利用や廃棄物の取り扱い、事故の際の補償などが取り上げられています。現在インドネシアには原子力関連産業が存在するために必要な事項を取り決めた法律がありませんので、この法律ができることによって、法的にも、対外的にもインドネシアが原発建設に着手することを合法的にし、そして外国からの融資を受けることも可能になると政府は考えています。インドネシアではすでに、立地可能性調査が行われ、それを関西電力の子会社であるコンサルタント会社、ニュージェック社が行いました。この調査は15億円でニュージェックが落札しました。そしてその6割は日本輸出入銀行が融資し、利子は年率7.5%という契約でした。ここで出てきた登場人物のつながりを見ると、そこには奇妙なつながりが見えてきます。建設が是か非かということを見極める調査を行ったコンサルタント会社が、電力会社の子会社であること。関西電力が日本で操業している原発は三菱・ウエスティングハウス社製です。三菱・ウエスティングハウスがインドネシアに原発を建設するといわれていますが、その関西電力が、これからインドネシアに原発を建設しようとしている三菱という企業とすでに深い関係を持ってきていること。そういった関係性が、非常に不透明ななにかを含んでいると思います。そして立地可能性調査は、実はこの計画に法的な正当性を付与するための道具にすぎません。なぜなら、調査結果が出される前から、政府は建設は自明のことと公言しているのですから。

今回のニュージェックの調査で注目すべき点は、予定地が、これまでずっと第一候補とされてきたウジュン・ワトゥからウジュン・ルマアバンに移ったことです。なぜこのような変化があったのかについては、次のような理由があると思われます。ウジュン・ルマアバンというところは、その土地のほとんどがココアや椰子の国営プランテーション農場の所有地、国有地であるのに対して、ウジュン・ワトウの方は住民も多く土地も私有地が大半を占めるからです。私有地が多ければ多いほど土地収用に伴って起こってくると考えられる社会的な摩擦も増大することから、ニュージェックは候補地の変更を行ったのではないでしょうか。

そういった例からもわかるように、インドネシアにおける原発建設の危険性というのは、インドネシアが地震帯であること、事故が起こったときの影響などとはまた別に、国民が被ると考えられる社会的、政治的、文化的な影響を考えなくてはならないと思います。 まず政治的な観点から考えると、原子力諸施設が建設されれば、諸外国ではそれを警察が担うのではないかと思いますが、インドネシアではその警備をおこなうのは軍ということになります。その結果、原発に反対する活動家や一般住民に対する弾圧が行われ、その弾圧が、人権擁護運動一般に対する弾圧へと変質していく危険性を秘めていると思います。民主化のプロセスは妨げられ、インドネシアの人々は、原発の存在ゆえにおこる環境破壊と社会政治的な抑圧の前に、どうすることもできなくなるでしょう。

現在もインドネシアでは情報公開の原則がまったく実現されていません。原発が建設されることでさらに、国民がさまざまな情報にアクセスする権利が侵害されると考えられます。予定地のあるジャワ島だけではなく、ウラン鉱床をもつカリマンタンやイリアンジャヤ、特にイリアンジャヤの場合は放射性廃棄物処分場を作るということを政府関係者が明らかにしているような段階ですが、そういった地域の人々に対してもまったく必要な情報が与えられていません。このような状況を考えると、インドネシアという国、そしてその政治状況は原発を受け入れるような状態にはない、それどころかそれによって非常に大きな負担や苦しみがインドネシアの民衆にのしかかってくるのです。

また、環境的な差別も起こってきます。原発で作られる電力の恩恵にあずかることができるのはジャワ島の一部の人々でしかありません。しかしウランを採掘することで、イリアンジャヤやカリマンタンの人々に環境汚染と健康被害を強いていくことになります。彼らはその電力の恩恵にあずかることもできません。そしてイリアンジャヤに放射性廃棄物処分場を作ることで、イリアンジャヤという、地理的にも政治的にも非常に中央政府から遠く離れたところの人々をないがしろにしていくことになってしまいます。

今回の原発建設がどういった財政的な計画の元に行われるかというと、要するにすべてが外国からのローンのみによって行われることになっています。そしてそれらがすべてさらにインドネシアの負債を増やしていくことになります。現在インドネシアの負債額は合計1000億ドルという数字に達していますが、それが更に膨張していくわけです。原発建設着工から建設終了までに、60億ドルの負債が更に加わると見積もられています。この負債の重荷を背負っていくのはインドネシアの民衆です。そしてこの数字の中には、廃炉の費用も核廃棄物処分、管理の費用も含まれてはいません。どちらも未だ確かな技術は確立されておらず、そのための費用はうなぎ上りに上がっていくものと考えられます。

ミクロの視点から見ても、予定地のあるムリア半島の海岸地域は現在非常に豊かな漁場なのですが、原発の温排水で水温の上昇や汚染が起こり、海洋資源が壊滅的な打撃を受けると考えられます。海水を利用してエビの養殖なども行われているこの地域で海が汚染されるということは、それによって生計を立てている漁民、農民の生活の糧が破壊されてしまうことを意味します。インドネシアの経済に対するその負の影響は想像を絶するものです。

ジャワ島は地震帯であり、本当にたくさんの火山があります。その小さな島にインドネシアの人口の7割が集中してすんでいます。そのように人口も密集した島に原発を建てようとしているわけですが、事故が起こったとき、その人たちを一体どうやってどこに避難させるのか。そういった防災面での研究については、まったく調査も検討も進んでいません。

インドネシアで原発の事故が起こった場合、雨季であれば、オーストラリアのキンバレーまで放射能雲が達するだろうといわれていますし、乾季であればそれがインドまで及ぶとの調査結果が出ています。

NGOなどによって世論調査が行われ、その7割以上の人が原発建設に反対していることが明らかにされました。しかし政府はそのような国民の心をまったく考慮しようとはしないし、国民投票を求める声に対しても関心を向けようともしていないのです。ここで私たちは、国際的な連帯のもとにこの計画を何とか止めていくということを考えなければならないと思います。特に日本は今回の原発輸出に関してかなり大きな役割を果たしてしまう国ですので、その国の人たちと共に闘うことでなんとかこのプロジェクトが粉砕されることを願っています。ありがとうございます。

 


■質疑応答

民衆の連帯とさまざまな取り組み

 

会場:

現在日本では国会に対して、原発輸出を止めてほしいという請願署名を集めていますので、その報告をさせていただきたいと思います。その第2次集約として署名の数を数えました。この5月には、第1次として約8万の署名を国会に提出しました。そのあと送られてきたものも含めて再度集約しましたところ5万3071名の追加分がありました。合計で13万を越える署名が集まったわけです。この数字が多いのか少ないのかということなのですが、私としてはあまりに少ないと考えております。というのは、インドネシアの方で100万人署名という取り組みが行われている中で、日本の1億1000万人の中での13万というのは非常に少ないし、まだまだこの問題に関する認知度が低いことを痛感しました。今回の署名も、街頭に立って、一人一人の意志を確認してとったというかたちではなくて、労組を頼りにしてとったようなところもあります。皆さんご存知のように、署名が回ってきても内容をよく吟味して署名なさる方ばかりではありませんので、こういう署名の数というのはもう少しシビアに考えなくてはならないと思います。もう一つ、インドネシアの非常に弾圧が厳しい中で皆さんが活動しておられるので、日本の側としても何とかしたいと考えているのですが、運動の側がなかなか非力で、今回の13万の署名をどの紹介議員を通して提出したらいいのか、良心的な議員がどんどんいなくなってしまう状況になってきています。このような中で、やはり私たちはインドネシアへの原発輸出のみならず、日本の民主主義そのものについてもう少し考えなければならない。インドネシアよりはマシだというふうに考えないで、市民運動の側でどうしていくのかということについてももう少し真剣に考えなければならないと思います。

 

会場:

先ほどのジュリアさんのお話の中で、住民の人たちに圧力がかけられていて村にいづらくなるような状況があるということでしたが、活動家の人たちはどういう状況にあるのでしょうか。

 

ジュリア:

まず、インドネシアの反原発運動の中心はジャワ島で、ジャワ島の中でもジャカルタ周辺と中部ジャワに分けられます。ジャカルタの運動はロビー活動など政治レベルで活動していくときに力を発揮しますし、中部ジャワの方は住民に対する働きかけを中心に行っています。セミナー、トレーニング、集会などを行っていますが、目立った行動を取るとやはり逮捕される活動家が出てきます。しかし活動家は、地下で活動するというようなことではなくて、拘留されて数時間の取り調べを受けて、そして釈放されるという一連のことをいつものこととして受け止めていると思います。先ほど話した現地住民のような状況になることはありません。ただやはり、予定地へ入ることはもう難しいので、活動家が入って行けるのは予定地そのものではなく、やはり周辺の小都市などに限られます。そのため、ジョクジャカルタで勉強しているジュパラ地方出身の大学生を組織してグループを作り、彼らに原発の問題を伝え、里帰りをした際にそれを家族に伝えていってもらうという活動も行っています。

 

会場:

私たちがインドネシアの方を日本に招いた場合、その方の名前の公表ということに神経を使わなければならないのですけれども、先ほどの話では、もう活動家の方々は名前を隠すまでもなく運動をやっていると聞きました。実際現地の人を呼ぶということは現在可能なのでしょうか。

 

ジュリア:

中部ジャワの運動体の中には、具体的に現地の住民たちとつながりを持った人たちがいますので、彼らを通じて話を通すことは可能です。ただ、帰ってから何があるかはまったくわかりませんし、そのように現地の人を今日本に呼ぶことにどういう意義があるのかについても考えなければならないでしょう。

 

会場:

活動家に対する弾圧もやはり厳しいと思うのですが、その弾圧の状況とはどういうものなのか、そしてインドネシアに戻ったらジュリアさんは大丈夫なのかということがさっきから気になっているのですけれども。

 

ジュリア:

インドネシアに帰ってから私の身に何が起こるかについては、まだ帰国してないのでわかりません(笑)。運動に対する弾圧ということでいえば、弾圧は現地に近づけば近づくほど強くなるということです。私はジャカルタ近郊で活動していて、予定地からはとても離れていますので、現地の近くで運動している活動家と比べれば、その度合いはさほどでもないと思います。

 

会場:

以前インドネシアで、地熱発電所を建設するために住民を強制的に立ち退きさせて、自警団と称する輩が反対する住民に対して虐殺行為を行ったり、反対運動にかかわった弁護士が殺されるというような出来事があったと聞いています。事件後、インドネシアからその地方の長老の方も弁護士の方も日本に来られました。そのことについてご存知であれば伺いたいのが1点、そして同様の出来事が反原発の運動においても起きていないのだろうかということが2点目の質問です。

 

ジュリア:

現在インドネシアでは「開発」の名の下にさまざまなプロジェクトが行われています。地熱発電所に限らず、ダムや新規住宅地造成など政府の取り決めたプロジェクトのもとで立ち退きは非常に頻繁に行われています。非人間的な形での立ち退きはまったく珍しいことではありません。また、その地熱発電所の計画はたぶんスラウェシのものではないかと思いますが、詳しいことは私はよく知りません。また、反原発を闘う弁護士の中では、まだ弾圧によって亡くなった人というのは出ていません。

 

会場:

もう一つ報告したいことがあります。2年前にインドネシアから人を招いて集会をしようとしたことがありました。その時はノーニュークス・アジアフォーラムの名前も出さず、その人の名前も公開しないで話を進めていたのですが、外務省など政府関係筋の組織的な嫌がらせと申しましょうか、その人は日本政府からビザの発行を受けることができず、来日することができませんでした。インドネシアの皆さんがまさに命がけで闘っておられることを私たちはしっかりと理解しなければなりません。

 

司会:

今回も私たちは受け入れた側の責任として、危険を冒して来てくださった彼女の安全について十分に注意を払っていかなければならないと思います。

 

クレア:

インドネシアの報告を非常に興味深く聞かせてもらいました。現在アメリカの反原発活動家の間では、ほとんどの人はインドネシアでの原発は実現しないだろうというふうに考えています。アメリカの原子力産業はすでに原発の輸出ということに目を向けています。そしてそのターゲットとされているのが、台湾と中国です。中国に関しては、ジェネラル・エレクトリック(以下GE)などアメリカの原子力産業が代表団を送り込み、香港のちょうど対岸にあります大亜湾というところに新しい4基の原発を建設するという計画を実現しようとしていることが新聞で報道されました。アメリカの場合は、中国に対する核輸出を禁止する法律があるにもかかわらず、なんとかその法の網の目をくぐりぬけて輸出を行おうという動きがあります。このことに関連してGEの関係者が新聞で明言していたことは、現在原発建設の最大かつ最重要な市場は中国であるということです。そして原子力産業にとってこれからの10年間は非常に重要になり、その鍵となる市場が中国市場だということです。

ある意味で喜ばしいことだといえるのは、1973年以来アメリカでは原発の新規立地がまったく行われていないということです。そのように、アメリカの原子力産業は国内ではまったく需要がなくなって息絶えかけているので、彼らは輸出によって生き延びようとしているのです。

それからあと二つの事柄があるのですが、当初アメリカの原子力産業はインドネシアに26基の原発を建設しようという計画を持っていました。しかし今では12基というふうに計画されている原子炉の数が減ってきています。インドネシアは融資を欲しているだけで、実は原発を建設することを本心から考えてはいないのではないかという見方をする人も出てきています。

そしてもう一つは、有害物質の被害に関して共通の課題を持った人々の連合体の動きです。この連合の中でも特に、癌にかかっている女性たちのグループが、原発を海外に輸出しようとしている企業の前で抗議行動を行ったりしてます。原発輸出をもくろんでいる企業の本社の前で、その企業が他の国で何をしようとしているのかということをマスコミに伝えたり、一般の人々に情報を提供する活動をしているということです。来週の木曜日にも、ベクテル社の本社の前で、この企業が中国などアジアの国々に原発を輸出しようとしているということを広く人々に伝えるための行動が予定されています。ウエスチングハウス(以下WH)とGEはサンフランシスコのベイエリアから本社を移してしまったので、この2社の本社に対する行動はこれまでのようにはできなくなってしまうのですが。

今回日本に来ることが決まって、アジアの原発開発に関するさまざまな文献を読みました。アメリカの人々の中には、自国の企業が原発をアジアの国々に輸出しようとしているということを知らない人がまだ非常に多い。ですから、今回私が日本に来て、そしてここで得た情報をアメリカに持ち帰って皆に知らせることができることを非常に有益なことだと考えています。インドネシアの活動家の人たちの身の安全の問題もありますので、アメリカの活動家をインドネシアに送ることがいいことなのかどうかまだ確信はありませんけれども、そういった活動もしていけたらと思います。そして日本にも、アメリカの活動家が訪れて、六ヶ所村、美浜などの地域の状況を理解してアメリカでさらに広めていくということも必要だと思います。

 

司会:

ありがとうございました。私がこの一月にフランスを訪れたときにも、核のことを非常によく理解して反対運動をしている人でも、インドネシアへの原発建設計画の話をすると「インドネシアが原発なんか建てるはずがないだろう」というのです。私はそれに対して「あなたはそう思うかもしれないけれど、それはあなたの考え方でしかないのであって、インドネシアにおける原発をめぐる状況というのは非常に厳しいのだ、アジアにおける原発の状況というのは本当に厳しいのだ」という話をしたことがありました。

 

ジュリア:

私の感触から言いますと、政府は原発を建設する意志を確かに持っていると思います。つい最近のことですが、スハルト大統領の息子のバンバンがWHインドネシア社を設立しましたし、今年の1月には、インドネシア初の原子力法案が国会に上程されました。ニュージェック社によるフィージビリティ・スタディが終了したこともありますし、そういったことを考え合わせたとき、政府としては確実に建設実現に向けた方向へ進んでいると言えると思います。インドネシアの政治状況というのは、今日政府がありえないといったことでも、次の日になってみたらまったく反対のことが起こってしまうようなところがあります。どんなに今日は確実に思えることでも、先のことが予測不可能なのです。

 

クレア:

インドネシアでの原発建設を許さないために、外国から行える有効な行動にはどういったものがあるでしょうか。

 

ジュリア:

インドネシアにはまだ、自力で原発を開発するだけの技術がありませんので、インドネシアに対するそういった技術支援を行わせないということが重要だと思います。

 

会場:

技術の問題も重要ですが、最も重要なのはお金の問題だと思います。

 

クレア:

フィリピンで起こったのと同じ事がインドネシアにおいても起ころうとしていると思います。フィリピンは原発建設に起因する利子の問題に苦しんでおり、毎日30万ドルを払い続けなければならなくなっています。一度も操業されることのなかったバターン原発のために、それだけのお金を払っているのです。

インドネシアの原発は現在のところ、三菱とWHが共同で建設するだろうということですので、ここで日本とアメリカの活動家が手を取り合って行動することが非常に重要になると思います。たとえば、アメリカの活動家はWHの前で、日本の活動家は三菱の前で、それぞれ同じ日に抗議行動を行うといった行動です。

三菱という企業は、アメリカにおいても二つの問題で大きなボイコットに直面しています。一つは熱帯雨林の破壊、そしてもう一つはセクシャルハラスメントの問題です。三菱に対する抗議の動きはすでに大きなものとなっていますので、今回の原発輸出の問題に関しても、アメリカにおいて三菱に対する抗議行動は可能だと思います。

 

司会:

さまざまなアイデアが出始めてきています。たぶん、三菱という企業の罪状を挙げ始めたら、世界各地であっという間に百を越える悪事が明らかになるでしょう。広島においても、戦時中に三菱が朝鮮人労働者を強制連行してきて、まったく賃金も払わず働かせ、そしてそういった人々が広島で被爆したのです。また、帰国しようとした朝鮮の人々の乗った船が沈没して多数の人々が亡くなるなど、悲惨な事態を引き起こしながら何ら補償を行っていない。これが三菱の姿なのです。私たちが手を取り合ってどのように行動すればいいか、さらにアイデアを出し合っていきたいと思います。

 

会場:

関電などは、電力が足りないから原発を建てるのだというだけでなく、炭酸ガスを放出しないからいいのだというふうに、環境問題を前面に出した宣伝の仕方をしています。インドネシアでは、このような環境問題との関係では原発がどのように宣伝されているのでしょうか。また、甘蔗珠恵子さんという方の書かれた「まだまにあうのなら」という本があります。とてもやさしく、主婦の立場から原発の危険性を書いた冊子で、日本ではこれが88年に爆発的に広まりました。この冊子が翻訳されてインドネシアにも紹介されていると聞いていますが、どれくらい浸透しているのでしょうか。チェルノブイリ原発事故の影響がすでに広く明らかにされていますが、この事故の被害状況に関しては、インドネシアではどのくらい知られているのでしょうか。

 

ジュリア:

やはりインドネシア政府も、炭酸ガスを放出しないから原発は環境負荷が低いのだというようなことを言っています。その点は同じです。二つ目の質問ですが、確かにその冊子は非常に平易なインドネシア語で書かれています。しかし予定地付近の人々はジャワ語を母語とする人々です。たとえジャワ語で書かれたものであっても、彼らの一般的な教育の程度などから言っても、読むということ事態が非常に大変な作業です。言語や教育の問題から、予定地付近の人々に広く読まれたとは言い切れないという感じがします。しかし、原発問題に興味を持つ学生や都市の人々には、かなり広まっていたと思います。チェルノブイリの被害に関しては、インドネシアの新聞でもかなり多く取り上げられました。しかし新聞を読む層というのが非常に限られた人たち、都市の知識階級や学生などに限られていたことから、報道自体はなされたのですが、それが広く知られるようになったとは思いません。

 

会場:

さきほど、ラジオで中傷されるという軍による嫌がらせを受けた人の話が出ましたが、チェルノブイリ事故などのニュースはラジオでは流されなかったのでしょうか。

 

ジュリア:

ラジオやテレビですと、いわゆる反政府的なニュースはほとんど流れません。新聞でも、コンパスという全国紙は最も政府に批判的な意見を書くところなのですが、ラジオやテレビではそういうことはありません。一度テレビで原発の問題を扱ったことがありましたが、それは原発の「良さ」を宣伝するためのもの、BATANの職員などが出てきて安全面で何の危険性もないといったことを話すだけのものでした。

 

会場:

インドネシアのマスコミの状況が良く分からないんですけれども、どの程度反政府的なことを主張できるのでしょうか。日本であれば、原発に反対する折り込み広告を新聞に入れるというようなことがあると思いますけれども、そのようなことは可能な状況なのでしょうか?

 

ジュリア:

インドネシアでは新聞や雑誌などの出版物に関する許認可権を政府が握っています。そして政府はその出版許可を取り消すぞという形でマスコミを脅したり、実際に許可を取り消して強権的に廃刊に追い込んでしまうというようなことが起こっています。言論に関する自由というのは非常に制限されています。

 

司会:

聞いた話ですけれども、反政府的なことを書くと、書いた記者が記者としての資格自体を奪われてしまうこともあるのですね?決して日本が民主的だとは思いませんけれども、インドネシアの場合は今も極端に、目にみえる形でそういった弾圧が行われていると思います。

では、少し広島のことをお話させていただきたいと思います。私は昨日の晩からここに泊まっています。今朝ここで掃除をしておられた年配の女性の方に、アメリカのヒバクシャの方なんですといってドロシーさんを紹介したら、「私も被爆者なのよ」というふうにおっしゃったんです。広島で、当時駅の近くで働いており、爆心地から2キロくらいのところで被爆されたということでした。その方はとても元気で働いておられるようすだったんです。でもよく話を聞いてみると、次のような経験を持っておられました。「働きたくて働きたくてしょうがないのに、どうしても続かない、2ヶ月位すると体が続かなくて止める。人には怠けているとしか見てもらえなかった」というのです。ここ、神戸に来ても私たちはそのような人と出会いました。私たちが最初に戻って考えなければならないのは、放射能が人体に及ぼす影響というのが、傍目にはわからなくても50年たった今もなお続いているということです。

広島では、原子爆弾については皆一生懸命反対するんです、中国やフランスの核実験に対しても、本当にたくさんの人々、子供たちが抗議行動を行いました。学校のPTAや半数以上の自治体が反対声明を出したのです。しかし原発のことになると、とたんにそういう声が小さくなってしまうのです。私は実を言うと、これは政策的に行われていることだと思っています。

今回神戸で原子力推進の会議が行われると聞いて、神戸の人たちが大変怒りを感じてこのような企画を立ててくれました。私はちょうど同じようなことを3年ほど前に広島で経験しました。93年に原子力産業会議が広島の平和公園で年次大会を行ったわけです。平和公園でですよ。その時に、私たちは3日間通してそこに座り込んで会場の前で抗議をしたのですけれども、そこに来てくれた広島の人々というのは、ほんの一握りだったんです。そのことについては非常に悲しい思いをしましたけれども、やはり私たちは少ない人数であっても、抗議すべきだと思いました。

そこに有名な詩人の栗原貞子さんが来られました。栗原さんというのは、「生ましめんかな」という有名な詩を書いた方です。原爆が投下されたすぐあとに、ろうそくの暗がりの中で、自らも傷を負った産婆さんが、産気付いた人を助けてなんとか赤ちゃんを産ませた、という感動的な詩です。その時栗原さんは本当に怒って、「あなたたち、ここは何万人という人が焼かれて殺されたところなんです、今すぐ会議を止めて帰ってください」と言ってずっと一緒に抗議してくださったんです。直前に亡くなられた森滝市郎さんの写真を胸にかけて。

実はヒロシマというのは、そういった会議をここのところ毎年のように繰り返しています。去年はIPPNWという国際的な反核の医師会議が、電力会社を借りて被爆50年の大会を行いました。また、パグウォッシュ会議がやはり去年広島で大会を開いたのですけれども、この会議は日本の原子力産業会議と電事連から合計2000万円の金を受け取ったのです。そのたびに抗議に行くので私たちは大変忙しいですが。

今年は、8月6日を前にした7月に、国連軍縮会議が行われまして、どう間違ったのか私も呼ばれたんです。市民、県民との対話というのが初めての企画としてもたれて、そこにプルトニウムアクションからも誰か来て意見を言わないかというお話でした。私はその時、プルトニウムと核拡散という問題に絞って、原発の危険性の問題ではなくて、核拡散問題についての質問を行いました。ところがそのときに一緒にこちらから市民代表として並んでいた庄野直美という大学の先生が、「もんじゅの事故はたいしたことなかったんだ」というふうに言ったんです。大勢の国連関係者、被爆者、平和団体が来ている場所で、「もんじゅの事故はたいしたことなかった。核暴走事故につながるようなものではなかった」と。さらに「チェルノブイリの事故は、あれは共産主義の国だったから起こったんだ。日本では労働者が自主的に原発を管理しているからあのような事故は起こり得ません」こういうことをはっきりと発言されたんです。その場では時間が制限されていたので、こちらから質問を返すことができませんでした。庄野直美氏というのは、原子力産業会議を広島に招くときに中心となった人物です。

そして今回の神戸の会議の主催者の中に森一久という日本原子力産業会議の専務理事がいます。森一久氏自身は被爆者で、家族も原爆で亡くしています。先ほどの庄野氏と森氏は、こういった会議があるときには仲良く並んでいる、そういう間柄なのです。

広島の平和運動というものが、原発の問題を排除する形で意識的、政治的にコントロールされてきたと思います。私たちのプルトニウム・アクションは本当に小さなグループですけれども、そういった動きに対して、核の平和利用などないのだという声をあげ続けていかなければならないと思っています。さきほどの庄野氏の発言についても、ファックスで知らせたらすぐに全国10数箇所から抗議文が届きました。市を通して彼に送ったのですが、返事はありません。

このような状況がありますけれども、この会館で出会ったその女性の方のように、その人自身が生き証人であるわけです。被爆体験に関しても、放射能が人間に何をもたらすかということを、原爆と原発というものを一つにとらえたかたちで研究していかなければと思います。チェルノブイリの被害、広島の被害というものを、インドネシアの人たちにもわかりやすい形で伝えていきたいと思います。

 

会場:

反戦、反核運動をやってこられた方の中で、反原発運動をやる方が少ないと思います。原子力政策は今突然始まったものではなくて、30年前に電源三法が制定されたときから、日本の政界、財界はその路線を進んできたわけです。

 

司会:

広島は、その宣伝に使われてきたわけです。

 

会場:

先ほどお話があったように、被爆者の中からそのような発言をする人が出てくるなど、信じられないです。まさしく政治的な意図に基づくものだと思います。

 

司会:

IPPNWの会議の会場では、青森の核燃のパンフレットを皆に配ったんですよ。青森県の医師会長が出てきて、最初のスピーカーとしてしゃべったのは、核燃料サイクルがいかに安全かということでした。IPPNWについては、私はそれ自体を悪いと思っているわけではないので少し付け加えますと、核戦争防止国際医師会議というのですが、非常に立派なことをされていると思います。しかし日本の支部だけが、日本のプルトニウム政策について態度を保留しているんです。IPPNW自体は日本のプルトニウム政策やプルトニウム利用について強く反対しています。それなのに日本支部だけが態度を保留している。

 

クレア:

10月7日付でフランスの経済新聞に掲載されたレポートがあります。フランス政府の国内予算を扱う機関が、フランスのもんじゅにあたるスーパー・フェニックスという高速増殖炉が、非常に非経済的であるという分析を行っています。この炉を建設するのに数十億ドルの巨費が投じられたにもかかわらず、100万ドルのエネルギーしか生産できなかった、つまりあまりにもロスが大きいということです。フランスの政府の経済機関が、スーパー・フェニックスという高速増殖炉が巨大な経済スキャンダルである、ものすごく大きな損失であるという発表を行ったのです。フランスの政府機関が、日本の政府に対してもこの事を伝えるべきだと思います。

 

ジュリア:

インドネシア政府は、フランスにも原発があるが何の問題もなく運転されているというふうに喧伝しています。そういった記事は、政府の報道が嘘だということを証明するよい証拠材料となると思うので、非常に興味があります。

 

クレア:

二つの点について述べたいと思います。まず経済的な問題です。1976年に原発に関する住民投票が行われましたが、賛成票が少なく建設はできませんでした。その後議会で法律が制定され、今後、核廃棄物処理方法が見つかるまではカリフォルニア州に一切原発を建設してはならないということが決められました。それ以来この20年間、核廃棄物の処理方法が確立されていませんので、カリフォルニア州には原発は1基も建てられていません。二つ目には、法律によって、エネルギー産業の規制を取り払おうということになりましたが、これには悪い側面もあります。石炭、石油など再生のきかない化石燃料が安いエネルギーとして注目されてしまったことです。ただよかったことは、現在カリフォルニア州には3基の原発がありますが、規制が取り払われると、原発産業は競争力を失ってなくなってしまうだろうということです。資本主義社会では、原発は競争力がないので生き残ることは不可能だと思います。

 

司会:

最初に出された国会議員の問題についてはまだ議論ができていませんし、全世界的に同時に抗議行動を行うという件についても、まだまだ話を煮詰めていかなければならないと思います。私たちは、フランスからは本当にたくさん学ぶべきことがあると思うのです。なにしろ電力の70%を原子力に依存している国です。スーパー・フェニックスの話だけではなくて、再処理の問題などもあると思うのですが、残念ながら時間が迫ってきました。

これで終わりたいと思います。

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