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第三分科会
■自然エネルギーの将来

福本:
 この会の司会をさせていただきます、大阪大学の福本です。
 あまり肩肘が張ったような話会はやめまして、ある意味ではみんなでエネルギーをどうしようかという、皆さんのご意見を聞きたい。あまり講演者が話すだけの会ではなくて、できますれば、お互いに意見交換できるような場にしたいと思っています。

 それでは最初に桜井さんの方から、

 


■自然エネルギーの可能性

桜井薫

自然エネルギーの具体例としての共同住宅

僕がよく行くインドネシアでは年間十数%の勢いでエネルギー需要が伸びています。そういう風に伸びていったら世界のエネルギーはどうなるのか、その前に廃棄物の問題はどうなるんだという話がよく出てきます。それで僕の話のポイントは、いろんな発展ということに関して異議を唱える方もいらっしゃいますけれど、世界中に冷蔵庫や洗濯機や電話くらいあってもいいんじゃないかと。そうなったら世界のエネルギーはどうなるんだ。今の、エネルギーの問題だけでなく、廃棄物の問題、それからそこに住んでいる人達の生活環境共同体がどういう風に変わってゆくのか、そのような問題が今の世界的な一番大きな問題ではないかと考えています。具体的には僕は今インドネシアのことをやっていますので、そのいろんな資料を交えながら話を進めたいと思います。

 その前に自然エネルギーというと、今具体的にはどんなものが現実化されているかといえば、一昨年東京の小金井というところに全部で43所帯の共同住宅ができたのですが、このビルの自然エネルギー環境の一部を僕らがやらせていただきました。

 屋上に緑化地帯、屋上を緑で覆っています。ここで畑を耕したりしています。ついこの間も行って来たんですけれど25センチくらいの大根なんかができていました。これは大根をつくるためにあるんですけれど、それと同時に屋上の熱を取って屋上階に住んでいる人達のクーラーの需要を減らそうという意図でこれが造られています。そこには屋上ですから水がありません。水を上げるのに雨水のタンクが屋上にあります。降った雨水は地下に貯めています。それでその雨水をタンクに上げるのが太陽電池のポンプです。太陽が照ったら雨水を汲み上げる、その雨水が自然に屋上の畑に廻るように仕組まれています。ですから雨が降ったら嬉しいし、太陽が出たら動くという、そういうような非常に簡単なシステムです。

 それから中庭には川がありまして、中庭の温度差のバランスを取るような形でできています。これも雨水を汲み上げて廻しています。風車がここにあるんですが、この風車が雨水を汲み上げています。

 その他、ここには地下1m位の冷たい空気を1階の部屋に入れたりと、そういうような試みもできています。今ではここの所の川の回りが実におちつき、きれいにできあがっています。来年あたりは源氏蛍が出て来るんじゃないかと言われてるくらいきれいな水です。子供達が遊んでいますね、金魚が泳いでいますし、ザリガニやなんかと戯れています。そういう水辺で住んでいる人達が集まって会話を交わすということ、それが建物の住民にとっても新しいコミュニティーをつくる上で非常に有効な手段になっています。ここに丸いガラスの管みたいなものがありますが、これは温水器がついていまして、各戸に温水が給湯されるようになっています。またここには昔ながらの手動のポンプがありまして、いざというときには使えるようになっています。これが先ほど言いました用水のポンプです。太陽電池を動力源にしています。

それから住宅ですけれど、この住宅に関してはもうどこのメーカーも必死になってやっていましてかなりの勢いで一般化されています。

 たとえば、車いすの後ろに太陽電池を付けているケースもあります。これを利用されている方は非常に重度の身障者の方で24時間介護の必要な方なんですが、そんな車いすのような使い方も自然エネルギーにはあります。とにかく自然エネルギーというのは日常生活の中にこれからどんどん入り込んでいくだろうし、いかせたいと思っています。

 

原子力から天然ガスへ

 今日本の状況はそうなんですけれど、世界的には大きく言ってこういう傾向があると思います。大きな原子力発電を見切っている国がどんどんでています。あれはもうダメだよというようなことは世界の半分以上の国がはっきり解っていて、いや80%位の国がもう解ってるのではないかな。そして次の技術として天然ガスに移行しています。2010年頃には、この再生可能エネルギーを非常に大きな割合で使ってゆこうというような計画で進んでいます。もう次の技術として自然エネルギーをどんどんやらなければ日本は取り残されるということで、日本だけではなくアメリカも国を挙げて産業界で自然エネルギーの研究を始めています。はっきり言って原発はもう実は通産省の内部でも半分の人は見切っているような状況だと言っていいと思います。それからエネルギーの利用効率化を図るという、それからデナンド・サイド・マネージメント(DSM)と言いまして、作るよりも消費を落とそうという傾向の中でいろんな技術の開発が進んでいます。これが世界の大きな流れです。これは誰も押し止めることはできないと思います。1993年の日本経済新聞の記事ですが日立が原子力発電は金にならないから火力の方にシフトするよというニュースです。

アメリカのGE、ジェネラル・エレクトリック社が東京電力の横浜の天然ガスのプラントを落札したという記事です。ここでちょっと見ていただきたいのは280万kwのプラントをいくらで落札したかといえば、1300億円。つまり今原発を作るのに幾らかかかるかといいますと、100万kw級で3000億、あるいは裏金を入れると5000億とかって言われています。ところがGEは100万kwの3倍の大きさのやつを1/3の値段で落札してしまった。だからいかに経済的にいいかというのがはっきり分かっているわけですね。

 

エネルギー源に基づいた地場産業

 では、自然エネルギーに関して特色を若干述べて話を進めます。自然エネルギーの特色としては、エネルギーの密度が低いということがあげられます。都市をまかなうような形でいっぺんに沢山は造れないよということです。それに対して化石燃料は非常に集中的に供給することができるわけです。自然エネルギー設備というのはエネルギー源のあるところに限定されます。風車ならば風のあるところに、水車ならば水が流れているところにしかできません。それに対して化石燃料はどこでもできるという非常に大きな利点を持っています。自然エネルギーの施設は小規模でも可能です。僕は小規模の方がいいと思っているんですけれど、対して化石燃料の場合大規模でないとメリットが出てこない。自然エネルギーは手軽に扱えるものが多いです。非常に簡単です。太陽電池にしても風車にしても非常に簡単です。ところがそれに対して化石は集中して専門家が見なければ解らないというシステムです。で、自然エネルギーはその場で使えます。それに対して化石燃料は大消費地を前提とします。沢山消費する場所を前提に一気につくって効率を上げるという。それに対して自然エネルギーは小さくしかつくれないけれど、エネルギー源があればどこでもつくれるというそういう特色を持っています。今言った説明をトータルに考えると今日本のシステムというのは実にこの化石燃料に基づいてできあがったシステムです。すべて大きな都市があってそこに大量のエネルギーが供給され、それによってコストダウンを図っていってそれと同時に集中して管理してゆくシステムが日本の中にできあがっています。それを化石燃料と対応する形で文化ができあがったと僕は言っています。もし自然エネルギーが一般化していったら自然エネルギーに対応したような新しい社会ができあがってゆくわけです。それが僕の今考えていることです。

 3年くらい前ですが通産省の人と話をしたことがあるんですが、風車の話をしたときに通産省の人は風車というのは非常にいいもんだと言いました。だけど風が吹くところは都会じゃないだよねと言うんですね。人が住んでないんだよねって言いました。ああやっぱり彼らはそういう感覚なのかと思ったんです。つまり、エネルギー源があるところでエネルギー源に基づいた地場の産業を造ってゆくことは考えないんですね。そのエネルギーをどこか人が集まっている所に運んでくるという発想しかないんです。自然エネルギーに基づいた次の社会と僕が言うときには、かならずそこにそれに見合ったスケールの地場産業を創ってゆくという方向性を持っているという、それに見合った産業があり、それに見合ったコミュニティー、人間関係ができあがってゆくということです。

 

インドネシアの電力事情-多い自家発電

 次にインドネシアの具体的な話をします。1993年のインドネシアのエネルギーの状況を次ページに示します。表のPLNというのはインドネシアの電力公社が発電した電力です。自家発電というのはその電力公社に乗らない自家発電の量です。インドネシアは非常に大きな国でいろんな島が何千とあり、電力網が作れないので、いきおい自家発電の部分が多くなってきます。気がついていただきたいのは、自家発電が4割、電力会社が6割と、自家発電の割合が非常に多いということです。端的に現れるのが送電ロスが12.7%、これは日本の3倍のロスなんです。電気の普及率は44%。それ以外では30%位です。 それから電力需要が年々10%増えています。PLNが造っているのは原発で言いますと15基分位の容量です。日本の1/10位のエネルギーです。それでもこの中の8割がジャワ島に集中しています。つまり電力設備を造るというのは明らかにジャカルタに供給するためです。これがインドネシアの方針です。ジャカルタの産業構成を見ますと、スハルト大統領のファミリーが握っています。もう一つは多国籍企業が握っています。

 

設備容量

内訳

PLN

13178MW

水力17%

石炭33%

ガス32%

ディーゼル17%

地熱2%

自家発電

11155MW

ディーゼル60%

発電総量

6.3×107MW h/

家庭用21%

産業用70%

 

送電端ロス

12.7%

 

電気普及率

ジャワ島44.1%

その他30.2%

 

 ジャカルタにコンクリートで固められた、非常に日本のに似たビルがどんどん建っています。これを僕らは文明だと思っているんです。だけどちょっとよく考えてみると赤道直下の国でコンクリートのビルを造ったらどんなことになるか。どんどんクーラーで冷やさなければ熱は逃げていかなくて、建物は焦熱地獄になってゆくんです。で、その中にコンピュータを入れようとするとさらに大きなエネルギーが必要になってきます。そうではなく、例えば椰子の葉でいいじゃないですか、そこでコンピューターを使ってたって全然問題ないはずです。あれだけ大きな国ですから。いかにもコンクリートで固めてゆくことが文明であるという幻想、それが文化的なんだということからまず僕ら自身が解き放たれなければいけないと思います。その土地土地にあった生き方、産業の作り方が必ずあるはずなんです。日本は土地が少なくてしかたなく上に伸びていったわけで、インドネシアのようなところではもっと利口な建物の作り方、文明の作り方があると思うんです。それをまとめるとこういうことです。

 今インドネシアでは都市部の電力をまかなおうとして巨大な原子力発電所や水力発電所が計画され、そこでいろんな住民が追い出されている。インドネシアは今石油輸出国なんですが、この輸出国である石油をできるだけ少なく使おうということで原発が計画されました。それから石炭、火力が計画されています。水力発電所が造られています。その石油の行き先は日本です。この間インドネシアに行ったときにインドネシアの通産省にあたる人と話をしたときに、インドネシアは天然ガスの宝庫でもあり、そのガスを使ってコージェネレーションを作る、コージェネレーションというのは熱と電気をつくるものですれど、熱をつくったらそれでクーラーが造れるから、原発に投資しようとするお金をそちらに投資したらもっと合理的ですよという話をしました。そしたらお役人の方が笑って「LNGは日本が買っているからインドネシアにはない」と、こう言われました。僕はもう何も言えませんでした。

例えば石油の消費を減らす為の政策として、こういうことがまず最初に考えなければならないと思います。つまりジャカルタでは交通ラッシュです。どこへ行っても車があります。スハルトの三男坊の企業が今度トミーという国民車というのを出しまして、それを売るために公共交通の整備があまり進んでいません。地下鉄の計画もストップしています。石油の1/3が今交通に使われていますので、公共交通網を充実すればそれだけで石油の消費をどんどん減らすことができます。それから使え使えと言うことで使い捨て容器が非常に目立っています。道ばたでヤクルトなどの容器が捨ててあります。こういうようなものも今なら彼らはまだプラスティック容器を使わずに生活できる文明をしっかり持っていますので、今ならこれを制御することができるんです。

 

インドネシアならではの自然エネルギー

 それから自家発電が多いので、使うところで使う分、例えば多国籍企業がビルを建てようとしたら、自分の電気は自分で賄ってくれと、このビルを造るためにわざわざインドネシアの人が税金を払って原発は建てないよ、おたくで賄ってくれという法律をインドネシアに作ればいいんです。そうすればそのビルのエネルギーをまかなうのにコージェネレーションや燃料電池が入ってきます。

それからあそこは非常に暖かい国ですから、バイオマスという生物資源の活用があります。地方では太陽電池で日本の1.4倍のエネルギーが取り出せます。日本で100wの太陽電池が向こうでは140wの力を持っています。これは非常にいいエネルギー源です。それから地熱も今研究されています。それからインドネシアではココナッツハスクといってココナッツを割った後の殻があるんですけれど、あれはいい炭素をもっていますので、これを使って氷やなんかを作ります。で氷をどうするかというと、漁村やなんかで、強い日射ですので魚を取るとすぐ腐ってきます。そして貧しい生活を強いられています。だからそういうココナッツの殻を使って、おがくずでもいいんですけど、氷を作る。地場産業を創ってゆく。そういうような形の方向へインドネシアの方針を変えてゆけば、巨大な資本が投下されようとしている直前の今なら、地方分散の文化というのが創れる可能性を持っています。

 僕が今ソーラーネットに関わっているのは、まだこれからいろんな社会資本を投資する方向さえ間違わなければ次の新しい文明ができるようなそういう国のところへ、誤りじゃなかったいろんな技術なんかを送ってゆきたいなというのが最大の理由です。エネルギーの形態は社会を変える。これが僕の結論です。これは2000年2010年にこうなったらいいなあという1つの図です。ここに風車やなんかがあります。ちょっと遠い所に都会がありますが、都会にまだしがみついている人達がいます。ここには牛さんがいます。

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牛が1頭いると牛のうんこがどの位のガスを出すと思いますか?牛1頭で家1軒の煮炊きがまかなえるだけのガスが出ます。1つの村というのは大体今日本で3000頭とか4000頭の牛を飼っています。それで糞尿公害とかいってその処分に困って川に捨てちゃうんですね。そのガスをメタン発酵漕というものを使いますと、そこから1つの村で2000軒3000軒の煮炊きをまかなえるだけのエネルギーができます。これは我々のグループで実際に動いています。楠本さんが主になっているグループです。それだけのエネルギーがあれば例えば食肉を加工する工場ができます。で、食肉加工や牛乳なんかを地場産業として育ててゆけば今都会に依存して生活せざるをえない所に自分達のエネルギーを使って自分達の産業を起こすことができる。つまり自分達の手に自分達の生活・エネルギーを取り戻そうという形が具体的にこういう形の中に入っていきます。

 ここに温水器がありますが、この下にメタン発酵槽があり、発酵槽の加温に使っていて発酵を促進します。このメタン発酵槽は非常にいい液体の肥料になります。有機農業をやっている人で腰の悪い人は切り返しが大変なのが普通なのですが、これを使えばポンプでくみ出すことができます。で有機農業が楽にできる。これはメタンガスを頭に載せた車です。中国では走っています。ここに煙が出ています。この煙の下にはいわゆる木質ガスというのを使って電気ができます。そうすると今山が死にかけていますけれど、山が死にかけた最大の理由は、僕はそこの労働が非常にきつくてあまり生産性が上がらないことだと思っています。もしそこで電気ができたら切り出すにしろ非常に楽にできます。自然エネルギーと一次産業を結ぶ技術ですね。

 

NGOの活躍

最後になりましたけれどインドネシアのNGOの活躍について紹介しておきます。たとえば、あるNGOは、小型の水力発電所を自分達の手であちこちに設置しています。バンドン工科大学の学生さんを中心にできあがっているNGOです。また、メタン発酵槽を設置しているグループもあります。LPTPといいましてこれも学生さん達を中心としたNGOが動いています。インドネシアで500基動いているという話です。これは非常に衛生的でした。びっくりしました。ほとんど全くにおいがない場所でした。これはそのメタンガスを使ったランタンです。さっき言いましたけれどメタンガスは液体の肥料がとれると。ここからその液体の肥料が流れてゆくんです。で、自動的に下の畑に行きます。畑には牛の飼料になる草が生えています。その草を食べた牛がうんこをします。で、ガスを取ってまたそれが肥料になって戻ってゆくという、くるくる廻ってゆくというシステムがもうインドネシアではNGOの力でできあがっているのです。僕がこの間行って非常に感動したのはこのNGOの人達の動きが実はしっかりと根付いている。僕らはいかにもその弾圧とかスハルト政権の力を新聞紙上で見ていますけれど、日常生活の中でそういった学生さん達を中心とした、今ここにもきていますけれど、そのNGOの動きが実にしっかり根付いているなっていうのが印象でした。で、コンピュータのネットワークがありまして、世界の情報が入る。僕はコンピュータが苦手なものですから感動してしまいました。これはオーストラリアの温水器ですけれど、こういうものも入っていました。ただ彼らは熱いお湯に入るという習慣がないものですからあまり使われていませんけれど。これはツーリスト用に使われています。

 最後の結論です。環境によい経済の発展の為だといって今原発を売りつけようとしている三菱系を含めた日本はなんて醜いんだろうというのが僕の、思いです。

 

福本:
 それでは2人目なんですけれどバイオマスキャラバンといいまして、要するに生物を資源とするエネルギー源。これを世界に広めようという大運動家であります、その内の1名であります楠本さんに、今までの自分の経験を中心にお話をしていただきたいと思います。

 

 


■バイオガスキャラバン

楠本弓

バイオガスのしくみ

楠本です、こんにちは。バイオガスキャラバンは日本国内を主に活動の場としてやっています。今日はバイオガスの技術がどんなものであるかということと、バイオガスを暮らしの中で使うということがどういうことかということ、日本国内でのキャラバンの活動と、あと日本国内にいる在日ハイチ人の人やあとフィリピンの活動に関わっている人達とのつながりでたまたま行った海外の活動をちょっとご紹介させていただきます。

 まずバイオガスについてなんですが、バイオガス技術というのは家畜の糞尿と生ゴミなどから、上質な肥料分としての液肥を得る、そしてそれらを使いこなす技術のことをいいます。この循環型の技術を活かすためには、まず無理なく有機物が投入できる環境にあること、労を惜しまないこと、発生したガスを日常的に使うことができる、これは案外今の日本では大変なことなんですけれど、あと残渣としての肥料を又有効に利用できるという、こういう循環できる要素をきちんと暮らしの中でキープしてゆくことができないと、結局理念や哲学でバイオガスにあこがれても思いは果たせずに終わってしまいます。不必要なエネルギー供給源から完全に自立ができる技術で、他の自然エネルギー技術とは一線を画していると言っていいと思います。これはバイオガスの設備です。この真ん中にあるのが発酵漕です。これが密閉加圧式といわれるタイプの発酵漕で、ここに投入された有機物がこの中で発酵するとドーム部にガスが溜まります。このガスが液肥を押し上げることによってまた大気圧で加圧されているという仕組みになっていますので、ガスがバルブをひねるとシューと強い勢いで圧力がかかって溢れ出て、発電動力とか色々な使い方で使えます。5、6人分の家族が一日悠々煮炊きするのに事欠かないだけのガスの量です。そのガスを得るためには大体牛だったら1頭分、豚だったら4頭分のうんこを必要とします。もし生ゴミだけを入れるんだったら20kg分です。ここから発生してくるガスはメタンガスが60〜70%近くまでです。メタンガス濃度が高ければ高いほど良質のガスだといえます。二酸化炭素が30%、カロリーについてはここに他のエネルギーとの比較があるんですけれど、地方都市ガス6Aと同じくらいのカロリーを使うとちょっとした工夫とか調整で大体問題なく使うことができます。

 メタンガスの性質については空気よりも軽く、爆発濃度の範囲が狭いので比較的安全なガスといえます。ガスが発生した後この中で発酵した有機物の残渣が液肥となってここに圧力で押されて上がってくると言いましたが、この液肥というのは、有機物の分解過程に於いてかなり後の方の、最後の第3段階での発酵なので、それまでの発酵過程を担ってきた多様な微生物種がこの中にいるので土壌改良効果の高い液肥となる。また熱を発しないので窒素、リン酸、カリの流亡も少ないので接種効果がすごく高いです。ビタミン類や種々の有機酸も多量に含まれているので植物とか動物の活性効果も高いと言われていますので家畜飼料として豚にやるとどんどん豚が大きくなるとか、植物に直接散布することで病害虫を防ぐという話もあります。

 私達のバイオガスキャラバンというのは1992年から活動を始めました。その前8年くらいは、ODAの手先というかダムかの大きい建設物を海外に売りこんでいるそういう悪い某建設会社に勤めていた桑原さんがたまたまそういった仕事の一環でネパールに行った時にバイオガスに出会い、一目惚れをしてしまってもうこれをやるしかないと、その後その会社をとっとと辞めて中国に行ってバイオガスの施設の作り方を勉強してきて、その作り方を日本で普及させ始めたのが1992年です。で、今年の8月までに国内で9カ所で11基作ってきました。その内で、うまく稼働しているところは5カ所です。だけどもその5カ所のお家では本当に元気に暮らしの中で活かされて使われていて、その人達と一緒に技術情報の共有、蓄積、それからそういった輪を広げようという話をいつもしているんです。確実な一歩一歩を踏んでいるという実感はあります。

 

ハイチでの活動の報告

 あと海外での活動についてなんですが、日本在住のハイチの人ででたまたま桑原さんの活動をテレビで見て、自分の国でもこういう技術を普及させたいという熱い思いを抱いて、バイオガスキャラバンの95年の5月に京都で作ったときに一緒にボランティアで建設に参加したドドーという随分頼もしい人物がいまして、彼はずっとその建設に参加した後、ようやく去年それが動き始めました。96年の4月から9月にかけてキャラバンもハイチを訪れてきた。そのハイチのプログラムについてご紹介します。桑原さんという方がハイチで普及プログラムにバイオガスを使ったんですけど、コンクリートタイプのものを建設しようとするとどうしてもコストが高くなり一般の人々の払える範囲を出てしまうので、どういう形で普及活動をしようかと思案を重ねたあげく、ベトナムで国連のFAOの機関がやっているプログラムで普及しているこのビニールで作る発酵漕というのをハイチではやったらどうかということになりました。これだとハイチ人の1ヶ月の給料で何とか作れるというくらいの値段だということで、ベトナムに出かけて材料一式とベトナムでの普及活動の様子を学んできて、ハイチでまたハイチの仲間と工夫とか改良を重ねてやっています。

 この形でハイチ人達の独自のペースで独自のやり方で開発したりデモプラントを引き続き設置しているんですが、このタイプでやっているようです。このプラントの仕組みですが、さっきの中国の加圧式と原理は同じなんですが、ただ密閉された容器に原料を投入してじっとメタン発酵するのを待つとガスが出てきます。あとハイチのプログラムの中で、やはりどうしても彼らは電気へのあこがれが強いので、実験をしたんですが、さっきのビニールバック、木の上になんかこう楽しげになっていて私達の発想では絶対こんな事あり得ないんですけれど、高いところに嬉しそうにバイオガスバックの実を成らしていました。ガスをエンジンに引いてきて発電の実験をしました。見事に電気がついて見物人の人々が寄ってきました。今日は持ってこなかったんですけど、この普及プログラムで使ったビニールで作るバイオガスプラントというのは、例えば沖縄では十分現実性のあるものだし、自分で私は私のバイオガスを作りたいと思っている人には参考になる資料じゃないかなと思って完全マニュアルを作ってみました。ハイチで使うのは空き缶で使うバーナーで、ただ鉄管パイプをエル字に上に向けて上げたところに空き缶のそこにポンポンと釘でいっぱい穴を開けたものを乗せるだけの簡単なバーナーで、みんな揚げ物を作ってくれたり、色々な料理にこれがあると便利でしょうがないという感じで嬉しそうに使ってくれていました。彼らが独自で作って使っていました。

 あと、今のような家庭用のバイオガスの世界の普及状況なんですが、これはキャラバンの活動とは全く関係ない参考までの話ですが、1998年現在は、中国で475万基。中国の四川はバイオガスのメッカでもあって、毛沢東が頑張って一番始めにここで広めた、今でも毎年数十万の単位で増え続けています。91年の数字でインドでは126万基。ネパールでは92年の数字で9000基。ネパールでの普及活動は国立銀行と国立の燃料公社とNGOの共同プログラム、いわゆる第3セクターのプログラムで97年までに2万基の目標があって、今でも数千基づづ毎年増えています。

 

 


■日本でのバイオマス実践例

福本敬夫

 今までの話だとああゆう生活は田舎でしかできないのではないかという発想を皆さんもってらっしゃる方が多いと思うんですけれど、しかし都会の中でも何かやろうと思えばできるんだということを、桜井さんは国立に住んでいるんですけども、ちょっと紹介したいと思います。

 ここにいますのが桜井さんです、一応国立のユル・ブリンナー。彼は6年前から太陽電池を始めまして自分の屋根の上に太陽電池を乗せました。1kwという設備なんですけれど、自分の家で使う電気の大体1/3をまかなっています。彼が太陽電池を付けてその効果というものがどんなものかというのは、消費電力が3割くらい、太陽電池をやる前に比べて自分で太陽電池をつけ始めることによって3割くらい電気の使用量を減らしたという事です。彼は色々自分の家の電気の使い方を考え、自分で配線を切り替えました。あとは冷蔵庫、彼の連れ合いはクッキーを焼いていましたので大型の冷蔵庫があったわけです。それの電気の消費量が激しかったので、冷凍庫と冷蔵庫の改良をやった。そういう風に自分の家のエネルギー調査をやってます。

 簡易型のバイオマスを裏庭に作ってメタンガスの発生装置を、コンロにつなげてるんですね。生ゴミをいれてまして、そこの生ゴミで発酵させています。当然自分の家の生ゴミだけでは足りませんので回りから集めているんです。生ゴミ援助というのをやっているんです。さらに雨水を溜めてトイレに使っているんです。これはある意味では自分で自然エネルギーを実践している。しかも都会でできることは何かという観点から、彼は都会で自分はこんな事までできるんだよということをやっています。

 

日本のエネルギー政策・方向性の提言

 これからのエネルギーのことを考えますと基本はもうこの3つしか僕はないと思っています。まず第1が、今のエネルギーの使い方というのは間違っている。やはりエネルギーを出来るだけ使わないようにやっていこうと、まずこれが大事だと思うんです。で、エネルギーを使わないようにしようというのは、今のエネルギーの省エネキャンペーンはこの需要者、使う側に対してだけですよね、つまり電気を消しましょうとか、車に乗るのをやめましょう、ノーマイカーデーじゃないですけどそういうのやりましょうとかいう風に需要者側の省エネの運動だけですよね。だけど本当に必要なのは、供給する側つまり電力会社自身が自分で積極的に節電や省エネをやってゆくということです。今電力会社は口では省エネしましょうと日本では言ってるが、そのかわり夜間電力を使いましょうとか、例えば安全のために電気調理器を使いましょうとかいった形である意味ではエネルギーを使えということを言ってきているわけです。これは日本の電気料金の仕組みが省エネをするつまり節電するということが企業のためにならないという現実があるために、電力会社は積極的にやらないわけなんですけども、やっぱり電力会社が積極的に節電省エネをやれば電力会社も儲かるようにする運動が必要だと思うんですね。

 2番目が未利用エネルギーをもっと活用するべきだということ。太陽光の電気を作る発電とか、太陽熱を利用した温水器とか、風力発電ですね、それから廃熱、これが一つのコジェネレーションなんですけれども、ご存じのように今の大型の発電施設ではエネルギーの有効利用は1/3です。残りの2/3は熱として捨てているわけです。しかし捨てられている廃熱を利用することによって、冷暖房に使うとか、給湯に使うということができれば7割から8割も利用できる、つまり捨てる部分は2割ぐらいになってしまうというわけです。また、河川の水を利用して世に言う水による熱交換ですね、実際には東京の隅田川を利用したヒートポンプが行われています。これは大阪でも土佐堀川で実験プラントを作ろうとしています。

 3番目はエネルギーの利用効率を上げるということです。原発の有効エネルギーは30%で残りの70%は捨てている。だけどコジェネレーションというものを利用することによって80%位までも熱の利用が出来るわけです。

 

電力の自由化を

 では次になぜ日本の電力会社が省エネに積極的にならないかという理由を述べます。今日本の電力会社は発電、送電、配電全部自分でやっています。ということは電気は独占なんです。自分しか作ってないわけです。関電が嫌いだからといってよそから電気を買うことは出来ません。ま、普通の人はですよ。ということは電力会社にしてみれば節電してもらったって自分ところの売り上げが減るだけなんですよね。一方発電所を作るために設備投資はしてるわけですから、これを回収していかなければいけないわけです。そしたらどんどん電気を使ってもらわないと電力会社にしてみれば回収できないわけです。しかも自分のとこしかないわけですから、自分の値段も言い値で付けてもかまわないわけです。これでは電力会社が積極的に節電をやっていこうなんていう気は起こらないわけです。やっぱり何が必要かっていうと競争ですよ。

 つまり例えばですね。私達が電気を買いたい時に関西電力だけじゃなく阪急電鉄、そごうからでも電気が買えるということになれば、当然私達はその電気をどういう風につくっているかということも考えてより環境に優しいところで作っている電気を買うということもできるわけです。または安い電気というものも買えるわけです。例えば、日本でもありますけども、Aという会社が何か外国で悪いことをした、そしたら不買運動が起こりますよね。その時不買運動が起こる。当然同じものをどこかで手に入れるということが出来るということがない限りなかなか不買運動はきついですよね。例えば関西電力が悪いからといって関西電力の電気を買うの止めましょうといっても、じゃ代わりはどうするんだという話になったときに代わりがなかったら困りますよね。そういう意味で日本で必要なのはやっぱり電力をもう少し自由化して、いろんなところから私達が電力を選択することができるということですね。つまり関西電力はいやだから隣の豊中電力から買いたいとか、そういうことが出来るようにしたい。そしたら電力会社にしても自分の所で経営努力をしなければ、どんどんよそから買われるわけです。そうすると自分の所で経営努力をするためには、新たな設備投資をしていたんでは企業は追いつかないわけです。

 今日本の電力会社が安心して原発を造れるのは、競争がないから原発を造ってもその造るお金はいずれどこかから回収が出来るという安心感があるから、いくらお金をかけても電力会社は発電所を造るわけですね。ところが電力会社が自分の経営が十分に安定する為には、よそと競争してゆくためには、そんなに発電に設備投資をして10年も20年もかかって何千億とか高いお金で設備投資をしたとしても、そこで例えば原発を造るために1千億かかったとして、実際にはもっとかかるんですけども、そのお金を電気料金に上乗せしないといけないわけですね。ところが他のところがコージェネレーションで電気を作ったとするならば、安い値段で電気が作れるわけですから当然の事ながら安い電気を市場に出してきますよね。そうすると電力会社は安い電気に対抗するためには自分のところも安くしなければいけないということで、そうするとどうしても今までの大型の火力とか原発みたいにエネルギー的に無駄、金も沢山食う施設は電力会社の選択肢としてはもう選べなくなるんですね。やっぱりこういうことをやればさっきの1番で示しましたように省エネ、節電というところに対してですね、電力会社が本当にまじめに取り組んでくると思うんですね。だから電力の自由化がなければこれは無理。

2番目の未利用エネルギーの活用ということですけども、実は電力の自由化ということが起これば、この未利用エネルギーを活用しようという雰囲気がいろんな所で出てくると思うんです。

これは鳥取県の日南町というところなんですけれど、ここは小水力の発電事業をやってます。自分のところで電気を作ってそれを中国電力に売っているんです。だけど現在はここで電気を作っても日南町は全く自分の懐が豊かになることはありません。もしも電力が自由化されて日南町が自分の処の自然エネルギーを利用した発電をやって、ここで発電した電気を自分で好きなように売れるという、つまり電力が自由化されたなら、そしたら日南町は諸手を上げてこういう自然エネルギー、河川水を利用したエネルギー利用をどんどん進めていくと思うんです。もしも電気が売れたら、日南町の場合、自分の処で大体毎年1億くらいの町収ができます。そうすると10年位経つと元が取れるわけですから、日南町にしてみればこれは完全な地場産業ですね。自分の処で電気を作って電気を売る、日南町発電会社。こういうものを作れば日南町にとっては財政的に潤う。つまりこういうことによって今まで未利用つまり見向きもされなかったそういうエネルギーの利用方法がどんどん利用できるようになる。そのためにも、電力の自由化というのが必要な事になるという気がするんです。

先ほどのエネルギーの利用効率を上げるというところですけれども、これも実はコージェネレーションを進めようと思うと、どうしても電気をうまく売りたいということになる。これは大阪にありますツイン21というビルなんですけれど、ここではコージェネレーションをやっています。ビルのテナントに電気を送っているのです。現実にツイン21が儲かっているかというと実は赤字です。自分で電気を作って売っているんですけれど赤字です。何故かというと自分の言い値では売れないからです。もう一つは自分で電気を売ろうと思うと関西電力からいくらかの電気を買うという契約を持っておかないと売らしてくれません。ということはいっぱい売りたいんですけれど、いっぱい売ろうと思うとそれだけ関西電力からよけい電気を買わなければいけないシステムになっているために、現実にはあんまり売るとかえって赤字が増えてしまうというシステムなんです。でももしもこのツイン21が、自分が発電所だ、ということで関西電力から電気を買わなくても済むということになれば、このツイン21でも十分に企業として電力の売買で上手くやっていくことができるんです。

先ほどあげた3つの問題点の中でですけども、1番に関して言えば、電力の供給者たる電力会社が省エネ・節電をきちんとやるようにするということをきちんとできないとなかなかこれは難しいと思うし、2番3番の未利用エネルギーの利用とかエネルギー効率を上げていこうという話になってきますと、基本的にやっぱり儲からないとダメなんですね。経済活動を否定されると困るんで、やっぱりある程度の利潤がないと誰もやろうとしないんです。会社は善意で動いているわけではないんで、収益がないといけないわけで、実際今こういうものを利用しようと誰かが思ったとしてもですね、現実的には収益は上がらないわけです。収益が上がらなかったら誰がやろうと思いますか。例えば豊中市が発電事業をやろうとしますと、やっても赤字なんですね。そしたらどうしますか。市民は文句を言いますよね。自分達の税金を使って電気を作って赤字だと、なんじゃこれはと言われる。やっぱりそういうところでは高槻でやろうと思ったときに、高槻でこういうことを利用してうまくエネルギー的に有効利用できてしかも高槻の市の財政にプラスになるということが現実的に可能になったら、おそらく自治体は我先にこういう事業に取り組んでいくと思いますね。そういう意味で結論的には日本もやはり早く電力を自由化してもらってみんながこういうエネルギーを有効利用できるようにしていったらいいな、というのが僕の感想です。

 第三世界の国々でもこういうエネルギーを有効利用するためにはシステムが大事なので、やっぱりそういうシステムを上手く作ってゆくことをやらないと失敗するんじゃないかと。例えばデンマークという国ではこういうシステムを上手く作っていますから、デンマークで使う自然エネルギーの利用率は10%近くまで増えています。発電量の10%近くを風車とコージェネレーションとバイオマスでやるような形にデンマークという国は変わってきています。それはシステムがそういうことをやっても金儲けが出来るシステムになっているからなんです。ですからそういうシステム作りも、ある意味では大事じゃないかという風に思うわけです。

 

国際的エネルギーネットワーク

桜井:

 海外との協力は国と国との協力の仕方、例えばODAなどの形で行われていますよね。それに対して国と国、会社と会社といった形のものは、そこに住んでいる人々にはなかなか届かないものでしかありません。どうしてもお金を持っている人がいつも得するようなものにしかならない。どうしても、そこに昔から住んで、昔ながらのきちんとした生活をやっている人達が追い出されていくようなことになっていく。それに対してやっぱり人と人とのつながりを作っていくことはいろんな可能性がある。それはさっき楠本さん達がハイチの人やネグロスと結びついたりするような方法があると思うんです。僕らが1つの技術なりモノをNGOで提供したとします。そこからできる電気を使って箸を作ったり椀を作ったりしたら、それを日本に持ってくる。今、オルタ−トレードとかという形でやっていますよね。これも人と人とのつながりです。そうすると日本で100円のモノが向こうで20円だったり5円だったりするんですが、もしフェアな形で交換できるような仕組みを僕らが作ってしまえれば、国と国あるいはビジネスとビジネスではない形で根っこを張っていけるのではないかと期待しています。それは僕らがやらなきゃならないんじゃないか。そしてそれはたぶん、かなりの勢いで動いているという気がします。

福本:

 ある意味ではエネルギーネットワークというのはこれから作っていかなければいけないものだと思います。

身近に実践!冷蔵庫・トイレ

桜井:

 面白い話をします。僕らは今メタンガスでもって冷蔵庫を動かしています。小型の冷蔵庫ですが、生ゴミとかうんこから作るメタンガスを使って冷蔵庫を動かすんです。本当に動かすまで、実際に動かせると思わなかったんですが、実際に動いちゃうんです。中国には470万基、インドでは120万基の発酵槽があります。そこでは煮炊きに使ったり明かりに使ったりしてるんですが、彼らが一番欲しているのは冷蔵庫なんです。各所帯で冷蔵庫ぐらいは持っていいんじゃないかと思うんです。そうするとメタンガスで作る冷蔵庫ができればバーッと広がります。電気に頼らないでガスでできるようなシステムができます。それをたとえば市民側が作れれば非常に面白い発展になると思うのです。あるいは会社でもいいいんですけれど、そういうものができあがっていけば、原発に頼らない、右肩上がりのエネルギー消費じゃないような形での文明がすっとそこまで来ているような感じがしませんか。そういう技術を一緒に作っていきたい。第三世界の人達と一緒にそれを作っていくのが、行き詰まった文明を作ってしまった日本の責任ではないかと思うのです。

福本:

 どうですか皆さんのお考えは。実際に自分の生活をどうするかというところからスタートしなければ、おそらくこの天然ガスをどうするかという問題の結論は結局出てこないと思うんです。それから、アジアの人たちの暮らしがあって今の自分たちの暮らしもあるわけですね。今エネルギー問題で一番大きなものはこれから第三世界がどういう暮らし方をしていくのかという点なんです。たとえば現在、中国はエネルギー輸出国です。これが輸入国になってしまうととてつもないことが起こる。でもやはり誰でもできるだけ豊かになりたい。明かりが1個だけあったら隣の部屋に明かりもう1個欲しい。小さい冷蔵庫があったら、もうちょっと中に大きいモノ入れたいから大きい冷蔵庫買いたい。テレビ見てたらやっぱり白黒はいやだ、カラーが見たいとかですね。そういう欲望は誰にもあると思うんです。エネルギーの消費に関して、別に僕たちの生活がいいと言ってるのではなくて、そういう現実をどう私達が解消してゆくかということです。エネルギー問題が深刻だからあなたたちは我慢してくれと言えるのかという問題です。それでは、私たちがどの辺までやってからあなたたちをどこら辺まで来てくれというような感じのことが果たして言えるのかとかいう問題もあります。そういう意味でやっぱり私達日本人の責任と役割というのは極めてアジアでは大きいと僕は思うんですけれど。

 

参加者:

今、マンションのトイレはすべて水洗ですが、その屎尿を集めてガスをまかなうようなことができるのではないでしょうか。

桜井:

たとえば中国では実際にあると聞いています。共同住宅で40軒の人間がいるとそこで集めてきたし尿をガスにして3所帯分くらいのガスを賄っているんです。ガス使用の権利は誰が持っているかというと管理人が持っているということだそうですけど。要はTOTOさんがウォシュレット作るんじゃなくてそういうようなものを作ればいいんです。それから浄化槽を作って、昔ダストシュートというのがあったですよねゴミをぽっと捨てる、僕らくらいの年代だとゴミを自分ちの台所から捨てましたよね、それを下に集めてそれを収集車が持っていったわけだけれど、それを捨てないでそのまま下に溜めればいいわけで、そんな難しい技術だとは思わないです。ちょっと発想を変えてポットン式の便所を作ってしまってそれが上手く使えるようになればそれはひとつの合理的な暮らし方だと僕は思いますので、会社作りませんか。TOTOじゃなくてセーセーとかいう名前つけて会社作りませんか。中国にはあります。

福本:

日本にはないですね。

通産省も原発に見切りをつけた

桜井:

 ちょっと補足させてもらいます。僕は仕事の関係でNEDO、新エネルギー産業機構という通産の外郭があるんですけど、その人達と時々話をすることがあるんですよ、彼らなかなか良いことを言うんです。例えば省エネにしろ自然エネルギーにしろ進めなくちゃならないという話をすると、うんうんうんと。けれども1つだけニュアンスの違うところがあります。彼ら通産省というのは日本の国の産業をいかに育成するかという観点に立ちます。そうすると彼らの観点は日本の産業をどうやって守るか、どうやって進めるかという発想に立ちますから自然エネルギーにしても、例えば太陽電池です。太陽電池を普及してそれをどうやって輸出産業にするのか、国内産業に育てるのかとそういう発想に立ちます。だからどんどん大きいものをいかに上手く安く作るかそれを一生懸命研究するわけです。

 彼らは原発がもうダメだというのはハッキリ見切っています。だから太陽電池にしろコージェネレーションにしろ燃料電池の技術にしろ、もっともっとお金をかけなきゃダメだと平気で口にします。原発もダメだと言うようになっています。ただ彼らはあくまでも日本の今あるシャープだとかサンヨーだとか守り育てるという観点がありますんで、できるだけ大量に売ろうという観点がついてます。だけど僕たちがそこで注意しなければならないのは、ちょっとベースのところで違うのは、例えば沢山売ろうというのではなくて、できるだけ小さなエネルギーでどうやって暮らすかという技術を僕らは作らなきゃならない。例えば5kw6kwという太陽電池を付けるんじゃなくて1Kwとか0.5kwで生活できるような技術を僕らは作らなくてはいけない。ところが通産の方は原発はダメだ、自然エネルギーを進めようという言い方をします。ただそれはあくまでも「沢山売ろうね」という前提があるんだということを押さえておいて欲しいというのが僕の今の感想です。確かに今通産も変わりつつあるなというのは思います。そうしないと国際競争に勝てないんです、原発ばっかり言ってちゃとても勝てないことを心ある通産省の方はみんな知っています。だからそう遠からず福本さんが言ったような形に変わってくると思います。その先で僕らはやはり大量に作って安くするというんじゃなくて、できるだけ少ないエネルギーで生活できるような技術を僕達が作っていかないと、そこでもってまた足をすくわれることになるんじゃないかってことは頭の片隅に置いていいんじゃないかなと思います。

会場:

 私もここ5、6年科技庁とかいろいろ交渉してきましたけども、随分変わってきたというのは感じるんですけども。

参加者:

 もう少しネット組んで、何か小規模な形で、次第にコージェネみたいなやつをいっぱい作ったら、国も動かざるを得ない。そういう形にしなかったら、変わらないです。自治体の職員は。面子を重んじるから。

 

 


インドネシアの現況

代替エネルギーは可能だ

福本:

インドネシアと韓国からお見えになってますので、一言ご挨拶というか自分が言いたいことを何でもいいですから言ってください。最初にインドネシアのハリーさん。

ハリー:

 インドネシアは12基の原子力発電所をこれから造っていこうと計画しています。来る21世紀にはエネルギー危機があると言っていますが、これは正式には正しくなく、まだ私達の国インドネシアはエネルギー源が沢山あります。これから無くなってゆく可能性はありますけれど、石炭・地熱・ガス・太陽熱が利用できると思います。他の研究者達が言うにはエネルギー効率を高めてゆくことが差し迫った問題ではないかと。勿論私は原子力発電所には賛成しておりません。さっき言われたバイオガスですとか小型水力ですとか。自分達の生活の電力をバイオガスとかまたは小型発電によってまかなっております。

反原発運動の現況

桜井:

 インドネシアのハリーさんに。原発の反対運動の現状をちょっと。

ハリー:

 2つの要素が絡まってまいりますので大変難しい。政府がある原子力発電所を造ろうと思った場合に当然反対する勢力があるわけですけれども、反対の主張を言おうとした場合にそれができないというのがあるので、とにかく私達の活動、反原子力活動というのは大変危険が伴っております。NGOの団体が例えばセミナーを開こうとした場合には、必ず法律に則って許可を取らなければなりません。その許可には会議の内容、セミナーの内容がどういったものかというのを記載しなければいけないんです。その内容が否定的なこと、例えば原子力の問題点はどうだこうだといった内容のものでしたら、絶対に許可は下りない。例えば原子力の利益について語るセミナーであった場合は許可がおります。

 今言った状態というのは2、3年前のことで少なくとも現状はちょっと変わってきまして、政府内でも賛成派と反対派がいまして、彼らの間にもそういう論争が起こっていますので、私達にも少しは原子力について語る自由があるのではないか思います。私達の反原子力活動は、まあインドネシアの民主化運動に、今後の動きに関わってくるんではないかと思います。

 

福本:

長い間、ありがとうございました。

 

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