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第一回 日本
東京 ノーニュークス・アジア会議

アジア民衆の
ネットワークを
どうつくっていくか



司会(河田)
 それでは、今後のアジアのネットワークをどうつくっていくかという議論を始めます。冒頭に国会議員の清水澄子さんのメッセージがあります。どうぞ。

清水澄子(日本)

 ノーニュークス・アジアフォーラムに参加していらっしゃるみなさん、アジア各国からようこそおいでくださいました。最後の声明を聞きまして思うのは、私たちアジアは、もうこれまでのようなアメリカやヨーロッパの核を中心とした、力の支配を中心とした対立、差別や憎悪を中心とした国家間の関係、そして文明論や産業経済論や安全保障論とかから、きっぱり解放されなければならないということです。そういう運動として、今日ここにみなさんがお集まりになっていらっしゃるんだろうと思います。それに私も国会議員のひとりとして全面的に参加したいと思います。
 すでにこの声明でも、朝鮮半島から完全に核兵器の脅威をなくすという明確な問題提起がなされていますが、やはりこの日本という国は、アジアのなかで最も核問題で緊張している朝鮮半島と深くかかわりながら、アメリカの基地、最も大きな核の基地を持っている国であります。そして最も多くの原発を持ち、最も大量のプルトニウムの輸入をはかっている国でもある。こういうふうな情況のもとで、北朝鮮がNPTから脱退するというときに、かつてのイラクに行なわれたように、日本のマスコミをはじめ世論はすべて北朝鮮叩き一色になりました。
 しかし声明にもありますように、いったいNPTとは何のためにできたものなのか。これは米ソ核超大国がつくったものです。そこには、すでに核を持つ者の権利のみが保有されており、まったくの不平等条約でありますし、核を持たない国や人々が、核を持つ国の管理下に置かれていくという、不正義な条約であると思います。ですから私どもは北朝鮮に核があることを支持はいたしませんけれども、北朝鮮を叩くだけでは、私たちの願っている本当に核のない世界をつくりあげることにはつながらないと思います。そして、私ども自身の運動のあり方も検討する必要があるんじゃないかとも思います。
 ですから朝鮮半島から核をなくしていくということ、さらにはアジアの非核化、世界の非核化を本当に望むならば、まず日本の核政策を明確にしなければならないと思います。それはプルトニウムの大量輸入や核再処理設備の拡大をやめさせること、そして非核三原則の法制化を達成し、さらに国際的な制度にしていく努力を、私たち民衆の力で強化していくことだと思います。そして日本からアメリカの軍事基地を撤去しなければなりません。アメリカの核基地を大量に持ちながらの非核化というのは、私たち自身の運動の信頼性、展望というものに疑問を持たれてしまうのではないでしょうか。
 いま、韓国と北朝鮮は自主的に相互不可侵協定、いわゆる南北基本合意を持っていますし、朝鮮半島の非核化のため相互査察をやろうということも決めてるわけですから、そういった話し合いが進んでいくように、日本は特にアメリカに対して、ロシアに対して、中国に対しても核の軍縮というものを要求していかなくてはいけないと思います。
 そして核をなくすことは、核を持つ国々の国際的な圧力や経済制裁とかによるのではなく、私たち民衆の連帯で本当の対話をつくりあげ、そういうなかで実現させたい。本当に核のない日本、核のないそれぞれのアジアの国々、そして世界から核をなくしていく、私たちもそういう働きをする一員になっていきたいと思います。
 明日から、また政府への交渉があるようでございますが、私も一緒に協力していきたいと思います。ありがとうございました。

司会(河田)
 ちょうど2時近くになりました。4時には終りたいと思いますけれど、われわれのネットワークをどのようにつくっていくかということを話し合いたいと思います。初めにですね、この2日間の会議が成功裡に終わりつつあることをみなさんに感謝したいと思います。そして次回の開催国をぜひ決めたいと思います。これまでに台湾と韓国から、次回開催国になってもいいという意志表示がありました。ただ最終的には、それぞれの国に帰って具体的な相談をして、3カ月以内に決定するということです。ですから、今後1年またはちょっと先ぐらいに、第2回目のアジアフォーラムが開かれることになります。
 そして、次回開催に向けていろんな体制をつくっていかなくてはなりません。ひとつには、相互の経験や情報を交換するためのニュースレターを発行しようという提案があります。これは最初の日に小木曾の方から提案した、アクションプランのなかに入ってる議題です。それから具体的なネットワークをどういう場で、組織的な問題をどうするかという議題もあります。それらについてこれから少し議論していきたいと思います。特に発言者を決めておりませんので、この点についてご発言ある方はどうぞ挙手をお願いします。

コンピュータ通信でネットワークづくりを
会場発言(埼玉・男性)
 みなさんこんにちは、私は橘ともうします。これからの反核運動あるいは平和運動、人権問題、いろんな問題がすべて、これからのみんなの生存にかかわってくる大事な問題で、そのことをいろんな国々のいろんな分野の人たちが一緒になって、情報を伝え合い、お互いを励まし合うためのネットワークをつくっていくことが要求されていると思います。その具体的な形として、たとえばコンピュータ通信はどうでしょうか。
 すでにコンピュータ通信を使って情報を交換していく、国際的なネットワークができています。代表的なものにアメリカのピースネット、エコネットというものがあり、ヨーロッパ、北アメリカ、南アメリカなどでは、運動のなかで重要な位置を占めるようになっています。基本的には電話線を通じて文書をお互いに届けあうということが、コンピュータ通信の役割ですが、これを使うと、たとえば1本の原稿を100人に送るのにかかるコストと手間が、ひとりに送るのと同じになります。電話やファックスだといちいちかけて回らなくてはならないですから、100本の電話の方が100倍お金がかかってしまう。だからみんな、コミュニケートをはかりネットワークをつくることの大切さは知っているんだけれども、100本の電話をかけ、100通の手紙を書くめんどうくささのためになかなかできない。また、それをやった場合に今度はほかの仕事ができなくなってしまうということがあると思います。そういうことに費やされる労力をもっとほかのところに向けるために、コンピュータ通信を市民運動のなかで有効に使っていくことを提案したいと思います。
 アジアの国々における通信事情については、実はまだよくわかっていません。ですから各国の情況について教えていただき、またみなさんとも相談したいと思っています。ちょっと唐突だったかもしれませんけども、そういうことです。どうもありがとうございました。

司会(河田)
 パソコン通信というのは、各地で威力を発揮しているようですけども、これは国によって普及の度合とかに差があると思います。それがわれわれの運動のネットワークとして利用可能かどうかということについて、もしご意見があればお願いいたします。これを具体的にやるとなると、情報ネットワークのセンター的役割の人が必要であるとか、お金がいるとかということになります。いきなり具体的な提案があったんですけども、これは初日のアクションプランのなかで提案されていることのひとつでもあるわけです。

会場発言(和歌山・男性)
 実際にパソコン通信を使ったことのない人に使ってもらうとか、どういう使い方ができるかを実演してもらうのがいいですね。さっきお聞きしたんですけども、会場の外でデモンストレーションしているコンピュータは、残念なことに電話回線につながっていない。実際に回線につないで、たとえばこの会議の模様をまったく別のところのグループに逐一送って、電子会議と呼ばれている方法を実演してみるとか、そのうえでどういかせるか、あるいは何が難しいか、どういう問題点があるかを議論していくのがいちばんいいんじゃないかと思います。

司会(河田)
 ほかにこの件に関してご意見ありますか? ちょっとこういう進行では話が盛りあがらないと思いますので、少し事務局の方で議論されてることをご説明したいと思います。池田さん、お願いします。

調整委員会での議論
池田進(日本)
 実行委員会の池田です。さきほど12時から1時過ぎまで調整委員会が開かれまして、今後のネットワークや活動についての話し合いを進めておりました。そこで話されたことをご報告して、議論に資するようにしたいと思います。調整委員会というのは、8ヵ国でそれぞれ各国1名以上が参加して、昨夜、先ほど読みあげました声明文の文案を作成し、今日正式な文章につくりあげたわけです。その内容を含めて、私たちがどういう議論をしていたかを具体的にご説明したいと思います。
 ひとつは西太平洋地域のこのアジアが、極めて大きな原発の建設地帯、その予定地帯になっているということを共通のベースにして、88年に一度開いてはいますが、それよりさらに規模の大きなアジアでの会議を、公開の場でやったということがあります。
 実はいままで私たちが一同に会する機会らしい機会がありませんでしたので、各国間での意見の相違が多くありました。たとえば運動のしかた、また経験の違い、それぞれの原発の立地条件、反対運動の形態と、かなり多くのことがらが異なっているからです。そして昨日の委員会では、オルタナティブな、エネルギーを浪費しないようなライフスタイルみたいなものが必要なのではないかという意見もありましたし、非常に政治性の高い運動を展開すべきだという意見も出ています。あるいはもっと広範な人たち、市民が参加できるようなネットワークにしたいという意見もありました。ですからこの声明文自体も、具体的なところではかなりの議論をしております。
 そして、特に今日の昼の委員会でいちばん中心になった話が、2回目の国際会議をどこでやろうかということです。これについては韓国から、来年やってみようというかなり積極的な意見もありましたし、また台湾の方でも、戻ったうえでもう一度正式な返事をするけれども、いずれにしてもやる用意はあるという発言をいただきました。したがいまして、いずれにしろ来年の夏か遅くとも秋には、台湾か韓国で必ず開かれるだろうことはほぼ間違いないと思います。さらにほかの国の方々から、持ち回りという形で各国が順番に毎年会議をやるという提案まで出されています。これはまだ決っておりませんけれども、この反原発のネットワークが、いま着実に進んでいることをあらわしていると思います。
 もうひとつは、先ほど話されたように、いわゆるニュースレターを定期的な刊行物として出そうということとか、その他の提案が出たんですが、いちばんの問題は実は活動資金で、運動の資金をどうするかという問題が残っています。こういう国際会議をひとつ開くのでも、おそらく何百万というお金が必要ですし、それを市民レベルでいかにささやかに地味にやろうとしても、やはり人が動き、人が集まり、討論をするという場面ですから、お金の問題がつきまといます。残念ながら調整委員会では、その資金調達をどのように具体的にやるかというところまでは議論ができませんでした。これはむしろみなさんの方から、積極的にどのような形で新しく反対運動の資金をつくっていくのか提案をいただきたいと思います。
 私たちは、この間何百万かの予算をたててみなさんから浄財をいただき、さらにこの会議の入場料という形でもいただいております。しかしそれだけではなく、恒常的なアジアのネットワークをこの8ヵ国の方々がすべて一緒に共通してやるという意思をお持ちですから、それに合わせて、どのように責任を持ってやるかということを、ぜひこの限られた時間ですが提言していただきたいと思います。明日から全国各地を回りますけれども、現地の方々も含めれば、私たちはこの日本以外の7ヵ国の方々と、おそらく千人単位で出合い、話し合い、語り飲み食いをするわけです。その大きな財産をぜひここで活かしていけるような提言を、みなさんの方から積極的にいただいて、この国際会議を成功裡に終らせていきたいと思います。ぜひよろしくお願いします。

司会(河田)
 どうもありがとう。いまの発言でほぼ、どういう内容の議論が必要かがおわかりいただけたと思います。特にいま説明がありましたように、お金をどうするかという問題ですね。それは今後ずっとつきまとってくると思います。国際会議を開くためのお金、それからずっとネットワークを維持していくためのお金、両方ともいります。そういうことについて何かいいアイデアがありましたらどうぞ。

地域内から相互補助の輪を広げていこう
会場発言(東京・男性)
 スタッフでビデオを担当してます佐藤です。江戸川区のグループKIKIのメンバーでもありまして、午前中同じグループの田中という者が郵貯をおろしてそれを有効に使おうという話をしたんですが、日本の私たちは老後のためにお金を貯めなきゃいけないという実態があると思うんです。それが郵便貯金に預けられ、そのお金がアジアとか世界の開発に使われて、自然を破壊している。で、それが原発とかプルトニウムに関する日本の政策にもたくさん使われているという現状があるわけで、ぜひ郵貯をおろしてそれを地域の共同の財産という形で使おうということを提案してます。
 そういうことをやっていく場合に、やっぱり老後のことが心配で若干の貯えがないとやっていけないというふうに考えるんですけども、それはお互いに助け合う、地域的に助け合うという関係ができればそんなに貯めなくてもいいと思うんですね。それで地域の、ほんとに小さい地域でのグループ間での運動で、信頼関係ができてお互いに助け合っていく関係をつくる。するとお金も、じゃあ少し余ったから、なんか有効なことに使おうじゃないかということも出てくると思います。
 それから江戸川区のグループでは最近、だいたいひとり1度か2度ぐらいは、フィリピンとかタイとかマレーシアとかに出かけて行って、現地の人たちと交流をしてきてるんです。現地の人たちの生活を現実に見て、やはり日本人の生活というのがいかに無駄が多いかが良くわかるんですね。やっぱり第三世界の、アジアの資源を日本に持ってきて、それをそんなに無駄にして捨ててはいけないという気持ちになる。そういう点からも、ぜひ第三世界、アジアの人々との交流を、それぞれの小さな市民グループがいろんなルートを使ってつくりあげていくことが大事じゃないかなと思います。
 私どもは88年に反原発の運動のなかでお互いに知り合って、反原発を中心に活動をしてきたんですが、それだけじゃなく、リサイクルとか、PKO反対とか、まあいろんな運動をKIKIというグループでやっています。そういう自分の生活全体を通じてアジアの人々との関係をつくっていく。そのなかで当然、反原発・脱原発を求めるという関係も自然に出てくるように私は思うんですね。だから反原発というネットワークが、どっかひとつを起点にするのではなくて、いろんなルートの日本やアジアの人たちの関係のなかで、そういう関係をつくればいいんじゃないか。そういういろんなネットワークをアジアにも広げていくというのがまず必要で、それを交流させるような情報センターみたいなものがもうひとつ必要かなと考えてます。

司会(河田)
 ありがとうございました。そうですね、確かにいろんな形のつながりをまずつくっていくことが必要だと思います。そのなかで、どういう具体的なやりとりができてくるのかに期待したいと思います。
 ニュースレターという話が何回か出ていますけれど、これは各国の原発の進展の具合、あるいは事故その他の情況によって、ずいぶんいろんな問題があると思うんです。それをお互いに流通させるということが目的だと思うんです。こういう情報がほしい、ああゆう情報が知りたいということが、もし各国の方で何かあれば、ちょっと出してみていただけないでしょうか?
 どうぞ。タイのウィトゥーンさん。

情報システムの構築が今後のポイント
ウィトゥーン(タイ)
 私は、このネットワークの発展は行動、つまりこのアジア地域の私たちが連携した行動を連鎖的に行なうことを通じて進むだろうと思っています。そして、この会議で各国の友人たちから報告されたすべての状況を考えたうえで、私もちょっと提案したいと思います。
 私たちにとって急を要する行動は、ふたつの問題についてだと思います。ひとつは、プルトニウムについて。この問題はひとつの地方、ひとつの国、あるいは特定の地域にかぎった問題ではありません。ですから私たちはそれぞれの国で人々の意識を高め、日本政府にメッセージを送るためのキャンペーンをしなければならないと思います。そしてタイから来た私は、この問題についてのいろいろな情報を持ち帰り、タイの人々へ広く知らせることができます。ですから、どのようにして署名を集めるか、どのようにして日本政府にメッセージを送るかというような情報が必要です。
 もうひとつは、日本や台湾、韓国の各地で数多くの闘いがくり広げられているということですが、これらの現地闘争にはやはりサポートが必要だということです。たとえばタイの人々がヤミ族の人たちに、あなたたちの闘いを支持しているという手紙を出すこと。これもサポートでありましょう。もしあなたの国の政府が国際関係に対して敏感であると思うなら、環境問題のネットワークが行なってきたのと同じような方法をとることもできるでしょう。それはつまり、自国の首相や新聞に手紙を書いて問題を提起するという方法です。また、世界銀行やIMFのような国際機関のプロジェクトに対して闘うのならば、その国のNGOやそれらの国際機関を監視している世界中のNGOと共闘していくこともできるはずです。ですから、まず私たちに必要なのは、どこでどのような闘いがとりくまれているのかを記したリストづくりであり、それをこのネットワークを通じて各国が共有することです。
 もう少し中期的に考えてみましょう。ここに参加しているいくつかの国でも、たとえば私の国にはまだ原発はありませんが、しかし近い将来、原発が導入されるかも知れないわけです。ですから私たちはそれぞれの国でキャンペーンを行なって、人々に原子力とは何なのかを教えなければなりません。そのために情報が必要なのです。この会議を通じて、私は自国で使えるたくさんの材料に出会いました。展示に使える多くの写真や、あなた方が記録してきた様々な経験、それらのものは私たちの国でも役にたちます。ですから私たちが次に必要なのはむしろ「人」です。そういう情報を集めて私たちに提供してくれる「人」であるといえるでしょう。
 そして長期的には、私たちはどのようにこの「私たちの資源」を発展させていくかを考えなければならないでしょう。このアジア地域を網羅する情報システムを築くことはできると思いますし、それによってより多くの情報が得られるでしょう。そしてアジア地域以外の反核運動と関係をつくっていくことも重要です。名古屋での会議では、このあたりのことをもっと詳しく話し合うことができると思います。

司会(河田)
 たいへん包括的な話をどうもありがとうございました。ほかにどなたか?
 ではジャヤバランさん、どうぞ。

ジャヤバラン(マレーシア)
 いまやこの実行委員会も経験を積んできておりますし、ほかの国が次にフォーラムを開催する場合にもその経験が生きてくることは確かでしょう。また、この会議がおそらくアジアで最もお金のかかる場所で行なわれているということを思うと、日本実行委員会がやってきたやり方そのものが、次にやる場合のひとつの資金面での解決策になるのではないかと思いますが。

司会(河田)
 どうもありがとうございました。どうぞ。

会場発言(佐賀・男性)
 いまのことと関連してですけども、たとえばこういう会議を開くために、いろんな財団に申請して援助をとるという方法があると思うんですね。ただその場合、日本が開催地の場合は絶対出ませんし、韓国でも難しいんじゃないかな。これがタイで開くという場合であれば、お金を出す財団が少なからずあると思うんです。ですからそういう方法も一応検討の対象にしておく必要があると思うんです。

司会(河田)
 財団に援助をもうしいれるという話がありましたが、そういうことについて私たちはまったく経験がないんです。調べてみる必要がありそうですね。ほかにはご発言ありますか? どうぞ。

フォーラムの常設本部を日本に

会場発言(韓国・男性)
 韓国がここに参加するまでの具体的な話を、少しご披露したいと思います。韓国ではここに参加するための準備委員会を組織しました。そしてノーニュークス・アジアフォーラムが終了しますと、そのままの名前は使えないわけです。したがってノーニュークス・アジアフォーラム韓国委員会、あるいは台湾委員会など、各国で実情に合った形の名前を具体化させるというような作業が、まず必要だと思います。次にこのようなフォーラムを、たとえば輪番制で行なうなり、東京に常設事務局を置くなりして、いろんな形で定期開催するための具体的な作業も必要かと思います。と同時に、ある国で非常に大きな争点が生まれたときには、臨時フォーラムの開催も考えられるでしょう。
 しかしひとことでいうなら、組織をつくるときの最大の問題はお金です。実際、今年も韓国から多くの同志たちが参加しようとしたんですが、最終的に10名になった理由のなかにも、やはり財政的な問題があります。どう考えてもこの常設事務所といいますか、拠点というのが必要です。日本がそれになるという仮定をしたときに、日本委員会がほかの諸国に対するサポートといったものを、そういう意味で、より積極的に考えていただければと思います。そしてこの常設本部といいますか、そういったものが設置されれば、今度はその常設組織の名称で各国政府、あるいは各国で闘っている環境問題にかかわる団体に対しても様々なメッセージなどを伝えることができ、このアジアフォーラムの非常に大きく力強い姿を印象づけることができると思います。
 要約して、もう一度私の提案を行ないます。この反核フォーラムの常設本部を、日本に置くことを前提として、各国はその各委員会という形式がよいと思います。フォーラムそのものは定例年1回開催ということにして、各国で重要で緊急な争点が生まれたときには臨時に行なうこととする。そして経済的な問題については、日本委員会がより積極的な姿勢に立ってくださることを要望したいと思います。

司会(河田)
 なかなかいい提案ですが、むづかしい提案でもあります。

ウェッブ・ワーロウ(インドネシア)
 佐藤さんと宮嶋さんの提案は折衷できるのではないでしょうか。つまり、それぞれの国がフォーラムのための各国別の事務局をつくるべきだということですが、そうであっても中心となる国際的な事務局はやはり必要です。ですから、韓国がいったように、日本を国際事務局として選ぶというのは極めて現実的だと思います。
 また日本の同志はたとえ国際事務局をやるとしても、自分たち一国がこの仕事を担わなければならなくなるというふうには考えないでください。私たちがこのフォーラムでやってきたことの成果は、各参加者がそれぞれの国へ持って帰るわけですし、ここで得た数々の情報は非常に役に立ちます。これは、今後も私たちは連絡を密にとり合わなくてはならないということを意味しています。また私たちには情報だけではなくて、実践をとおした教育や訓練も必要ですし、そのようなワークショップの企画づくりなどについても、私たちはとりくんでいかなければならないでしょう。
 一方、運動の基盤をつくっていくうえでも、たぶん資金集めは重要な作業となる。だから国際的な行動の資金集めを担当する委員会を設置するか、あるいはそれを担当する国を決めなければなりません。つまりフォーラム全体の作業を分散し、それぞれの国の仕事ととして割り当てていくこともできるでしょう。たとえば教育・訓練プログラムやワークショップの立案などは韓国の同志に任せてはどうかと思いますし、そのほかにもいろいろと考えられるのではないでしょうか。別の分担例としては情報センター、情報を探し集めて提供する作業は、そのような経験の豊富な国、たとえばフィリピンが担うというようなことです。これが私たちの提案です。どうもありがとう。

司会(コラソン)
 だれかほかに意見はありますか? そろそろ決議しないといけません。まだ事務局に関する問題が解決してませんが、基本的には二者択一になります。常設の事務局を設けるのか、持ち回り、つまり次回開催国がその年の事務局になるということにするかです。さて、どちらを実行に移しますか?

アジアフォーラム事務局を各国に
司会(河田)
 司会をやっておりますけれども、ひとつ提案があります。事務局についてですけれども、今回のフォーラムに参加するにあたって、いろいろ各国により事情が違うと思います。すでに事務所があって活動している団体から来ている国もあれば、あるいはこのフォーラムのためにいろんな人たちが集まって団体を送ってきた国もあります。具体的にいえば、日本ではこのフォーラムのためにわざわざいろんな人が個人で集まって、新しく組織された団体で実行しているわけです。そういうふうに実情が違いますので、いちがいに決めることはできないと思うんですね。けれども今後、このフォーラムのネットワークを強化するために、少なくとも最低各国にノーニュークス・アジアフォーラムの事務局を設置する。これがひとつの提案です。そしてその事務局どうしがお互いに絶えず連絡をとり合う、これも可能なことです。それがたとえばパソコン通信でもいいし、ニュースレターでもいいし、FAXネットでもいいし、いろんな形で連絡をとり合うことは可能だと思うんです。
 そして2番目の提案はですね、これはお金に関することです。その各国の委員会が、それぞれに基金を募るということです。それぞれ国によって実情が違うと思いますけれども、たとえばそれぞれに口座を設けて、自国のなかでお金を集める。それをひとつにまとめてノーニュークス・アジアフォーラムの基金とする。金額の多い少ないは問題ではありません。その全体を次の会議のための基金として扱うと、そういうふうにしていったら実現可能なプログラムがつくれるのではないかと思います。

司会(コラソン)
 そうですか、ははぁ、うまいいい方ですね(笑)。国際事務局についてはどうなんでしょうか。まだ結論が出てませんね。うーん………。はい、ジャヤバランさん。

ジャヤバラン(マレーシア)
 日本がやるか次期開催国がやるかという議論になっていますが、それと離れて自発的にやってくれる参加国はありませんかね。どなたか………?
 私は事務局を持ち回りにしようと決ったら、それに賛成しますが。でも、もしだれか自発的にやれる人がいたら、この問題は解決しますね。

司会(コラソン)
 だれか、手をあげる人いませんか?………(沈黙)………(笑)。困ったことになったようですね(笑)。ではちょっともとの問題の方へ戻りたいと思います。最初に日本からの提案がありました。そこへ戻っていいですか?
 昨日、日本から事務局についての提案がありました。それは、94年のフォーラムが開かれる国に事務局を置くというもので、それぞれの国からは可能なかぎりの支援を行なうということです。
 さて、まずこの提案の賛否を決して次の議題に進もうではありませんか? なぜならこの提案がとおれば、来年の会議の受け入れ国として手をあげてくれる国は、自動的に国際事務局も受け入れなければならないということですから。つまり、一挙に問題が片付くということですね。でも、もし受け入れ国がなければ、日本が継続する以外に、基本的に選択肢がないということだと思います。でなければ、このフォーラムもたち消えというわけですね(笑)。
 ではこの提案について決議してもいいですか? はい、ウィトウーンさん。

ウィトゥーン(タイ)
 日本がもし情報センターの役割を果たしてくれるのなら、私は満足です。それが私たちが日本に期待する役割でしょう。そういう提案をしたいと思います。でもいまは台湾、それから韓国も………。

司会(コラソン)
 すいません、ちょっと待ってください。ウィトゥーンさんの提案なさろうとしているのは、その次の問題です。まずは、「次回開催国が事務局を兼務する」という提案の賛否を採りましょう。
 というのは、この提案が受け入れられたら、次回開催国を決めるときに、そこが事務局をやる気があるのかどうかも確認しなければならないからです。もし彼らがやる気がないといったら、そのときまた違う案を検討しなければなりません。でも、彼らが事務局をやることに異存がなければ、それで万事解決ということになります。

次回開催国が事務局を兼務
ジャヤバラン(マレーシア)
 持ち回りの事務局、次回開催国が国際事務局を兼務することにしようという提案があったわけですね。で、次回開催についていえば、台湾と韓国の両方が名乗りをあげている。なら話は簡単じゃないですか。事務局を引き受けるといった方の国に、次回の開催を任せればよいのですから。ま、売り手市場っていうか(笑)。

司会(コラソン)
 はい、この意見について何か反対はありますか………? 反対はないですね? 台湾が次回会議の受け入れ国として手をあげました。そしてこの会議以降、次の会議まで彼らが事務局として行動することになります。もしこれに対して反対がなければ、大きな拍手で確認できませんでしょうか………? あ、はい、金さんどうぞ。

金源植(韓国)
 先ほどの調整委員会で韓国はこれをひき受けたい、最終的には帰ってから決めるということをいいました。手をあげたのは台湾と韓国でしたが、3カ月以内に返事をしてこなかったら、その国は放棄するものとし、もしも韓国、台湾ともに受け入れる旨の返事をしてきた場合は、韓国の方に優先権があると決定しました。それは私が先に提案をしたからです。いまになってですね、急に台湾がということになれば、さっきの昼の会議は何のために開いたんでしょうか。まず、この質問に対して答えていただきたい。

司会(コラソン)
 ええ、そうでしたね。はい私が話の進行を間違えました。ごめんなさい。訂正します。昼食のときの決定は、韓国と台湾が3カ月以内にこのことについての決断をするということです。調整委員会は参加国の調整を行なう組織ですが、これが最終的に決断をします。と、これでいいですか?(金源植氏納得したようす)では、前に戻りましょう。

ジャヤバラン(マレーシア)
 そしたら、これからの3カ月間、連絡センターをどこに置いておくのかという問題が発生しますね。私から提案しますが、この3カ月間は日本にこのまま続けていただくというのでどうでしょうか?

司会(コラソン)
 この提案に対して何か反対はありますか………? ないようですね。それではまとめます。

  1. 1994年の会議開催国が決定するまでのあいだ、つまり今後の3カ月間、日本が事務局をひき続き行なう。
  2. 台湾と韓国は、3カ月以内に次回開催をひき受けるかどうかの意志表示を行なう。
  3. 次回開催国は、自動的に来年の事務局をひき受ける。
 これですっきりしたでしょうか………?(拍手)はい、どうもありがとうございます。

司会(河田)
 ひとまず事務局に関する議論は決着がつきました。あと、ニュースレターの発行という問題がありますけども、これに関してはみなさんどのようにお考えでしょうか。宮嶋さん、なんか提案がありますか?

ニュースレターの発行体制について
宮嶋信夫(日本)
 本来ですと、これも調整委員会で十分に議論して、合意のうえでここで提案すべきであったわけですが、今日の昼間、その時間がとれませんでした。その前の夜2日間にわたって会議をやっておりますが、ニュースレターの発行体制については、調整委員会では結論を出すところまでいたっておりません。
 次の国際会議の場所が決るまで日本が事務局をやるということになりましたので、日本でニュースレターを、いつまでにということはここではお約束できませんが、私は出したいと思っています。その内容につきましては、アジア規模での原発推進という事実がありますし、マレーシアのARE問題も日本が原因となって続いておりますし、様々な問題が日本発ということで進行しております。ですからわれわれは実践的な課題をニュースとしてとりあげて各国にお知らせをする。特にプルトニウム問題とか、それ以外の問題についても新しい動きが出るたびごとに、それをニュースとしてとりあげていきたい。これは私の個人的な提案でありますが、そう考えております。それから、一般には報道されていないようなたいへんな状況がアジアで起きています。そういったものにつきましてはアジア各国から情報を提供していただいて、日本の国内にその情報を提供すると考えています。

司会(河田)
 ニュースレターですけども、たとえば各国で同じものが流通するのか、あるいはそれぞれ自分たちのニュースを発行してお互いに交換するのかといったことが問題になると思います。共通のものをつくるとすればどういう言葉になるのか、集め方をどうするのか、ということも問題になると思います。具体的なことに関してもしご意見があれば、うかがいたいと思います。

会場発言(日本・男性)
 各国のマスコミがどのように事実を伝えてるのかを、資料として集めていただきたいんです。たとえばマレーシアにある新聞が全部、企業と政府寄りなのか、少しは真実を書く新聞もあるのか。かりにある程度真実を書く新聞がマレーシアにあったら、その東京特派員が三菱化成の責任者にインタビューして、どうそれに答えているのか。また、マレーシアでそれがどのように刷られたかといった内容のもの。マスコミ対策が今後も必要だろうし、そういったものを今後載せていっていただきたいと思うんです。

司会(河田)
 ニュースレターの中身についてのご要望がありましたが、ほかにございますでしょうか? たとえば共通のニュースレターをつくるとすれば、どういうインターバルでつくるかということも問題になります。ニュースレターに関してご意見をどうぞ。

会場発言(日本・男性)
 ニュースレターについて、今後の3カ月は日本が事務局ということになりましたので、その間は一応日本が発行するということにして、全部共通で英文ということで、日本が各国からいろいろ記事を集めて発行するという形がいいんじゃないかと思います。

司会(河田)
 いま、当面3カ月間は日本が担当すると、そして一応共通の言葉として英語を使用するという提案がありましたが、方向としてはそのような形でよろしいでしょうか?………(拍手)。あと、期間に関してはどうでしょうか? おそらく毎月というのは難しいでしょうが、半年に1回というのもまたニュースバリューという点では問題があると思います。まあ、非常に具体的なことですけども。こうあってほしいという希望で結構です。

年4回、安いコストで
コラソン(フィリピン)
 事態の進展は非常に早くなってきています。1年に4回の発行では、結局のところ最新の情報というわけにはまいりません。もっと頻繁に出せればそれにこしたことはないですが、少なくとも1カ月に1回のニュースレターを発行すること、それが私の提案です。コストのために発行頻度を抑えるといったことのないように、安い紙を使いましょう。私たちがいちばんほしいのは情報であって、それは紙の質には関係ないのですから。

ジャヤバラン(マレーシア)
 実際に可能な範囲で考えると、年に3回か4回というのがせいぜいだと思います。しかし年4回と決めたとしても、それだけに限定することはない。緊急の問題が発生したら特別号として小さなものを出せばいいわけで、それは別に難しいことではないと思います。各国からの情報を網羅したものの発行は年4回程度とし、さらにこの合間をぬって、特定の問題についての号をつくればどうでしょうか。
 情報の中味についてですが、たとえばここに日本のものですが、"Nuke-Info.Tokyo"というニュースレターがあります。このような情報が、いろいろな国、少なくともここに参加している国々から入ったら、それを集めるだけで4半期ごとに出せます。
 それからまた、コストの問題がコラソンさんから出されました。どこでこれを発行したら安いかを調べなければなりませんね。たぶん日本より高い国はないでしょうから、ほかの国のいづれかということでどうでしょう? 編集や流通経費も含めて、各国の状況がわかればいいですね。

司会(コラソン)
 しかし、これを決めるにあたっての情報が手元にありません。コストについて、だれか情報をお持ちの方いらっしゃいますか?

パドマナバン(インド)
 出版の費用は結局のところ、物価そのものに直接関係しています。ですから消費者物価の低い国は、出版のコストについても、郵送料についても安いですね。自分の経験によっても、インドの郵便料金は日本の10分の1くらいですし、おそらくフィリピンでも同じくらいでしょう。

司会(河田)
 いろんな意見が出ていますけれども、年4回程度なら可能であろうということで、そういう方向で検討したらどうかと思います。出版に関してはひとつの国で全部印刷してそれを配布するということは現実的じゃないと思います。むしろ編集にあたる事務局が各国の情報を集めて、それを整理して編集した原稿を各国に送って、それを印刷、発行するのはそれぞれ各国でやると、その方法が現実的ではないでしょうか。(拍手)

金源植(韓国)
 いま、紙が高いとか安いとか、郵便料金がどうなるとか、いろいろ話が出ましたが、いちばん大事なことはどんなニュースをそのなかに織り込むかということだと思います。それである1カ国を決めて、そこに会員国の方から情報が集まって来るという形を考えた場合も、韓国では核のことについてはまるでつんぼ桟敷に置かれているようなかっこうです。ですから韓国の方からの要望といたしましては、やはりいちばん通信とかがスムーズに行なわれている日本の方でセンターになって、そこである印刷物をつくって配るよりはニュースを流してくれたら、それを各国でその国の状況に合うように印刷して配るような方法がいいと考えています。

佐藤大介(日本)
 いままで6回やった日本実行委員会のなかでは、先ほど前野さんもいいましたけれども、持ち回りがいいという考え方できているんです。ですからこのニュースレターの問題については、次の日本の実行委員会が8月にありますからそこでも討論したいと思います。また名古屋でも、7月3日の午前中に討議する時間もありますから、いまここで決めてしまうということでない方がいいと思うんです。

司会(河田)
 いまのご提案に賛成の方が多いようですから、そのようにいたします。今日の議論は、すべて完璧に決めるということを目的にしておりません。様々な、できるだけたくさんの意見を出していただいて、それをこの期間中に決めればいい、というふうに考えております。

司会(コラソン)
 私たちは次回会議の開催地について、そして事務局について話し合ってきました。そしてもう、共同行動の可能性に関する議論に入っています。ニュースレターは、このフォーラムに参加している各国間のコミュニケーションを維持し、共同行動をしていく際の基盤となるものですね。それではほかの共同行動の提案、どなたか出してくださいませんか?
会場発言(日本・男性)
 午前中広瀬さんから三菱の問題が提起されていましたが、それを議論したらどうでしょうか?

司会(コラソン)
 はい、三菱製品ボイコットに関して議論をしたらどうかという提案がありました。最初に提案された広瀬さん、みんながこの議論に参加できるよう、もう少し補足的な説明をお願いできますか?

いかにして三菱を追い込んでいくか
広瀬隆(日本)
 午前中に一度提案したんですが、もう一度くりかえします。その後の議論で核兵器のことで日本人の感覚と、韓国をはじめその他多くのアジアの方々との感覚がズレてるということもありましたけれども、私のなかではまったくズレておりませんので。というのは私自身は、いままで反原発の立場では目の前の電力会社を相手にやってまいりました。でも、たとえば一昨年美浜で大きなギロチン破断の事故が起こったときに、後ろにメーカーの三菱があるということを感じました。これはアジアのみなさんにも知っていただきたいのですが、数年前から、日米安全保障条約の定期会議というのがハワイなどで開かれております。で、軍事問題を討論するときに、もうかなり前から制服組、つまり軍人の後ろに顧問として三菱が出ていて、彼らが軍人を押し退けてしゃべるようになっている。それに対してアメリカの軍人サイドで驚きを感じているということも、内部からずいぶん聞いております。
 いま自衛隊が海外に出て行ったこととその裏に隠されている軍事問題、またプルトニウム政策と核武装の問題、それらはインドのパドマナバンさんがおっしゃったように、戦術と戦略の違いととらえるべきではないでしょうか。私たちは電力会社を目の前にしたときには、まさか彼らが原爆をつくりはしまいという感覚なんですが、メーカーの三菱というものを考えた場合には、別の感覚におそわれます。少なくとも、私たちの昨日の議論のなかで登場するのが、すべて三菱であったということ。青森六ヶ所村の再処理工場、高速増殖炉のもんじゅ、もちろん死の灰の輸送船の造船も三菱がやりました。それから、自衛隊のF−15主力戦闘機、これもマクダネル・ダグラスのライセンス生産ということで三菱重工がつくっています。またタイへの、それからインドネシアへの原発輸出の問題は、そもそも三菱重工という名前で私たちは知っているわけです。そして昨日、私たち日本人がいちばんショックを受けたのは、やはりマレーシアのジャヤバランさんの生々しいご報告にありました三菱化成です。
 ですから私は、三菱グループが日本の軍事予算の半分以上を受注している企業グループであるということを、もう一度みんなに認識してもらいたい。プルトニウム問題と自衛隊の海外派兵、そしてもんじゅと六ヶ所村をつないでみたときに、私たちがいままで電力会社だけを見ていた、そのことが正しいのかどうか。
 いろんな不買運動があるとは思いますけれども、この不買運動というものはやはり一定の重みを持った運動としてやっていく必要がある。たとえばいままで電力会社に対する電気料金不払いのような運動があったと思いますが、どうしてもそれは個人的ななかで留まっているわけです。この会場にいる私たち貧しい人間が不買運動やってもあんまり効果ないと思うんで、「私たちの子どもたちの生命を脅かすものが三菱である」ということをきちっと社会に伝えるという作業が不買運動以前に必要で、それによって三菱のイメージダウンということが起こってくれば、三菱グループの内部で議論が起こると思うんです。そしてそれを待ちたいと思うんです。
 再処理工場をこのままやっていくと、ビーバーエアコンが売れなくなったり、あるいは三菱銀行から口座をひき抜く人がいるかもしれません。この会場の人ではあまり効果がないでしょうけれど、大金持ちが腹を立てて口座を閉めるかも知れない。そういうところまでいったときには、ちょうど電力会社に若い人たちが就職しなくなったり、志望者が減って東京大学の原子力工学科がなくなってしまったのと同じような形で、彼らに非常に深刻な影響を与えることができる。青森県六ヶ所村の再処理工場の建設着工を、2年でも3年でも遅らせることができたら、いまの原子力経済の崩壊からいって私たちは必ず勝てるのではないかという気がしています。もちろんみなさんに押しつけるわけではないですが、みなさんがとりくまれるいろんな問題のなかで、三菱が張本人であるということはよくあります。よくお調べになって、三菱の名前とそういう事実を伝え合っていく作業を、少なくとも私たちは不買運動以前にやっていくべきだと思っています。(拍手)

会場発言(日本・男性)
 いまの広瀬さんのお話について、私自身知らないことがあって唖然としているというのが現実です。このことはちゃんと自分が納得することが必要で、そういう意味で広瀬さんには、ぜひいい本を書いていただけたらとまずお願いしたい。
 次にボイコット運動の問題ですけれども、日本では残念ながら消費者運動がいい例で非常に低調、過去にいわゆるボイコット運動で成功したのはほとんどない。どういうことかといいますと、日本人自身のボイコットの行動と思想とが結びつかないものが、非常に多いと思う。ボイコット運動というのはものすごく重要で、相手に与えるパンチは大きいんですけども、それにいたるためにはボイコットする人間が、まあ言葉は良くないけれども「確信犯」になる必要があるんですね。そうでないとできないし、続かない。
 したがってまず必要なことは、そのことに関するキャンペーンをすること。広瀬さんや、私も実際小さなミニコミ誌みたいなものを出していますから、そういうなかで伝えていく。三菱には口座持っていませんけども、今後三菱の電気製品はもう自分としては買わないようにしようとか、あるいは三菱に働きに行っている人には、そういうことなのよってことを茶飲み話でも話すとか、日常生活のなかでも自分としてはやろうと思ってます。
 けれどもここでボイコット運動をパッと決めたとこで、それが功を奏するかには多少疑問があるわけです。キャンペーンをすること、つまりオピニオンリーダーである広瀬さん、そしてここにいらっしゃる人たちはそれぞれ自分たちのネットワークをそれなりに持っていると思うんですけども、そこで事実を事実として伝えることからやっていったらどうか。ここでボイコット運動の決議をしたところで、ほとんど功を奏さないのではないか、時期尚早ではないかと私は感じているんです。

会場発言(日本・女性)
 ほとんど同じことなんですが、ボイコットすることよりも、知らない人に知らせること。関心を持っていない人、何も聞こうとしない人、こういうことに全然目を向けていない人に、なんとか知らせていくことがいちばん大事だと思います。

ボイコット運動の効果をどう考えるのか
会場発言(日本・男性)
 はっきり記憶していないんですが、最近私は何かで見たんですけども、確かカリフォルニアの方で、セコイヤの伐採に関して三菱に対する批判広告を出した運動体があると。そのことを知りたいんです。
 もうひとつ。日本ではボイコット運動がまったく成功していなかったかということですが、1955年に起きた森永のヒ素ミルク中毒事件。これが再度問題になるのは14年後の1969年ですが、このとき「14年目の訪問」と称しまして問題化したわけですが、この後、森永製品に対するボイコット運動を展開した覚えがあります。 これがボイコット運動として成功したのかどうかというのは、検討してみなければわかりませんが、少なくとも森永というものに対するイメージダウンははかれた。そのことを背景にして森永は被害者側に歩み寄ったということがありました。実際に事件を起こしたのは森永乳業という会社なんですが、森永製菓の方の製品の販売もずいぶん落ちこんだようです。
 ですから、イメージダウンを狙うという点においては、私はこれからボイコット運動をやっていってもいいんじゃないかなというふうに思います。

会場発言(日本・男性)
 これは草の根運動なんですよ。こういうことを決めましょう、決めたらやりましょう、決めなかったらやりませんという、そういう話じゃない。私はチェルノブイリ以降、三菱のものはいっさい使ってませんし、買ってませんし、人が買ってたら文句をいうようにしています。これは個人的なボイコット運動であって、それ自体は大きな効果は持ってないかも知れませんが、こだわって続けています。ですからこれはみなさん、いますぐ始められますからやってください。本当に三菱の製品って多いんですね。そういうことを気がつかなかった私がアホなんだけれども、次第に気がついていく。そういった感覚を多くの人と共有していきたいのですがどうでしょうか。

会場発言(日本・男性)
 日本消費者連盟の安倍といいます。いまボイコット運動の話が出ましたので若干もうしあげたいと思います。まず三菱に対するボイコットですが、私の得ている情報ではすでに熱帯雨林の伐採問題で、アメリカで三菱ボイコットが起こっているということです。これは三菱商事が、インドネシアやマレーシア、それからカナダの森林の材木を大量に買いつけてさばいているということから起こったものです。
 それから日本におけるボイコット運動ですが、ボイコットによってその会社に大きな経済的打撃を与えるという意味では、必ずしも効果があったわけではありません。しかしその会社に対してマイナスのイメージを与えるということでは、先ほど出ました森永のボイコットや、OPPという防かび剤の問題でOPP製品をボイコットするとか、ずいぶん前になるんですが松下のカラーテレビをボイコットするとか、かなり大きな成果を得た経験があります。
 つまりこれは企業に対するイメージの問題ですから、そのイメージを攻撃していく。三菱のやっていることを暴いていくということが、大切だと思います。そういう意味ではここで決議することも大事でしょうが、たとえば三菱系のグループがマレーシアで何をしているか、インドネシアで何をしているかということを、はっきりとみんなに知らせることがいちばん大事で、実際に力になるのではないかと考えます。

司会(河田)
 どうもありがとうございました。とりあえずここで議論を打ち切らせていただきます。ほんとにこの2日間、長い討論にみなさんご参加いただきましてありがとうございました。これを力にして今後も、先ほど出たさまざまなアイデアを実行に移していくように努力したいと思います。

  
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