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第一回 日本
東京 ノーニュークス・アジア会議

各国報告 韓国



草の根の力と
知恵を集め
反核運動の勝利を!


朴 賢緒
韓国、平和と統一のための連帯会議議長、漢陽大学教授
Park Hyun-Seo


司会(河田)
 それでは午後のセッションを始めます。この時間は各国の代表に、それぞれの国の実情あるいは問題などについてご発言いただきます。最初に韓国の代表であります朴賢緒(パク・ヒョンソ)先生をご紹介します。先生には朝から司会をお願いしていますが、ここでは韓国の代表としてご発言されます。

朴賢緒(韓国)
 韓国から来ました朴賢緒です。この地球上のすべての生命を死に追いやる核を、必ずやなくそうとお集まりの同志のみなさん! 本当にうれしく思います。小さな川が集まって大きな川をなすがごとく、アジア民衆の反核の熱気をひとつところに集め、平和の力強い水脈をつくろうと、言語と国境を越えて数千キロを駆けつけてこられたみなさんに、韓国民衆の熱い愛情と激励を送ります。

いまだ原発推進の韓国政府
 韓国では金泳三大統領の新政府になり、いわゆる政治改革と不正腐敗追放の声が高まっています。賄賂をもらった政治家が監獄に行き、金をもらって不正な方法で大学入学を許可した教授が鎖につながれました。過去の軍事独裁政権下で不正と腐敗がどれほど根深くはびこっているかを韓国民衆は実感しています。しかし、問題はこのような改革は国民が本当に望む平和と民主主義、祖国統一の成就、そして核のない社会の実現まで進みえるのかということです。特に「核兵器と原発のない、民族の生存が保証される改革」が可能なのかということです。不幸にも韓国政府は、まだまだ原発建設を推進するという政策を進めています。いや、いまやアジアの核大国を夢みる日本政府と手をとって、原発関連技術の輸出までも夢みています。

平和利用の美名のなかの核の脅威
 韓国はもちろんアジアと全世界が当面している核戦争の脅威は、東西冷戦対立構造の解体以後、多少減少しつつはあります。しかし、核の平和的利用という美名のもとで進められる核開発による脅威は、むしろ深刻なほどに増大しています。さる4月6日に起こったロシアのトムスク7核再処理工場の爆発事故は、7年前のチェルノブイリ事故の悪夢を再び呼び覚ましました。まさにそのとき、日本では六ヶ所村で核燃料再処理工場が着工されました。また旧ソ連政府が20年以上も日本海に核廃棄物を不法投棄し、海を放射能で汚染させてきたことは私たちを驚愕させました。これが93年前半に起きた、核エネルギー推進側の醜悪な現実の姿です。
 しかしより大きな問題は、このような途方もない諸事実が国際原子力機関(IAEA)を主導する核推進側によって「大したことではない。放射能汚染はほとんどない」という式に適当にかたづけられたまま、一般市民から忘れられていくことです。特に、韓国の言論は核推進側の圧力とロビー活動によって、批判的な反核の声を黙殺しており、その結果、核・放射能によるたいへんな脅威は知らされていません。数千名が集まった核廃棄場反対住民集会ですら、その地方の新聞にのみ報道されるだけで、中央の新聞にはほとんど報道されない現状です。私たちは核問題の深刻さそのものよりも、むしろ核推進側による歪曲、統制される社会世論と雰囲気によってこのように一般人たちが無感覚にされることを警戒しなければなりません。したがって反核の視点で核の脅威を掘り起こし、これを一般の国民に正しく知らせることで、問題の深刻さを教え、解決への意志を持つ人々が増えるようにすること、それが私たちがすべき最初の任務でしょう。

日本はなぜプルトニウムに執着するのか
 このような面からみるとき、私たちアジア民衆は、特に最近問題として浮上している日本政府のフランスからのプルトニウム輸送とそれにともなう核武装企図、そしていわゆるPKO活動に代表される軍国主義復活の動きを厳重に監視しなければなりません。戦争、覇権主義、核兵器開発競争は、一言でいって、私たちみなを死へと追いやる以外のなにものでもありません。今年1月5日、1.7トンのプルトニウムが東海村に搬入されました。2010年までには、80ないし120トンにおよぶプルトニウムが貯蔵されるとの観測がでています。このような事実は私たちアジアの民衆に途方もない脅威としてうつらざるをえません。
 アメリカ、ドイツ、フランスなどの諸国ですでに、危険性から、そして経済性から百害無益だと判断され、エネルギー源として放棄されたプルトニウムの用途について、どうして日本政府はこれほどまでに愛着を捨てきれずにいるのでしょうか。核兵器生産を除外しては、とうてい考えられないことです。独占的強大国アメリカの核の傘の下で経済大国に成長した日本が、いま、ソ連崩壊という脱冷戦構図のなかで、東北アジア太平洋地域での強大国をめざしています。21世紀の太平洋時代を迎えるうえで、日本がこのように核武装を通じた地域覇権の確立を狙うのは、アメリカの世界支配のための軍事戦略にも符合することで、中華人民共和国の現代化成策の成果があらわれる前に、核戦略国としての国際的地位を確保しようとするものです。

軍事大国化の道を歩みはじめた日本
 過去、日本帝国主義が韓国をはじめとしてアジア各国を侵略して起こしたすべての蛮行を、私たちは忘れることができません。50年前、日本軍によって無惨に青春を蹂躙された女性たちの大部分が苦労のすえ死んでいき、生き残った人たちもすでに白髪の老婆になりました。ところが、この方たちが日本政府に戦後補償を要求し、杖をついて日本大使館前でいまもデモをしなければならないこの状況を前に、私たちはこみあがる憤怒を抑えることができません。日本政府は過去自分たちの犯した犯罪を真に悟らなければならないにもかかわらず、韓国の挺身隊問題や徴用者問題に対するその態度を見るにつけ、失望と憤怒を禁じえません。
 ところがもっとおそるべきことには、いまや世界第2位の経済大国になった日本は、世界平和に寄与するというデマから憲法を変え、核武装、軍備増強を完遂しようとしているのです。1946年に制定された日本の現行憲法について一時、一部の日本人たちは「占領軍憲法」だとか云々しながら「民族的自尊心を棄損された」と騒いだことがありました。その一方で、大部分の日本人は、この平和憲法を「世界のどこに出しても遜色のない憲法」と自負してきました。しかし自民党政府は改憲を根強く模索し続け、ついに昨年6月、PKO協力法案を強行可決し、憲法第9条の削除や修正もないまま、自衛隊の海外派兵、軍事大国化への道を歩み始めたのです。
 カンボジアに対する陸上自衛隊の派遣は、その成果いかんによっては派遣軍の自衛権発動が予見され、郷民保護、商圏保護、当事国の要請などの名目をもって、公然とした挑発ないしは戦争介入をも予見させています。これはまさに過去、日本軍国主義が大陸侵略で使ってきた策略の再犯です。日章旗をつけるかわりに、国連の青い旗をつけ挑発し征服するというのが、あのときと違うだけです。派遣軍のなかの犠牲者は靖国神社の英霊に祀りあげられ、国民的同情をかき集め、結局、昔の栄光に満ちた時期の大日本帝国時代を再演することになるでしょう。新版の日本帝国主義の復活は、徴兵制の復活・戦争の美化、日本国家の世界的役割と指導的位置確立に走る道でありましょう。まさに国連常任理事国という国際的地位の確保は、このための前哨過程と見ることができます。

日本に常任理事国の資格はない
 植民地体制の未解決、戦後処理の未解決など、ただの一度として誠意を示すことのなかった日本に、国連安全保障理事会の常任理事国になる資格など根本的にありません。このような日本政府の再侵略企図は、わが民族にとって容認できるものではありません。このままでは南北民衆の祖国統一事業が大きく前進している状況に対して日本政府は、アメリカの援護下で、また国連決議を口実に、既存体制の固守という名分で再びわが民族問題に干渉して挑発するでしょう。すなわち、どのような新版帝国主義的な美名を使おうとも、民族問題の解決に従事するわが民族の動きに楔を打ちこもうとしていることは間違いないのです。
 日本の南北統一事業に対する干渉は、自己の軍事大国化の実現をともなっています。そして自国の軍事大国化を、まさに核武装を通じてなしとげようとしています。エネルギー供給源としての原発供給者・日本は、核エネルギーの施設、資本、技術輸出をとおして帝国主義的な「死の商人」、つまりアメリカを盟主とする多国籍軍産複合体と結合して、核兵器を生産、販売しようとしているのです。

原発と核兵器の根っこはひとつ
 ふせがねばなりません。どんなことがあっても日本軍国主義という怪物が再び数千万名を蹂躙する事態をふせがねばなりません。日本の核武装、軍事大国化は中国、北朝鮮、韓国などの軍備増強、核武装意欲を呼び起こして、アジアの緊張を高め、その結果は一般国民の犠牲と軍需産業の繁盛、戦争脅威の増大です。一方、米国、イギリス、ドイツ、フランスなど原発開発先発国家がすべて核推進政策で失敗し、脱原発の道へ進むか、自己反省をしている世界的な流れのなかで、いま最も猪突に原発建設に熱をあげているのが日本であり、これに歩調をあわせているのが韓国などアジア各国です。
 原発と核兵器はひとつの根っこを持っています。いわゆる核の平和的利用とは虚構にすぎません。西太平洋地域に多くの原発を輸出し、核産業の利潤を得、核武装と連結させようとの日本側の計画はとんでもないものです。それが不可能なことをアジア民衆の反核連帯を通じて見せてやりましょう。

日韓の民衆の友好協力関係を築こう
 言語と習慣の差を乗り越えることは決して容易なことではありません。韓国では核推進側が私たち反核運動が国際的に連帯することを非常に嫌い、妨害します。あきれるのは、日本人に対する韓国人の反日感情を悪用して、反核運動をする人々を公然と非難したり、韓国の原発建設に反対する署名用紙を持ってきた日本の反核活動家たちを「内政干渉するな」と空港で追い返すことです。しかし、私たちは日本の良心的な人々、日本の核武装、軍国主義の復活に反対する人々、そして原発によって被害を受けた人々、すなわち間違った政府に対抗する人々と連帯し闘おうと思います。
 過去、韓日両民族間には、歪められた傲慢な政府を持ったために、互いに望まなかった憎悪と確執の時代がありました。しかし日本帝国の膨張と戦争の時代にも善良な多くの日本人がおり、彼らは与えられた限界のなかで、間違った歴史への抵抗を実践してきました。私たちは、良心的で友好的で進歩的な日本国民が数多くいることを確認しています。自国の歴史について真の誇りを持とうとするならば、また隣国との歪曲された関係によりあらわれる民族間の葛藤を真に解消し、相互友好的な協力関係を樹立して共存共栄をはかろうとするなら、良心的で進歩的な日本国民は沈黙を守ってはならないと思います。

「アジア平和共同体」実現への第一歩に
 みなさん! 私たちに意味のない欲望などありましょうか。私たちは人を支配しようとする気持ちも、人を犠牲にして自分だけ飽食しようという欲望もない、平凡な草の根たちではないでしょうか? これほど善良で素朴な人々であるからこそ、草の根、民衆の力は決して弱くはないのです。韓国の安眠島反核闘争の勝利を見てください! いまこのときにも不義と立ち向かい、平和と民主主義をとり戻そうと闘う多くのアジアの草の根たちが、巨大な力で生き、呼吸しています。私たちは必ず勝利できます。アジアの真の平和はまさに、私たち草の根たちの自覚と団結、そして連帯を通じて可能であり、また真の希望はここにのみあるのです。
 アジアフォーラムは、このような希望の大きな進展を意味します。核推進勢力は私たちが堅く手をとり合うことを最も恐れています。一歩一歩小さなことから、しかし完全な勝利のその日まで、揺らぐことなく力強く、私たちの「反核アジア連帯」の進軍は続けられなければなりません。そして全世界で反核フォーラムが開催され、反核の21世紀を開く脱ニュークリア社会へと流れを変え、核推進勢力をきれいに一掃することができる希望の90年代をつくっていきましょう。
 自主と平和と互恵平等の立場で、アジア各国が、そしてひとりひとりの草の根民衆が喜んで出会い、希望のなかで互いに協力できる「アジア平和共同体」の夢を実現するために、いまアジアフォーラムで堅い基礎を築くことができるように努力しましょう。このフォーラムを準備するために苦労された日本側の同志のみなさん! そして、各国からお集まりの同志のみなさん!
 本当にうれしく思います。ありがとうございました。

  
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