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第一回 日本
大阪 タイからの報告

急速な工業化の波が
住民の生活を破壊する


ナンティア・タングウィスティジッ


 お集まりのみなさま、こんにちは。タイから来ましたナンティアです。タイでは、おもに環境保護問題、平和問題などをあつかうパートタイムのジャーナリストをしています。そしてそのかたわら、ボランティアで環境破壊に反対する民衆運動にもかかわっています。

タイの反核・反原発運動
 現在タイには2万キロワットの電力を生産できる原子炉がありますが、これは空港が近くにあることも考慮されて稼働していません。
しかしタイ政府は、2006年から2014年のあいだに6基の原発を建設しようと考えています。いま考えられているのは5万から10万キロワットの原発を日本の協力で建設しようとするもので、これには日立が深くかかわっています。
 このタイ政府の計画にあわせて、昨年、日本原子力研究所はタイの原子力発電所建設の事前調査に数人の代表団を送りました。日本がどのようなアドバイスをし、どのような指示や支援を与えるのかが不気味に思えます。
私たちはこの、日本とタイアップした政府のプロジェクトに対して、まず私たち民衆自体がこれにもっと深く関与していきたい、しなければならない、だから私たちの意見を聞きなさい、と要請しています。私たちはまず情報公開を政府に迫っていて、これがいま原発反対運動のいちばん大きな課題です。稼働している原発がなくても、反原発・反核運動は当然あるのです。
 その運動は核問題のみにとどまりません。たとえば水力発電は、タイでは石油に次ぐ2番目に主要なエネルギー源となっていて、現在39の水力発電所がありますが、政府はあと36の水力発電所建設を計画しております。しかしダム建設というのは、森林を破壊したり、そこに住んでいる人たちの生活の基盤を奪うことにもなります。ですから私たちは、水力発電所建設の計画にも反対しています。
 すでに水力発電所建設のために、何万人もの人々が強制的に移住させられました。このダム建設を引き金にした社会的悪影響や、社会問題というものは非常に深刻です。水力発電による社会的被害というものを政府に訴えてきたのも私たち民衆でしたし、政府もその被害をこの間に見てきたはずです。
 そうした教訓から政府は、水力発電をやめて原子力発電に切り替えることを考えるにいたりました。しかし、水力発電所の建設をやめることが、すなわち原子力発電を選択することにはなりません。私たちはそのいずれも正しい選択ではないと考えています。いま以上の電力をいかにつくるかという観点から考えるのではなくて、どのようにエネルギーを節約するかを考えること、それがいちばん現実的でまた実行可能な方法です。

絶対にタイに1号基をつくらせない
 現在タイ政府は、タイを新興工業国として発展させようとやっきになっています。その政策に対しても私たちは疑問を投げかけています。
 急速な工業化というものは、たくさんの電力量を要求します。ですから工業化が進むにつれて、様々な方式の発電所ができるわけです。これは結局、工業そして一部のビジネス界の人々の利益のためだけにつくられるもので、実際にそこに住んでいる私たちタイの民衆は、その建設から何の恩恵も受けません。
 こういう事情ですので、ぜひ日本のみなさまや日本政府にも、タイ政府の進める経済政策、エネルギー政策に反対の立場をとっていただきたいと思います。
 私が日本に来て1週間ほどたちますが、この間に福島、女川など数十年の長きに渡って反原発運動をやってこられたところを訪問して、その地方の人々と交流してきました。
 原発先進国の日本で様々な人と会ってきて痛切に感じたのは、絶対に第1号基をタイにつくらせてはならないということです。ひとつ原発ができたら、当然あとを追うように2基目、3基目、とつくられます。もし、近いうちにタイで本当に原発の建設が進められるようになりましたら、私たちは反対の声を大きくしなければなりません。
 そのためにも、現在までに様々な反原発・反核の運動をくり広げてこられたインドの人、フィリピンの人、韓国、台湾、日本それぞれの友人から、その経験をぜひ学びたいと思います。そして、大きな支援をいただきたいと思います。どうもありがとうございました。

  
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