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第一回 日本
大阪 東京会議の報告

核拡散・輸送・原発の
政策転換を要求しよう


コラソン・ファブロス(フィリピン)


 今回のフォーラムに海外から来日したのは29人。各地交流を終えて24人が大阪に到着。壇上で、各国参加者を紹介したあと、東京会議の司会団のひとりだったフィリピンのコラソン・ファブロスさんが、会議を総括的に報告した。

 みなさんこんにちは。私は、東京会議でどういったことが話し合われたのかを、みなさんに報告したいと思います。

各国の現状報告
 韓国ではまず、新しい政府になって政治改革というものが進められています。しかし、旧来からの核に対する政府の方針は、そのまま引き継がれている状態です。また同時に韓国の代表は、日本のプルトニウム大量輸送など、日本の現在の核政策に対して大きな懸念を表明しました。この間、日本はPKOと称して自衛隊を海外に派兵していますが、軍事化が再び始まるのではないかという懸念も示しました。当然ながらこのPKO部隊は、日本の平和憲法に違反して送っているわけですから。
 台湾の報告ですけれども、台湾では現在6基の原発が稼働して国内の電力消費の40%をまかなっています。国民党政府は、2000年にはそれを60%にするというエネルギー計画を持っています。そのため第4原発の建設が計画されています。これらに対して台湾の反核運動の人たちは、運動をくり広げてきました。またヤミ族の人々が住んでいる蘭嶼島では、11年前に核の廃棄物を捨てる処理場や施設がつくられて以来、この島の人たちの闘いが続いています。
 フィリピンは最初の原発が1975年に建設されましたが、これはまだ1度も稼働しておりません。その大きな理由というのは、原発を稼働させることで生じる住民への公衆衛生上の大きな危害、その心配があるからです。フィリピンにはその建設が終了する前の1970年から、原発反対運動がありました。この原発建設にあたってウェスチングハウス社との癒着など様々な問題もあったうえ、原発を稼働させるだけの十分な財政力を、いまの政府は持っていません。1993年5月、フィリピンのラモス政府はこのバターン原発を、結局は原発として利用しない、原子力発電ではないほかのものに転用する方針を決定しました。しかし、バターンを原発として利用しないと決めましたが、ほかの場所に新たな原発をつくるという計画も、同時に発表しました。
 次にマレーシアです。マレーシアの核問題でいちばん深刻なのは、首都クアラルンプールから150キロメートル離れたところで放射性物質が廃棄されて、それによる放射能被害が起こっていることです。この150キロメートル離れたブキメラ村に、ARE社が設立されました。これは日本の三菱化成と現地資本の合弁会社です。この会社でモナザイトを加工して、レアアースをつくるわけですが、それによって出てくる危険な放射性廃棄物は、ほとんど防護措置も処理施設もないままに捨てられ続けています。当然ながらこれは人々の健康にひどく危険なことです。
 タイには現在、原発はまったくありませんけれども、政府は将来、6基の原発を建設するというふうに考えています。これだけの原発をつくって恩恵を被るのは当然エリートたちです。しかし原発をつくるにあたって、また、原発ができて大きな代償を払わされるのは、恩恵も被らない地元の人々です。
 インドではいま9基の原発が稼働しています。インド政府は、政府予算で設けている研究費、研究開発費の半分近くを核のために費やしています。そのほかにも、開発、研究すべき分野というのはたくさんあるのに、たとえば公衆衛生だとか、エネルギーの再利用法などに本来は費やされるべきなんですが、それらの分野はほとんど無視されて核に莫大な費用が投じられています。そのインドでも、この過去10年で、政府の方針に反対する非常に大きな、注目すべき運動が起こってきました。
 続いてインドネシアです。現在政府は、2000年までに国内エネルギーの60%を原発から得ようと計画しています。インドネシアのテクノクラートたちが、現在の政府の主要部分を握っているわけですが、彼らは日本指向が強く、アメリカで教育を受けてきた人々です。その彼らインドネシア政府閣僚は、現在中央ジャワに原発建設計画を持っていて、基盤整備はもう進められています。ここで原発が稼働したら、実質的に毎年60.5トンの核廃棄物ができることになります。インドネシアの反核運動は、日米帝国主義に対する民主化運動と一体をなしてとりくまれてきました。
 最後に日本ですが、現在43基の原発が稼働中で、3460万キロワットの電力を産み出しています。しかし、日本の原発にも様々な問題が起きています。ひとつには、運転開始からかなり年月が経っているので、維持費用が莫大にかかるということ。原発労働者も不足しています。その原発で働いている人たち、それと周辺の地域にも実際に被曝がもたらされているということです。日本の反原発運動は非常に活発です。大都市の反原発運動とそれぞれの地域、原発建設予定地の人々もひっくるめて、それぞれの地元の人たちと協力して、地域のため、また日本のため、将来の安全を考えて運動がくり広げられています。

日本政府、各国政府に要求すること
 東京会議の最終日、日本のプルトニウム政策に対しての厳しい批判がありました。
 原子力資料情報室の高木さんが、このことについて基調報告されました。日本のプルトニウム政策はまさに核拡散、つまり核を世界のあちこちに広げていくことにつながります。これは私たちアジア人、そしてアジアのみならず世界の人々にとっても非常に脅威的な動きです。
 ノーニュークス・アジアフォーラムの東京会議は、次のような要求を掲げて2日間の幕を閉じました。
 ひとつめは、六ヶ所村の核再処理工場の建設をやめること、高速増殖炉もんじゅを運転しないこと、そして核廃棄物とプルトニウムに対する日本の方針、政策をただちに変えること。それらが日本政府に対する要求です。
 ふたつめは、核不拡散条約に本来の役割をとりもどすこと。日本はもちろんのこと、アジアの各国政府に、現在持っている核利用推進の政策をすぐにとりやめるよう要求しました。
 東京会議では、韓国政府、台湾政府あても含めて、核の輸送反対、原発反対、それから核拡散反対の要請状を各政府に出すことを決めました。最後に、ノーニュークス・アジアフォーラムを1994年にも開催しよう、そして次の主催国は韓国か台湾にしようということを決議しました。以上で報告を終ります。どうもありがとうございました。

  
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