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台湾、インドネシアへの原発輸出に抗議し、
日立・東芝・三菱重工製品のボイコットを!
〜ボイコット運動の傾向と対策〜

ストップ原発輸出!日立・東芝・三菱重工国際ボイコット委員会
 安部竜一郎


  ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパンの皆様。ご賛同、ご協力ありがとうございました。突然のお願いにもかかわらず、おかげさまをもちまして3月1日・2日のシンポジウムまでに、36個人、26団体の賛同を得て、ボイコット共同声明を発表することができました。その後も続々と賛同の申込書が送られてきており、シンポジウムに間に合わなかったため、全員のお名前を載せられなかったことが残念です。

  また3月1日・2日は、皆様のご協力で各地でボイコット共同行動が展開することができました。なかでも2日の昼間、東京の電気街秋葉原で行った街頭情宣は、台湾現地塩寮の訪日団23名が参加したということもあり、大変インパクトのあるものだったと思います。

 この行動はわずか30分程度の短いものでしたが、塩寮の反核自救会の方々が用意された「反對核四(第4原発反対)」ののぼりがいくつも秋葉原の空に舞い、黄色いハチマキとあいまって通行人の目をひく鮮やかさでした。用意した500枚のチラシもほとんどはけてしまい、同時に集めたカワンサインに進んで署名してくれる若いカップルもいました。

 惜しむらくは、Asahi Evening News を除いて、この行動がほんとど報道されなかったことです。このマスコミの冷淡さは後で、特に日本でボイコット運動を進める上で必ずといっていいほどぶつかる壁だと言えます。

 実はこの日、Asahi Evening News の他に、朝日新聞、毎日新聞、AFP通信、AP通信の各社が取材にきていました。AFP、APは配信したのかもしれませんが、朝日、毎日は完全にボツ。そのかわり翌日の毎日には東芝の見開き2頁の広告が打たれていました(朝日は不明)。まさか東芝がこちらの動きを察知して、見開き広告をうったとも思えませんが、いずれにせよ日立も東芝も、新聞、テレビにとっては巨額の宣伝費を払ってくれる大事なお客様。広告主の製品を「ボイコットしよう」なんて記事は載せずらいことはいわずもがなです(余談ですが、日消連で私が担当している合成洗剤問題でも、花王やP&Gなどの合成洗剤メーカが大スポンサーであるため、マスコミは全くといっていいほど合成洗剤による被害を報道しません)。
 そこで、このような状況の中で、とうやってボイコット運動を広めていったらよいのか、私の考え方を以下に述べます。

  1. 最終的な目標は、日立・東芝・三菱重工の売上高を減少させ、経済的なプレッシャーを与えることで原発輸出を諦めさせることにおく。ただし当面の目標は、3社による原発輸出のおかしさを訴えることによって、3社のイメージダウンを図る。
    (説明)
     最終的目標については誰しも異存はないと思います。ただ日本の消費者運動の土壌で(欧米に比べ、消費者団体の力も意識も低い)、3社を数字で見えるほどの減益までもっていくのは並大抵のことではありません。減益にこだわりすぎると、「やってもどうせできっこない」という不毛感にとらわれかねず、それよりもレベルを1段下げた獲得目標を設定したほうが賢明と思われます。
      ここで日本の企業は(欧米企業でも同じですが)、企業のイメージ創りに細心の注意を払うことに注目すべきです。企業の広告のかなりの部分は、実は製品そのものよりも企業イメージの広告に割かれています。日本の消費者は「一流企業の製品なら安心」という意識が強いので、企業は巨額の広告費を払ってでも、テレビ番組の提供をしたり、全国紙に全面広告を打ったりするのです。
      関東地方の方は、夕方流れる東電のテレビCMを思い浮べてください。決して「原発は安全だ」などとはやらず、アナグマのアニメか何かで、ほんわか・あったかムードを演出しているでしょう。[恋は遠い日の花火ではない]とかいうサントリーのコマーシャルもこの典型です。
      またこのコマーシャルによるイメージ作りを悪用したのが、今話題のココ山岡です。ちょっと考えれば誰でもおかしいとわかる詐欺商法に、あれだけたくさんの消費者が引っ掛かってしまったわけがここにあります。
     逆に考えれば、企業は自分のイメージに傷がつくのを極端に嫌います。政府に偽りの"悪"イメージを植え付けられ、分割民営化されてしまった国鉄を思い起こしてください。また洗剤や健康食品、鍋釜などのマルチまがい商法で知られる日本アムウェイは、数年前国会で「悪徳商法」のレッテルを貼られてしまい、ここのところ減収続きとなっています。そこでアムウェイは、起死回生をかけ、20億円を出資して長野オリンピックのスポンサーとなりました。ダイエー系のエックスワンや、アメリカから上陸したニュースキンなどの後輩マルチを蹴落とすため、「アムウェイは一流」というイメージ作りに、企業生命をかけたわけです。
      そんな作られたイメージにコロっと騙されるなんて、日本の消費者はほんまにアホやなぁ、と泣けてしまいますが、逆に考えれば、ここにボイコット運動の強みがあるとも言えます。つまり消費者のボイコット運動の対象になるということは、かなり強いマイナスイメージを対象企業に与えるわけで、企業活動に何かブラックな部分があるのではないか、という印象を消費者に与えることになります。それもダーティな原発を強引に海外に売りつけようとしているという評判であれば、口には出さずとも、眉をひそめる消費者は少なくないはずです。
      つまり、日立・東芝・三菱重工の3社が、これまでいかに日本で危険な原発を造り続けてきたか、労働者を弾圧してきたか、また現地の反対にもかかわらず、台湾政府と結託して原発輸出を目論んでいるかなどを、丁寧に広めていくことが大事だと言えます。そして3社は「ボイコットの対象となるほど、やつらは悪い企業なんだ」という世論を作り出せれば、もうこっちの勝ちです。こうした"悪いウワサ"はすぐには効力をしめさないけど、ボデイブローのようにじわじわと効いてくるはずです。そうです。昔漫画で読んだ「三年殺し」というやつです。
     遠回りのようにも思えるでしょうが、マスコミにのらなければ、ミニコミ、口コミで「一流企業には違いないが、悪徳企業というレッテルこそ彼らにふさわしい」という事実をどう伝えていくか。これしかありません。
      付け加えるなら、一昨年フランスの核実験強行に反対してやったフランス製品のボイコット運動では、ここの壁をある程度クリアすることができました。日本人なら大抵の者は、核実験の恐ろしさをある程度理解できるはずですし、植民地で実験を繰り返すというフランス政府の傲慢さにもむかっ腹がたったことでしょう。こうしてフランス政府に対する怒りは十分に定着していましたので、むしろそれをどうやって製品ボイコットまで動機付けるかというのが最大の課題だったわけです。

  2. カワンサインを大いに利用する
    (説明)
     この署名は行政ではなく、企業対象の署名です。当然、署名を集めたからといって3社の売上高が減るわけでも、3社が「原発輸出を諦めます」と頭を下げるわけでもありません。この意味では、何万何十万名分集めても3社にとっては「屁の河童」かも知れません。
      しかし先ほど述べた"悪いウワサ"を広めるにはこれほど格好のものはありません。
      理屈で何かを納得するためには相当頭を使わないといけませんが、消費者の中には「原発輸出=悪」ということを頭で納得するだけの時間的、精神的余裕がない人もいます。ましてや人にそれを説得しようとすれば、生半可な理解では、逆に言い返されてしまう心配だってあります。
     そんな時署名用紙は有効でしょう。「3社の悪徳」を頭でわかることはできなくとも、目の前に署名用紙が突出されると、それは目に見えるかたちで迫ってきます。「よく分からんけど、何やら日立と東芝、三菱重工は悪い原発をつくろうとたくらんでるらしい」という程度でも、ウワサはウワサです。また仮に義理でカワンサインに署名した人でも、量販店の家電売場の前に立ったとき、3社製品はなるべく避けようという心理が働くかも知れません。それに何年かにいっぺん買うか買わないかという家電製品(私の場合)をボイコットするより、署名にサインしたほうが「ボイコット参加している」という意識が高まるという効用も見逃せません。
      そこでこの署名を集める際は、3社の悪徳ぶりを丁寧に説明してあげてください。そして日本は戦時中、台湾の人にどういう仕打をしたのか、そして今、何をしようとしているのか、なるべく時間をかけて話してください。できればコーヒーの1杯でもおごって相手に貸しをつくっておいて、相手の「不正義への怒り」を呼び覚ましてください。
     だけどあまり強く押し付けるのもよくないでしょう。いくら署名をもらっても、その相手がその気にならなければ、3社製品の不買は期待できないからです。

  3. 各地域で、あるいは気の合った者どうしで実行委員会を作り、それぞれが工夫をこらし、勝手に、しかし自らの責任において行動する。但し非暴力。
    (説明)
      本来、ボイコット運動は組織的な運動です。ですから上部の決定を下部構成員まで徹底することが勝利を導き出します。かつての米国の公民権運動や、南アメリカの反アパルトヘイト運動では、既成の強力な政治組織を通して、バスの乗車拒否や特定商店の不買の運動が行われました。
      しかし残念ながら、ここは日本です。反原発でボイコット運動をやろうと思ったら、頼りになる政治組織も、労働組合も、消費者団体もありません。私の勤めている日本消費者連盟は反原発ですが、いかにせん、会員が5,000名しかいない。せめて欧米並みにあと2けた多ければ、同じやり方でいけるのに…。
      そこで日本の運動の弱さをカヴァーするためには、組織的な統一性をとらず、それぞれが、あちこちで、思い思いに、反乱ののろしをあげるしかないと思います。日本の土壌の中で組織的統一を図ろうとすると、かえって意見の違いばかりが目についてしまい、その調整に思わぬエネルギーを使うことになってしまいます。そんなことより、思いは同じなら、バラバラにやったっていいなじゃないか。そっちの方が参加してくれる人数も増えるんではないか。ま、そういうことです。
      もうひとつ大事なことは、ボイコットの戦略は、何も一つではないということです。
      例えば、私たちボイコット委員会は、ボイコット対象を日立製作所と東芝と三菱重工とその子会社にしぼりました。このため日立家電と東芝の家電はボイコット対象に含めましたが、三菱電機は除きました。三菱電機は三菱グループには入っていますが、三菱重工とは資本関係はないからです(ちなみに三菱鉛筆は三菱グループとは何の関係もありません)。
      こう決めたのは、ボイコット対象をある程度しぼったほうが広げやすいだろうという戦略的判断からでして、別に論理的意味があったわけではありません。現に三菱重工ではビーバーエアコン以外に一般消費者対象の製品がないから、対象をグループ全社製品に拡大すべきだという意見が寄せられています。
      私は、その意見はそれで道理があると思うし、そう思った人はその方向でボイコットを広めていけば良いと思います。また「日立は芙蓉グループだから、富士銀行から預金を引出す運動をしよう」と呼びかけるグループがあったっていいと思います。
      従って私たちボイコット委員会は、ボイコットニュースやホームページで運動に必要な基本的な情報は流しますが、一切の指令は出しません。各地域の組合や生協にも、声をかけられるところにはどんどん働きかけてください。別にこちらの委員会の許可は不要です。皆さんがそれぞれの地域で、それぞれのスタイルでボイコットに取り組んでいただくのがベストだと思います。そして「こんなことやっているよ」と教えていただければ、ボイコットニュース等でどんどん流します。
      もし運動全体の意志統一をするとしたら、私たちの運動が相手を交渉の場に引き摺り出せるほど力をつけてからでも遅くはないはずです。
    ただ署名だけは、カワンサイン一本にしぼらせてください。これは何種類も署名が出回ったのではわけがわからなくなりますし、何より署名の数が分散していまいますから。この点だけは、先に始めたものの優先権と認めてやってください。非暴力はいわずもがな。


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