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「日本の原発輸出を考える」
3.1大阪シンポジウム


<台湾からの発言>

日台民衆がともに手を携えて

施信民:(台湾環境保護連盟)

  すでにご存知のように、台湾では今、第4原発の建設計画が進んでいます。これは日本の東芝・日立が具体的に関与しています。タービン部分に関しては三菱重工が担当することになっています。また日本の柏崎刈羽原発(ABWR)の技術を応用するといわれています。もしこれが実行されれば、日本の海外へ向けての初の原発輸出になります。
  これについては、国際法上の問題が存在します。国際法の規定によれば、2国間の原発輸出は、お互いの環境保全がクリアされなければできないことになっています。台湾は日本とも国交がありませんし、核不拡散条約にも加盟していませんので、2国間協定も当然ないわけです。
  国会においても、こういったことを盾に、日本との契約は無効であるとの訴えを起こしています。しかし、だからといって国民党がこれを無効と認定することはないでしょう。そのため台湾の人々は、この第4原発反対が、台湾の住民と日本の人々との共闘によってこそ達成されると考えています。
  もしこの第4原発に日本が進出するということになったら、アジアへの核拡散という悪い結果が生まれるであろう思います。
 原発をつくるには莫大なお金がかかります。アジアにおいては、そのために本来人民の福利のために使うべきお金が原発に向けられてしまっています。アジアの民衆にとってみれば、原発は単に健康被害・環境破壊・生態系の破壊をもたらすだけではなく、人民の生活福利をおとしめる意味も持っているのです。

  台湾では非常に大きな反原発の声があがっています。みなさんの中にも、第3回NNAFなどで台湾に行かれて、反原発運動のデモに参加した方がおられると思います。そういった方が見てこられたように、万を越える人たちがデモに参加するほどに反原発の動きは大きいのです。かつて台湾では第4原発の是非を問う3回にわたる住民投票が行われました。1回目は予定地の貢寮(塩寮)で行われました。その時は96%の反対票がありました。2回目は台北県で行われた投票で、88%が反対しました。そして台北市で行われた投票でも54%の反対がありました。
  昨年5月、日本の国会に当たる立法院において、原発をつくらないという決議が76対42でなされました。その後国民党がどうしても第4原発を造るんだということで、拒否権を発動してこの決議を覆したわけです。こういったことがありましたが、台湾民衆が引き続き反原発の闘いを続けていくであろうと固く信じています。
  今年に入って新たに私たちは原発建設を禁じる法案をつくろうとしています。今年5月に憲法の改正が計画されていますが、その機会を利用して、憲法の中に原発を禁止し、核拡散を防ぐという条項を入れる運動を進めようと思っています。また、住民投票の結果を法的に保障していくための条項も憲法に盛り込もうとしています。それと同時に日本の友人の方たち共に、日立・東芝・三菱重工に対するボイコットを提唱しています。

 歴史的に見ると、台湾と日本は非常に複雑な、特殊な関係にあると思います。皆さんすでにご承知だとは思いますけども、1895年当時の中国政府は日本に台湾を割譲しました。そして台湾は日本の植民地統治の中で50年を過ごした。まさにですね、当時、最初に日本軍が台湾に上陸した地が貢寮というところで、まさに第4原発の予定地になっているところでなのす。日本軍が上陸したとき、当然台湾の民衆の激しい抵抗運動が巻き起こりました。私は日本の企業が原発を台湾に輸出することで、かつてのこういった抗争が再び起こってもらいたくないのです。日本と台湾の友好はここ50年深まっています。
  第2次世界大戦に日本が敗北して、50年の植民地支配が終わって台湾から撤退すると、それに替わって大陸から国民党政権が台湾を統治することになりました。国民党支配の中で、台湾はまさに40年近い戒厳体制の中でその日々を送ってきたわけです。国民党が台湾に上陸して、接収してまもなく1947年に、二二八事件という重大な事件が起こりました。まさに今年はその五〇周年に当たります。私は日本に来る前に、台湾でその五〇周年の集会に参加してきました。国民党による強権支配の中で、不自由な苦しい日々を送っています。
  こういう国民党の強権的抑圧があったために、たとえば私の両親もそうですけども、逆に日本の支配を懐かしむといういうふうなことまで起こっています。私たち比較的若い年代は、日本の政治文化社会の発展した姿を見て、学ぶべきものがある、模範とするべきものがあると考えます。そのために、1972年日本と台湾は断交しましたが、一般的に台湾民衆は日本を好意的に見ています。国民党は台湾民衆の日本に対するそういう好感を利用して、第4原発の建設を進めようとしています。国民党はよく私たちにこういいます。「原発は安全だ」と、「見てみなさい、日本はかつて原爆を落とされた国だけども、原発をたくさんつくって何の問題もない」と。国民党はまたこう言っています。「日本はエネルギー源がない、そのために原発をたくさん建てているんだ。そして台湾でもエネルギー源がない、だから日本に学んで、同じように原発をつくって発展すべきだ」と。もちろん台湾の住民はすでに、こういった国民党の宣伝が作為的なものであることを見抜いていますが、それでも日本の原発政策というものが台湾に非常に大きな影響を与えるのです。
  そのため私は日本での反原発運動・反原発の感情を台湾やアジアの各国により知らしめていくという必要があると思っています。アジアの各国も、たとえばインドネシアやフィリピンも日本の方式をまねて原発を広めていこうとすると考えられます。そのため原発をアジア各地に広めないためには、日本の反原発運動、反原発運動の組織の責任というのは非常に大きいと考えています。
  また台湾の第4原発の可否というものが日本の原発輸出にとって非常に重要な位置を占めていると思います。先ほども言いましたように、これは日本初の原発の海外輸出になるわけです。私たちがそれを阻止しなければ、今後こういった傾向というのが大々的に広まっていくでしょう。

 今日台湾の住民は原発が自分の生活に不適当なものであるというふうに感じています。先ほど皆さんもスライドでごらんになったように、すでに台湾では放射能被害がさまざまな形で出ています。汚染された鉄鋼による汚染マンション・汚染道路・汚染農地、そういうものが多数発見されています。
 さらに問題になっているのが核廃棄物の問題です。スライドでご覧になったように、台湾では今ランユ島という小さな島に貯蔵していますが、すでにそこは満タンになっており、増え続ける核廃棄物をどこに貯蔵するかが大きな課題となっています。台湾電力はその廃棄物の最終保存場所をずっと探しています。未だにその最終保存場所は決定されていません。そしかし台湾電力が探している最終候補地というのは、すべて台湾の少数民族が住む地方なのです。それは言うまでもなく、台湾少数民族の生存権にとって大きな脅威となるものです。その事については後ほどそちらにおられる高先生からお話をいただきたいと思います。彼のふるさとはまさに最終保存地になるかもしれないという場所です。
 また、最近問題になっていますが、台湾電力が核廃棄物を北朝鮮に輸出するという密約があったのはご承知だと思います。これも全く不道徳なやり方です。北朝鮮の民衆がそれを望んでいるわけではない。お金がないからそういうのを受け入れざるを入れない、それを利用したやり方だと思います。
台湾の住民は、原発が自分たちの生活になじまないものであると自覚しています。しかし国民党政府の方では核産業からの圧力もあって、政治的な力・経済的な力をもって、どうしても第4原発を建てようと動いています。だから私たちはそういう核産業に対して、逆に大きな圧力をかけていかなければならない。たとえば、今しがた言ったボイコット運動のように、圧力をかけていく必要があると思います。他方私たちは台湾で立法過程、要するに法律をもって、第4原発を阻止するという道も考慮しなければなりません。
私は声を大にして言いたいと思います。日本の民衆と台湾の民衆がともに手を携えて、第4原発を建てようとする核産業に対して大きな闘いを展開し、その大きな力をもって原発輸出を止めていく運動を繰り広げていきたいと思います。


質疑応答

会場:
  台湾から北朝鮮への廃棄物の輸送に関して運動側とそれに関わっていない一般の国民がどういう感情を持っているか教えて下さい。

施信民:
  台湾から北朝鮮へ核廃棄物を輸出するという密約があることが最近分かったわけですけども、反原発運動をやっている人たちはもちろん反対しています。しかし一般の大衆レベルで言いますと、狭い「本土主義」の影響があり、それほど強い反発があるわけではありません。しかし時間とともに私たちの説明が広まることによって、一般民衆の中でそういう反対の声が大きくなるだろうと思っています。
 こういうことがありました。最近、韓国の反核団体が台湾に来て廃棄物の輸出に対する抗議行動を起こしました。それに対して台湾の中でかつて大陸から渡ってきた人たち、いわゆる「愛国主義者」と称する人たちが、「韓国の反核団体は台湾に来るべきではない」という抗議をして、なおかつ私たち反核運動の人に対して、「それは台湾を売る行為だ」というふうな攻撃をしてきました。当然私たちは、台湾で出来た核廃棄物は台湾で処理するべきだと考えています。本来ならアメリカから持ち込んだものですから、アメリカに持ち帰るのが当然だと思いますが、現実的な問題として私たちは台湾で核政策をやめさせ、核廃棄物が生まれない状態を目指しています。すでにある核廃棄物に関しては、少数民族の住むところに押しやるということを続けていますので、私は当然それにも反対しています。私たちはより科学的、合理的、民主的な方法によってそれの最終的な処理方法を考えるべきだと主張しています。

会場:
  私たちはカワンサインというのを集めようとしています。これは、日本から原発を輸出している企業、日立・東芝・三菱重工の製品を買わないというボイコット宣言のようなものです。台湾ではどのようにボイコット運動をするのでしょうか。

施信民:
  私たちは2年前も、フランスの核実験の時に、フランス製品ボイコット運動をやりました。今回は言ってみれば2度目になるわけです。台湾でも日本の皆さんと相談の上でこのボイコット運動を始めたのです。どの程度成果を生むのか今のところ全く分かりませんけども、頑張ってやっていくしかないと思っています。フランス製品のボイコット署名は10万人の署名を集めています。実は今日(3月1日)台湾においても最も人通りの多い台北駅で、ボイコットの賛同署名活動を行っています。これは毎週週末に行っていきたいと思ってます。それと百貨店とか、電器屋とか、機械、自動車、そういった会社に対してもボイコット要請行動を行うつもりです。そして特に地方政府の政治家を動かして、企業のトップに直接ボイコット要請を行っていきたいと考えています。

 


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