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台湾・韓国からの声


 

核廃棄物の輸出を許さない!
台湾が他国の敵とならないために

施信民 (台湾環境保護連盟・台湾大学教授)


  台湾電力が放射性廃棄物の北朝鮮への輸出を決めた問題は、韓国政府および人民の抗議のもと、国内外で非常に注目を浴びている。台湾政府はこの取り引きが「合法的な商業行為」であることを強調している。台湾の一部の世論でも、この行為が台湾の核廃棄物の問題を解決するものであるとしてこれを支持し、韓国の反対を不当なものだとしている。あるいは、環境保護団体が核廃棄物の輸出に反対することは、韓国の勢いを助長するだけで台湾の利益に背くものであるという意見もある。環境保護団体の一構成員として、私は、我々がなぜ台湾の北朝鮮への核廃棄物輸出に反対するのか、その理由を説明する必要があると考える。

  私たちは、核廃棄物を北朝鮮に永久貯蔵することに反対する。この行為は、北朝鮮の環境と人々の生存権益を著しく傷つけるものであり、たとえその国の政府が願うとしても、人民にとっては脅迫された末に犠牲になるのと同然である。現在、世界各国の政治・経済が不均等である状況の下、往々にして、有害な廃棄物の「協力的」処理は強国の弱国に対する「公害輸出」になりうる。この問題も、北朝鮮に「公害輸出」することを「合法的な商業行為」と言い逃れているに過ぎない。

  台湾もかつて、工業先進国から汚染のひどい工業を請け負い、莫大な社会的・環境的コストを払ってきた。今日、台湾は豊かになった。しかし、私たちにはこれを省みる能力があるはずである。豊かになったからといって工業先進国の真似をして「公害輸出」をして、発展途上の国へ毒物を輸出していいということにはならない。基本的な環境論理を貫くべきである。

  「公害輸出」の問題は、早くから環境団体の間で国際的な問題になっており、特に核廃棄物の輸出問題は注目されていた。台湾電力は2億2760万ドルという巨費を投じて核廃棄物を売りつけ、「公害輸出」の汚名をきることになった。今回の問題は、国際的にも初めての例であって、注目をあびている。もしこれが実行されれば、台湾は開発途上国に核のごみを捨てる初めてのケースとなり、各国の環境保護団体からの抗議はまぬがれないであろう。

  台湾は野生動物保護の問題で、国際的に環境保護団体の叱責を受け、アメリカからは経済制裁を受けた。また台湾の国際・外交的状況はもともと困難で、もしまた核廃棄物輸出の汚名を受けたなら、台湾人民の尊厳と国際的な印象を傷つけることになり、台湾の国際的な地位の向上にも影響が出る。

  核廃棄物輸出国家の環境保護団体として、私たちには、政府のこのような、自らを傷つけ、そして他者をも傷つける政策に対して反対する責任があるのだ。

  公害の影響は国境を越え、一地域の公害もさまざまなルートで拡散し、地球規模の問題に広がっていく。環境問題は国籍、民族、信仰を問わない。関心を寄せずにはいられない問題なのである。また同時に、国境を越えて広がる環境破壊のダメージに対しては、各国人民が団結してこそ立ち向かえるものなのである。環境保護団体として私たちは、世界各地の環境問題に関心を向け、各地の環境保護団体と協力し合ってきた。今回韓国の環境保護団体(グリーン・コリアと環境運動連合)のメンバーが台湾を訪れ、共に廃棄物の輸出に反対した行動は、このような環境運動の協力の姿勢に基づくものである。

  私たちは台湾の民衆が考え方の狭い、自己の利益だけを守ろうとする態度を乗り越え、朝鮮半島にすむ人々の生存と権利を尊重するよう願う。私たちは、地球に共に暮らす公民としての立場をつらぬこう。

  また、私たちは政府が、世界的な環境問題の論理を尊重し、責任を果たし、台湾電力と北朝鮮の契約を撤回するように希望する。そうすることによってのみ、台湾の国際的な印象を回復することが可能になるのである。私たちはさらに、政府がエネルギー政策を検討し直し、「非核」法案を採択して、核廃棄物の生産の元凶を根絶することによって、台湾の核廃棄物の難題を解決することを心から切望する。

(訳・近藤敦子)

 


労働者新聞 原稿
核のない21世紀 韓半島のために

               チェ・ギョンソン (韓国環境運動連合 反核平和チーム)

  台湾が自国で発生した核廃棄物を北韓(北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国)に送る秘密契約のニュースは、全国民に衝撃を与えた。この史上類例のない計画が及ぼす環境的・社会的悪影響を考えると、この秘密契約は深刻な問題をはらんでいる。それこそ、韓(朝鮮)半島の悲劇だと呼び得る最悪のシナリオに直面しているのだ。これを防ぐために、韓国の環境団体は台湾に直接出かけ、台湾電力公社前でデモを行い、台湾政府関係者と会った。しかし、その際台湾の右翼団体が韓国のデモ隊に暴行、台湾政府はこのデモ隊を強制出国させ、さらに核廃棄物の北韓への搬出計画を確認した。

  まず、台湾政府は自国で発生したものは自国内で処理すべきだとの、国際社会の一般原則を守らなければならない。経済的な利益をえさに、致命的な放射能有害物質を北韓に送るのは、非常に不道徳な行為だ。台湾政府は、これに対する国際社会の非難をどのように処するつもりなのか。長期的にも、このような状況は台湾の国益に何ら助けにならないと思う。

  もちろん、私たちは92年韓国政府の一方的な国交断絶により、台湾政府や台湾国民がどれほど大きな傷を負ったのかよく知っている。しかし、もし台湾政府が今回の核廃棄物問題を契機に、常識的で望ましい国際世論にそって、核廃棄物搬出計画を撤回するようになれば、むしろ「雨降って地固まる」との韓国のことわざどおり、この件を契機に両国民の間に理解と信頼を深められると思う。

  また、北韓政府はどれだけ経済難でも、台湾の核廃棄物を受け入れてはならない。韓国と北韓、韓半島の両国民全体と子孫の生存、そしてこの錦繍江山の環境に連帯責任を持つのが当然ではないのか。まさに少し前にも、北韓政府は掘業島核廃棄場計画に対して、あれほど強硬な語調で反対したのではないか。世界のどこでも安全に処理できる技術がなくて、多くの国家を悩ませている核廃棄物を受け入れることは、国際的な恥であるだけでなく、何よりも環境に対する災難を招く道であることを忘れてはならない。

  一方、現在韓国政府の統一院、外務省などは台湾、北韓に外交的圧力を行使している。しかし、今回の件は外交的な次元の対応だけでは根本的な問題を解くことができない。この間、韓国の民間団体の北韓に対する人道的な支援活動の通路を政府がさえぎり、北韓を国際社会で孤立させてきた過程で、北韓が非正常的な方法で経済難、食糧難を打開しようとする考えをするようにもしている。以後、韓国政府は、北韓に対する活動を民間単位からさらに活発に展開できるよう道を開くべきだ。そして、以前にもドイツの核廃棄物の中国ゴビ砂漠への搬入計画も、ドイツの市民団体が先頭に立って防いだことを考えると、今回の問題における市民・民間次元の役割を重視しなければならない。

  以後も、多くの困難が伴うだろうが、北韓当局は他の国家の過った前轍を踏まず、賢明に錦繍江山の自然環境をよく保存しながら、経済的な困難を克服していくようにすべき だ。永久に韓半島を深刻に汚染させるかもしれない核廃棄物搬出計画はもちろんであり、続々と露見いている外国の産業廃棄物、有害廃棄物の搬入も、以後、防いでいかなければならない。東西ドイツが統一された当時、西ドイツが負担しなければならなかった環境関連の費用は、予算をこえるものであった。これは互いに不幸なことである。

  現在、この国民的な次元の心配は、核廃棄物と関連した地域住民の闘争史と緊密な関連がある。韓国内ではいまだ核廃棄物処分場の敷地を捜せないまま、政府当局の核廃棄物処理場の建設計画が今まで挫折している。アンケート結果を見ると、原子力発電所に対する意見が賛成と反対の半々だが、核廃棄場の場合、大部分の国民が反対している実情だ。忠南・安眠島(チュンナム・アンミョンド)で、慶北・蔚珍(キョンブック・ウルチン )で、京畿・徳積島(キョンギ・トックチョックト )で、地域住民の大規模な反発により、核廃棄場建設計画が撤回された。このような過程を通じて、韓国民の核廃棄物に対する反対意識があつく形成されたのである。

  このように、核廃棄物は全世界的に処理技術が無く、環境団体は原子力産業を「トイレのないアパート」と呼んでいる。このことを契機に、現在すでに11基の原子力発電所を稼働させ、2010年までに17基を追加建設しようとする韓国の原子力産業政策も、転換されなければならない。21世紀を展望する現在、全世界的に脱核エネルギー路線が活発になっており、太陽、風力エネルギーなどを拡散していくために、必死になっている。これ以上、化石エネルギーと核エネルギーが地球環境を脅かさないようにするために、エネルギー政策の根本的な転換のために、環境団体は引き続き努力していく。

 


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