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緊急声明
台湾電力は、放射性廃棄物の輸出計画の撤回を!

原子力資料情報室
1997年2月4日


  原子力資料情報室は、台湾電力公司の計画する朝鮮民主主義人民共和国(以下北朝鮮)への放射性廃棄物輸送計画に、強い反対を表明します。

  今年の初め、台湾電力公司は、北朝鮮政府と放射性廃棄物の管理についての契約が成り立ち、近いうちに低レベル放射性廃棄物の北朝鮮への輸送を始める、と発表しました。報道によれば、200リットルのドラム缶1本につき約13万円で管理をし、今後2年間に6万本を受け入れるといいます。また、最終的には20万本のドラム缶の受け入れも検討されている、ともいわれています。この破格の安さでは、"安全な貯蔵"はまったく期待できません。しかも、台湾側の発表では「貯蔵でなく北朝鮮での最終処分(地下への埋め捨て)までできる」とされています。"低レベル"とはどこまでを指すのか、いかなる安全対策が施されるのかなどもまったく不明です。閉鎖された炭坑を貯蔵施設として使うとされていますが、これはまさに放射性廃棄物の「埋め捨て」であって、このような貯蔵や処分は、地下水への汚染をもたらすおそれがあり、朝鮮半島の人々はもとより地球全体への暴挙といえるでしょう。

  また、忘れてはならないのは、放射性廃棄物の輸送の危険性です。廃棄物は船で輸送されますが、中国や日本、韓国などの人口の多い国々の間をぬって強行されることになり、船が事故を起こした場合には、深刻な影響を環境に及ぼすことになるのは明らかです。低レベル廃棄物の一部は、アスファルト固化などされた可燃性の物と推定され、輸送・取扱中の火災事故が強く懸念されます。

  さらに、北朝鮮国内では、この計画について何ら報道されていないと考えられます。幾世紀にもわたって影響を及ぼす放射性廃棄物の問題を、国民に何の発表もなく決めてよいのでしょうか。この計画が実行され前例となって、北朝鮮が台湾の原発政策のごみ捨て場となる可能性も否定できません。

  今回の計画は、台湾政府が、自国の核政策の後始末を、まったく関係のない他の国や国民に押しつけるというもので、きわめて非道かつ理不尽な行為です。原発を動かせば廃棄物が出るのは明らかで、その責任をとれないのなら、安全性を云々する以前の問題として、台湾は原発を運転する資格がないと言うべきです。また、今回の計画が、核のゴミの他国への押しつけという悪しき国際慣行に道を開くことを、私たちは強く懸念します。

  日本の原子力産業もこの問題に責任があります。台湾国内では、かねてから第4番目の原発にあたる竜門原発について激しい反対運動が続いていますが、昨年秋の台湾国会では6000人ものデモ隊が反対する中で第4原発の建設が決まりました。日本の東芝・日立・三菱重工がこの計画に関係していますが、これらの企業は、このように無責任な廃棄物対策しかない台湾への原発輸出からすぐに撤退すべきです。

  すべての放射性廃棄物は、その発生国の責任において自国内で管理されるのが、国際的な道義的責任である、と私たち原子力資料情報室は考えます。台湾電力に対して国際的批判が高まる今、すべての関係者がこの責任を守るよう強く訴えます。

 


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