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9月2日・夜
女性フォーラム

小木曽茂子


 2日、フィリピンの女性たちからフォーラムに参加している女性全員に招待状が配られました。「今夜は女ばかりで集まろうよ」という呼びかけです。K女史は「男たちには大学キャンパスを散歩する企画があるからね」と言ったんだけど、それはあったか、なかったか……。窓の外からいくつかの目が、うらやましそうにのぞいていたっけ。

 私たちはすっかりリラックスして、まず2人ずつ組みになって他己紹介をすることになりました。フィリピンの女たちが半分ぐらいだったかしら。英語の下手な私の相手はマルと名乗った優しい若い人。彼女は日本軍の従軍慰安婦の支援運動の事務局を担当している人だった。他にもおばあちゃんで、日本兵の恋人になって捨てられて、結婚しなかったと紹介された人もいた。それまで国をしょっていた代表たちも個人になって素顔にふれたって感じられた。でも、それにあまりに時間がかかってしまったので、肝心の話し合いの時間が少なくなってしまった。フィリピンの有名な女闘士ネリア・サンチョと大庭里美さんが自分の運動の報告と女性の立場からの困難を話した。私もついでに六ケ所の女たちのキャンプの経験を大庭さんの通訳で話したりした。会議をいったんとじた後にアメリカからの参加者が、スライドを使ってネイティブ・アメリカンたちと女たちの連帯行動などを紹介した。

 結論は2つだったと思う。ひとつは、各国報告などの発言が男に片寄りすぎているのを次回からはあらためようということ。もうひとつは、女たちのフォーラムを昼間の日程にきちんと組み込もうということだった。来年が楽しみだね! いずれにせよ、フィリピン各地の女性たちのしなやかな強さ、たくましさ、明るく人をひきつける魅力はたいしたものだった。長年の闘いの中でこそ、女はみがかれていくのだと、お互いに意を強くした集会でした。

 

 

 

9月3日
パネルディスカッション・分科会

宇野田 陽子


 

  最初のパネルディスカッション「原子力の神話と現実」では、バタアン原発の事例から、原発建設がいかに発展途上国の財政を破綻に導くかについて詳細な報告が行われた。また、アメリカからは放射能による被害、特にテキサスにおける驚くべき癌羅病率の増加などがスライドとともに紹介された。日本の高木さんからも、放射線に「しきい値」はなく、許容量の値も年々狭められていること、原発における日常的な労働者被曝の現状などが報告された。そして核廃棄物に関する報告が続く。韓国からは、北朝鮮への核廃棄物輸出阻止運動について報告があり、アジアにおける核輸出の防波堤の役割を果たさなければならないとの指摘があった。青森の岩田さんからは六ヶ所の現状について、地元住民の闘いを中心に、それに連帯する日本のキリスト者の行動などがスライドとともに発表された。これに対しては、同じキリスト者という立場からさまざまな国の参加者より共感の声が上がっていた。台湾からも核廃棄物に関して、蘭ゆ島ですでに起こっている問題と現在もくろまれている北朝鮮への輸出の問題にふれ、これは新たな侵略の一幕であり、供給主(アメリカ等)が廃棄物を引き取るのが当然だと強く訴えた。さらに、日本の小村さんからは特に地震と原発の問題に焦点を当てた報告がなされた。

  次に行われた再生可能エネルギーに関するパネルディスカッションでは、パネリストに限らず会場から多くの発言が出たが、「代替技術の開発も重要だが、自分たちは一体何のためにそのエネルギーを消費しているのか、それは本当に必要な消費なのか、と日々自らに問い返し検証し続ける作業が不可欠だ」との意見に大きな拍手が起こった。

  3つめのパネルディスカッションは「独裁政権下での民衆の闘い」というもので、フィリピンとインドネシアからの発言であった。フィリピンからはマルコス、そしてアメリカ帝国主義を打倒する闘いの歴史が、インドネシアからは村落単位にまで張り巡らされた国軍の監視システムの下でいかに民衆運動が続けられているか、その現状や戦略について語られた。体制批判を行うと大統領侮辱罪などの悪法によって重刑が課せられるというインドネシアの状況の中で、ナナが壇上であのディスカッションに加わったこと自体に私は動かされた。マルコスは、スハルトの「安定した」独裁システムを手本にしたという。現在のビルマ軍事政権も民主化要求を退け政権を維持するため、スハルト独裁政権から多くを学んでいるといわれる。東南アジアでも類を見ないこの長期独裁政権を支え続ける日本がアジア地域で侵略なり弾圧に手を染めている現実は、「間接的」などという域をとうに越えていると感じた。

  フィリピンからのパネリストの一人、バヤンのダンさんは政治犯として服役させられた過酷な体験を持っている。NFPC全国議長のシンブランさんも、学生時代にフィリピン大学構内で拉致され投獄されたときの様子を話してくれたことがある。司会を務めたミアラ、NFPC事務局長のコラソンさんなどこの年配の女性の多くもやはり「私も政治犯だった」とこともなげに言ってのける。この国で流されてきたであろう血とその犠牲の深さを思うと、言葉を失う。そして、同様の歴史がさらに各地で繰り返されるのだろうか。日本の政府や軍隊はどうなっていくのだろうか。そして私たちは……。

  その後の分科会では、@核廃棄物A放射線の影響B核産業による植民地支配Cネットワーク/コミュニケーションに分かれて、今後一年間を通した具体的な行動計画につながるよう、さらに議論を深めた。

 

 


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